質問主意書

第190回国会(常会)

質問主意書


質問第八六号

国家戦略特別区域(成田市)における医学部及び附属病院新設に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年三月十五日

水野 賢一   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   国家戦略特別区域(成田市)における医学部及び附属病院新設に関する質問主意書

 第百九十回国会質問第一七号「国家戦略特別区域における医学部新設に関する質問主意書」(相原久美子参議院議員提出)において、内閣府の「国家戦略特別区域における医学部新設に関する方針」(平成二十七年七月三十一日内閣府・文部科学省・厚生労働省決定。以下「医学部新設方針」という。)と成田市における説明「国家戦略特区における医学部新設について」(平成二十七年九月二十七日成田市企画政策部国家戦略特区推進課)の不一致について質問がなされたが、答弁書(内閣参質一九〇第一七号)一についてでは「政府と同市との間では認識は一致している」と回答されている。
 この答弁書を受けて以下の質問をする。

一 医学部新設方針の中で目的として「国内外の優れた医師を集め、最高水準の医療を提供できる、世界最高水準の「国際医療拠点」をつくるという国家戦略特区の趣旨を踏まえた、国際的な医療人材の育成のための医学部新設の方針を定める。」とあり、留意点として「国家戦略特区の趣旨を踏まえ、一般の臨床医の養成・確保を主たる目的とする既存の医学部とは次元の異なる、上記の目的に沿った際立った特徴を有する医学部とすること」と記されており、「その他、社会保障制度への影響など」には「養成された医師が、当初の目的に反して一般の臨床医として勤務するようであれば、長期間にわたり社会保障制度に影響を及ぼす可能性もあり、その場合には、医師需給を踏まえた全体の医学部定員の中で調整を行う。」とも記されており、国家戦略特区における医学部新設はあくまで国際的な医療人材の育成のためであって、一般の臨床医の育成が主目的ではないと明確に述べられている。
 これに対して前述の成田市の説明では、千葉県内の医学部は千葉大学一校のみであり、人口十万人当たりの医師数は全国最下位レベルにあるなど医師不足は将来的にも厳しい状況が続くと見込まれることに鑑み、こうした状況を改善し、地域医療の崩壊を未然に食い止めるために国家戦略特区を活用した医学部新設を提案した旨述べており、主として一般の臨床医の育成のために医学部新設を提案したとされている。さらに平成二十五年九月十一日開催の国家戦略特別区域ワーキンググループ提案に関するヒアリングに提出された、成田市と国際医療福祉大学によるプレゼンテーション「国際医療学園都市構想」によれば、医学部の入学定員百四十名のうち二十名は海外からの留学生を含め国際舞台での医療の担い手となる人材として教育するが、百二十人は国内の医師不足の解消を図るため、地域医療の担い手として教育すると記されており、現在も入学定員は変更されていないことから、こうした医学部学生の育成方針は維持されているものと考えられる。
 成田市の説明は医学部新設方針に明らかに相反していると考えられるが、政府はこれを許容していると考えてよいか。

二 国家戦略特区における国際医療福祉大学の医学部の新設が予定されている成田市は人口約十三万人のところに、市内にはすでに一般病院として成田赤十字病院、成田病院が存在し、近隣市にも成田富里徳洲会病院、東邦大学医療センター佐倉病院、日本医科大学千葉北総病院などの急性期病院が多数存在している。ここにさらに国家戦略特区として医療法上の病床規制を撤廃した上で、予定されている国際医療福祉大学の附属病院(六百床)が建設されれば、成田市周辺地域における医療供給体制の過剰あるいは不均衡を来たし、当該地域の既存の医療の混乱や崩壊を招くという危惧も指摘されている。政府は、国家戦略特区における医学部及び附属病院の建設が成田市周辺地域の既存の医療の混乱や崩壊を招く可能性についてどのように認識しているのか。あるいはこうした混乱を防止するために、何らかの措置が講じられるべきと考えているか。

三 成田市が国際医療福祉大学医学部のキャンパス用地として土地の所有者である民間企業から土地を購入するための購入価格を決定するにあたり、成田市が不動産鑑定業者に依頼し算出した不動産価格と当該所有者が不動産鑑定業者に依頼し算出した不動産価格との中間値をもって当該購入価格としたが、このように、地方自治体が事業のために土地購入を行う場合に、自らの不動産鑑定価格と土地所有者の不動産鑑定価格の中間値、又は土地所有者が行った不動産鑑定価格をもって、土地購入価格とした事例として政府が把握しているものを挙げられたい。なお、対象事例は購入価格が十億円以上となったものに限る。

  右質問する。