質問主意書

第190回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇〇号

大麻草の医療研究および使用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年四月十四日

荒井 広幸   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   大麻草の医療研究および使用に関する質問主意書

 昨年より医療用大麻の研究について、政府に世界の実態調査と、その研究の必要性を提言してきた。
 これらを踏まえて以下質問する。

一 一九四八年の時点で、大麻取締法第三条および第四条で医師による研究禁止および患者の使用禁止を定めた医学的根拠はあったのか。大麻取締法の制定経緯を踏まえて明らかにされたい。

二 海外では、医療用大麻が合法化され、患者が使用できる国や地域が増えている。それに伴い、使用した患者に効果があったことをレポートしたCNNの医療番組が放映されるなど、この話題がテレビ、新聞、雑誌、インターネット等のメディアを賑わせている。また、様々な臨床試験で有効性が研究されているという。
 政府は、そもそも大麻草由来の成分に医療効果があり、それによって救われる患者が存在すると考えているのか、明らかにされたい。

三 千九百六十一年の麻薬に関する単一条約では、その前文で麻薬の使用を「医療上及び学術上の目的に制限」している。これは、同条約が大麻草の研究および使用を全面的に禁止しているわけではないことを示していると考えられる。例えば、アメリカ連邦法で大麻がスケジュールⅠの薬物とされているが、アメリカ国立衛生研究所(NIH)では、大麻草とカンナビノイドの研究がされている。
 NIHでは、どれぐらいの予算を使って、どのような医療目的の研究をしているのかを私が本年三月七日の予算委員会で質して以来、調べた範囲で明らかにされたい。

四 厳重なルールと管理のもと、大麻草を産業用や医療用として、認められた研究者が研究することさえ否定する理由とその根拠を明示されたい。

五 厚生労働省は、化学合成したカンナビノイドで研究せよとの答弁ばかりである。大麻草には、THCやCBDなどの百種類以上のカンナビノイドが含まれ、他にもフラボノイドやテルペン類などの有効成分が何百種類も含まれている。
 それらは生薬のように多成分で相乗効果を発揮すると考えられ、それをアントラージュ効果と呼んでいる。
 例えば、精神作用のあるTHCと精神作用のないCBDを一対一で混合したものは、精神作用を少なくすることが知られている。
 また、単一成分のCBDよりも、CBDに加え複数のカンナビノイドが含まれている方が効果が高いことも明らかになっている。よって、単一成分である合成THCや合成カンナビノイドの研究だけでは、多成分からなる大麻草全体について医療目的の研究をしたことにはならないと考えるが、厚生労働省の見解を明らかにされたい。

六 日本医師会が批准している患者の権利に関するWMAリスボン宣言は、「患者の権利」を唱えたものである。例えば、「良質の医療を受ける権利」、「選択の自由の権利」、「自己決定の権利」、「情報に対する権利」、「尊厳に対する権利」などが明記してある。大麻取締法第三条および第四条の規制は、本宣言の観点からみて問題があるのではないか。

七 大麻取締法は、古い法律であるため、公衆衛生(集団の幸福)の危害防止の観点しかなく、大麻草を使用した治療を受ける権利すなわち人権(個人の幸福)の観点が抜けていると解釈できる。現行の大麻取締法は、医療目的の臨床研究および患者の使用を想定していなかったと解してよいか。法律の想定外のテーマであれば、別途法律が必要となるのではないか。

八 国の規制緩和を求める自治体には、国家戦略特区制度がある。国の法律を変えたり、新たに制定したりする前に社会実験をする仕組みである。本テーマはすでに特区申請もなされている。大麻草の臨床研究は、海外事情を踏まえると、特区を定めて実施すべきテーマだと考えられるが如何か。

九 欧米諸国を中心に大麻草の医療効果が注目され、先進国G10の中で日本以外の国では医療用大麻の研究および使用を合法化している。適応疾患は、がん、深刻な痛みや吐き気、神経性難病の多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、関節炎、てんかん等の発作、アルツハイマー病、標準治療で症状の緩和の見られないもの等、現代医療での治療が困難なものに幅広く使用されている。
 一方、我が国では約七十年もの前の一九四八年に制定した大麻取締法によって、医師による臨床研究と患者による使用のどちらも禁止している。
 日本においても他国と同じように、大麻草の医療分野の研究を進め、患者が使える仕組みを検討するよう強く求める。あらためて政府の見解を問う。

  右質問する。