質問主意書

第190回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇七号

公務員の政治的行為の禁止・制限に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年四月二十八日

和田 政宗   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   公務員の政治的行為の禁止・制限に関する質問主意書

 平成二十八年三月九日の参議院予算委員会において、昨年八月に沖縄タイムス辺野古取材班が発信した「八月三十一日午前十一時十五分、北部国道事務所の労組組合員がキャンプ・シュワブゲート前でマイクを握りました。新基地建設に抗議する市民を監視する業務について、「本来の仕事ではない。県民のための仕事がしたい」と話しました。」との記事を踏まえ、国家公務員である内閣府沖縄総合事務局北部国道事務所職員(以下「当該職員」という。)が政治的集会に参加し発言したことは、明らかに国家公務員法(以下「法」という。)や法の委任を受けた人事院規則(以下「規則」という。)に違反していると考え、当該職員に対する処分の有無を政府に質した。
 これに対して政府は、「当該職員から翌九月一日に事情を聞」き、「集会での発言は事実であるが、本来の仕事ではないとの発言は、監視業務が過剰との趣旨だった旨の確認も行っている」とした上で、「国家公務員法及び人事院規則は、職員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれがある一定の政治的行為を規制しているところでございます。本件は同法及び同規則で限定列挙されました政治的目的及び政治的行為のいずれにも該当しないと解されますことから、国家公務員法等に規定する政治的目的を持って行う政治的行為には当たらないと判断しているところでございます。また、当該職員は年次休暇を取得して集会に参加しておりますことから、職務専念義務違反にも当たらないと考えられます。」とする一方、「沖縄総合事務局が行っている道路不法占用事案に対する指導は、道路利用者のためのものであり、沖縄総合事務局の業務そのものでございます。当該職員の発言内容は、この指導が本来の業務ではなく、県民のための、県民のためではない仕事をしているとの誤解を与えかねず、公務に対する国民の信頼を失うおそれのある軽率な行為であったと考えております。こうしたことから、翌九月二日に上司から当該職員に対し速やかに厳重注意を行ったところでございます。」と答弁している。
 当該職員に対する政府の対応の妥当性を質すとともに、公務員の政治的行為の禁止・制限を実効あるものとする観点から、以下、質問する。

一 政府の答弁によると、当該職員は、内閣府沖縄総合事務局北部国道事務所の職員で、所属する組合の委員長として発言したとのことであるが、職員団体の業務の従事の有無にかかわらず、法第百二条第一項の政治的行為の制限に関する規定は、原則として全ての職員に適用されるということでよいか。

二 規則一四-七第一項により、法及び規則中の政治的行為の禁止又は制限に関する規定は、職務専念義務を免除されている休暇中の者を含む全ての一般職の職員に適用されるということでよいか。また、規則一四-七第四項により、法又は規則によって禁止又は制限される職員の政治的行為は、勤務時間外の行為であっても適用されるということでよいか。

三 規則一四-七第五項第六号は、禁止される政治的目的として「国の機関又は公の機関において決定した政策(法令、規則又は条例に包含されたものを含む。)の実施を妨害すること。」を定めている。当該職員による「本来の仕事ではない。」との発言は、監視業務が過剰との趣旨であったとのことであるが、当該発言には、米軍普天間飛行場の辺野古への移設計画という政府が決定した「政策」を円滑に実施する上で必要な沖縄総合事務局が行っている道路不法占用事案に対する指導を妨害する意図・目的が含まれ、同号が禁止する政治的目的に当たるのではないか。

四 規則一四-七第六項第十一号は、禁止される政治的行為として「集会その他多数の人に接し得る場所で又は拡声器、ラジオその他の手段を利用して、公に政治的目的を有する意見を述べること。」を定めている。当該職員が、米軍普天間飛行場の辺野古への移設に反対する集会において、マイクを握って、沖縄総合事務局が行っている道路不法占用事案に対する指導について「本来の仕事ではない。県民のための仕事がしたい」と発言したことは、公に政治的目的を有する意見を述べたことになり、同号が禁止する政治的行為に当たるのではないか。

五 規則一四-七第五項に列挙された政治的目的を持つ第六項に列挙された政治的行為を行うことは原則として禁止されることからすれば、当該職員は、前記一から四で示した規定に抵触し、法第百二条第一項に違反しているのではないか。

六 法第九十九条は、「職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。」と定め、公務員がその占めている官職の信用を損ね、公務員全体が批判を受けるような行為(信用失墜行為)を公私にわたって行うことを禁止している。政府は、予算委員会での私の質問に対する答弁の中で、当該職員に対して厳重注意を行ったと答えているが、これは「内閣府本府職員の訓告等に関する規程」(平成十三年七月五日内閣府訓令第六十六号)に基づく措置か。また、同規程は、非違行為を行った職員に対する措置として、「訓告」と「厳重注意」の二つの類型を定めているが、当該職員に対して行った厳重注意が同規程に基づく措置であるとすれば、どのような基準で厳重注意としたのか。

七 私が予算委員会で質問した日の翌三月十日付けの「沖縄タイムス」の記事において、「辺野古集会参加を注意」との見出しで、本件に関する私と政府との質疑のやり取りが報道されている。同記事の中で、当該職員は「休暇を取り労働組合の立場で参加した。官房長の答弁通り法や規則違反はなく、何ら問題はないと考えている」と述べており、厳重注意を受けたことを反省しているようには見受けられない。政府が本件を厳重注意で済ませたことにより、今後同様の事案が発生しないよう抑止的効果を期待できるのか、その措置の妥当性を含め政府の見解を明らかにされたい。

八 当該職員は「県民のための仕事がしたい」と発言している。日本国憲法第十五条第二項が「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」と定めているように、特定の地域の国民の利益を優先するのではなく国民全体の利益、公共の利益を図ることが求められる公務員として、適切な発言ではないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。