質問主意書

第190回国会(常会)

質問主意書


質問第二六号

独立行政法人日本学生支援機構の奨学金の返還救済制度の利用促進と債権回収強化策の見直しに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年一月二十二日

藤末 健三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   独立行政法人日本学生支援機構の奨学金の返還救済制度の利用促進と債権回収強化策の見直しに関する質問主意書

 独立行政法人日本学生支援機構(以下「機構」という。)の奨学金については、返還困難者への救済措置として、毎月の返還額を半分に減額する減額返還制度が平成二十三年一月から導入され、平成二十六年四月からは、一定期間返還期限を猶予する返還期限猶予制度の制限年数の五年から十年への延長、減額返還制度及び返還期限猶予制度の適用基準の緩和などの措置が導入された。
 しかしながら、奨学金の延滞者数は年々増加しており、平成二十六年度の延滞者数は有利子奨学金と無利子奨学金とを合わせて三十二万八千人に上る。
 こうした状況を踏まえ、政府及び機構は、返還者の経済状況に合わせて柔軟な返還ができるよう、所得連動返還型奨学金制度の検討等を進めていると承知しているが、まずは、現行の返還救済制度について周知徹底と利用の促進を図るとともに、現在の余りに乱暴かつ一方的な債権回収強化策を見直すべきであるとの観点から、以下質問する。

一 機構が行った「平成二十五年度 奨学金の延滞者に関する属性調査」によれば、延滞者のうち返還期限猶予制度を知っている者は五割に満たず、減額返還制度を知っている者に至っては二割に過ぎない。基準を満たす返還困難者が、希望すれば救済制度を利用することができるよう広報・啓発に力を注ぐべきであると考えるが、制度の認知状況に対する見解も含め、政府の今後の対応方針について明確に示されたい。
 なお、前記の調査について、最新の結果があれば、その概要を示されたい。

二 近年、機構が債権回収を強化する中で、返還が滞った利用者や親などに残額の一括返還を求める訴訟が激増し、平成二十四年には六千百九十三件に上ると報じられている。
 政府が非正規雇用の増加等若者の経済的な環境の悪化を放置し、また、奨学金の延滞に関する救済制度についても十分な理解が進んでいない中で、三月以上延滞した者の情報を個人信用情報機関に登録したり、延滞が九月以上となった場合には法的措置を講じたりするなどの機構の対応は、余りに乱暴かつ一方的であり、返還困難者の抱える厳しい状況に追い打ちをかける、まことに冷酷な仕打ちであると言わざるを得ない。
 機構及び政府は、奨学金貸与者を取り巻く厳しい経済的環境を正しく認識した上で、現在の過酷な債権回収策を見直し、返還困難者の実情に沿った適切な債権回収の在り方について再検討すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

三 機構は、全学校の延滞率や貸与者数などの情報を平成二十八年度中に公表するとしている。学校ごとの情報の公開は、学校が推薦者を絞ったり、奨学金を続けるにふさわしいかを判断する適格認定を厳しくしたりすることによって、学生の奨学金利用を妨げることが懸念されるが、そもそも学校ごとの情報を公開する目的は何か。また、そうした懸念について機構及び政府はどのように対応するのか、方針を示されたい。
 あわせて、我が国における機構以外の奨学金やG7諸国における公的奨学金において、同様の措置を講じている事例があればその概要を示されたい。

  右質問する。