質問主意書

第190回国会(常会)

質問主意書


質問第四七号

同一労働同一賃金の実現に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年二月十二日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   同一労働同一賃金の実現に関する質問主意書

 安倍晋三内閣総理大臣は一月二十二日の施政方針演説で、正社員と非正規社員の均衡待遇のために、同一労働同一賃金の実現を目指す考えを表明した。さらに、二月五日の衆議院予算委員会で仕事内容や経験などが同じであれば、同じ賃金を保障する均等待遇に、「踏み込んで検討する」とも述べている(以下「予算委員会発言」という。)。
 不当な処遇差別を無くす、日本の雇用慣行に即した正規・非正規間の「同一価値労働同一賃金」のシステムの導入は、私達が長く主張し続けてきたことである。
 非正規労働者が二千万人を超し雇用の非正規化が進行している上、非正規の七割が年収二百万円に満たないという社会的な格差が拡大している中、この政策を掛け声倒れに終わらせてはならないと考える。
 以上の認識に立ち、以下のとおり質問する。

一 「同一労働同一賃金の実現」を図るための具体的な方策を明らかにされたい。

二 「同一労働同一賃金」については、異なった職務でも、職務の価値が同じであればそれぞれに対し同一額の賃金を払うという、「同一価値労働同一賃金」が世界でも標準的な考え方となっている。この「同一価値労働同一賃金」を採用するかについて、政府は方針を明らかにしていない。この概念の採否につき、どのような場で、どのような方針に基づいて決定するのか、明らかにされたい。

三 今回提唱されている「同一労働同一賃金」は非正規雇用の賃金底上げを主眼とすべきであり、賃金の低い方に合わせる、すなわち正社員の待遇悪化に繋がるようなことがあってはならないという認識だが、政府も同じ認識を共有しているということでよろしいか。

四 安倍総理が予算委員会発言で触れた均等待遇については、私達が年来主張してきた方向性であり、その実現が望まれることは言うまでもない。
 しかしながら、同一労働同一賃金というテーマに関しては、平成二十七年九月に議員立法で「労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律」(以下「同一労働同一賃金推進法」という。)が先行して成立している。この法案審議において、民主党も含む野党三党が提出した原案では「均等待遇」の実現が謳われていたところ、自民、公明等の修正により「均衡待遇」で足りると改められた経緯があり、最も重要な根幹を骨抜きにしたとも言える。
 望ましい方向への変更とはいえ、同一労働同一賃金推進法の成立からわずか数ヶ月での政策変更の整合性については、どのように説明するのか、明らかにされたい。

五 参議院厚生労働委員会での「労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案に対する附帯決議」(平成二十七年九月八日)の第三項に「欧州において普及している協約賃金が雇用形態間で基本給格差を生じにくくさせている機能を果たしていることに鑑み、我が国においても特定最低賃金の活用について検討を行うこと。」と規定されている。特定最低賃金の活用についての検討の現状、及び今後の具体的な予定を明らかにされたい。

  右質問する。