質問主意書

第190回国会(常会)

質問主意書


質問第一二七号

アダルトビデオへの出演強要被害に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年五月二十六日

山本 太郎   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   アダルトビデオへの出演強要被害に関する質問主意書

一 アダルトビデオへの出演強要被害が問題となっている。
 平成二十七年九月九日に東京地方裁判所は、アダルトビデオ出演に関する違約金請求訴訟で、実際の性交渉を行うアダルトビデオ出演業務を「本人の意に反して従事させることが許されない業務」と判示し、違約金請求を棄却する判決(以下「本件判決」という。)を出した。本件は、プロダクションが女性の意に反するアダルトビデオへの出演を強いようとして、女性が拒絶すると二千四百万円以上の違約金を請求したという事例である。以下質問する。

1 出演できなければ違約金を支払わなければならない、として性交渉を内容とする業務に従事させることは、性行為の強要であり、債務奴隷ともいうべき人権侵害であるが、若年女性がこうした被害にあわないために政府はどのような対策を講じていくのか。
2 本件判決が指摘するとおり、現在のアダルトビデオ出演は演技でなく実際の性行為を業務として行わせるものである。現行法に抵触する疑いがあると考えられるが、政府の見解を示されたい。
3 アダルトビデオへの出演強要は女性に対する深刻な暴力であり、政府としてその根絶のために取り組んでいく予定はあるのか。また、内閣府として実態調査を実施し、必要な法整備を推進していく予定はあるのか。

二 プロダクションが労働者である所属女優をアダルトビデオ出演のためにメーカー・製造会社に派遣することについて、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)上の有害業務に該当するという判例が出されている。また、アダルトビデオ出演を勧誘する行為は、職業安定法にも違反するとの判例が出されている。
 ところが、こうした法規制を免れるために、業者が労働契約という形態をとらずに委託契約等の名のもとに女性と契約を締結し、法律の適用を免れている脱法的事態があると指摘されている。その一方で労働者として保護されないため、賃金、労働安全衛生、労災からの保護等、労働者としての権利保護を受けることもできない状況にある。
 この点、本件判決は、当該女性とプロダクションの契約について、契約の名称が委託契約であっても、実態からみて「雇用類似の契約」であると認定しており、本司法判断も踏まえて、実態に即した政府としての対応を進めていく必要があると考えられる。そこで以下質問する。

1 実態として雇用関係が認められる女優をアダルトビデオ出演のためにメーカー・製造会社に派遣することは、労働者派遣法上の有害業務に該当すると考えられるか。
2 アダルトビデオ出演を勧誘する行為は、具体的にどのような行為が職業安定法に違反すると考えられるか。
3 契約書上で雇用契約以外の契約の名称となっている場合でも、実態として女性がプロダクションの指揮命令下にあり、労働者に該当すると認定される場合、前記二の1及び2で示した行為は労働者派遣法及び職業安定法に抵触することになると考えられるか。
4 実態として雇用関係が認められ、労働者派遣法、職業安定法の適用が認められるべき事案でも、業者の脱法的な契約実態により、何らの労働者保護も図られない実態を解消するために政府として、どのような取り組みを進めていくのか。

  右質問する。