質問主意書

第190回国会(常会)

質問主意書


質問第二一号

大阪市立住吉市民病院の廃止に伴う病院再編計画に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年一月二十一日

辰巳 孝太郎   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   大阪市立住吉市民病院の廃止に伴う病院再編計画に関する質問主意書

 大阪市立住吉市民病院(以下「市民病院」という。)が位置する大阪市南部医療圏は、小児科・産科が元々不足している地域である。その中で、地域周産期母子医療センターの認定を受けた同病院は、小児・周産期医療に中核的な役割を果たしてきた。二〇一三年度には厚生労働省重症心身障害児者の地域生活モデル事業を受託した医療機関である。未受診や飛び込みによる出産を積極的に受け入れている病院でもあり、二〇一三年は二十六件と大阪府下で四番目に多かった。助産施設として指定を受け、二〇一三年の分娩件数は六百四十四件で、うち助産券利用は八十一件である。小児二次救急受入れ件数は、南部医療圏全体の二十七・一%(二〇一一年)を占めている。発達障害専門外来を二〇一〇年四月から実施し、レスパイト入院を二〇一三年度実績で実人員三十三人、延利用人数百九十六人を受け入れている。児童虐待被害児の一次保護の受け入れも積極的に行っている病院であり、二〇一三年は十五件受入れており、社会的弱者にとってもなくてはならない病院である。
 ところが二〇一一年、橋下大阪前市長の時代に、隣接する行政区に位置する府立急性期・総合医療センターと市民病院が「二重行政」だとし、それまでの方針であった現地建て替えを撤回し、市民病院を廃止し、府立急性期・総合医療センターに統合することを決定した。これに対して、地元医師会も含めた住民の間で強い反対の声が広がり、短期間に七万筆を越える市民病院廃止反対署名が集められた。それにもかかわらず、市長は「民間病院の誘致」を条件に廃止を強行した。
 府立急性期・総合医療センターは主に三次救急を受け入れている施設であり、二次救急をメインとする市民病院とは役割そのものが異なる。誘致せんとする民間病院も小児科や産科の経験が全くない。「大阪市立住吉市民病院の廃止に伴う病院(医療機能)再編計画」(以下「本計画」という。)においても新民間病院の取扱い予定分娩件数は、年間六百件から七百件とし、対応医師については産科、小児科それぞれ三名ずつとの提案がされているが、その医師態勢と医師の確保が不可能であるとして、大阪府医療審議会病院新増設部会から強い危惧の声が出た。本計画が審議された大阪府大阪市南部保健医療協議会では全ての医師会長が反対表明した。昨年十二月十一日の大阪府医療審議会でも、反対意見が多数出され、採決では反対十二人、保留四人、賛成一人であった。
 大阪府は、これらの度重なる反対意見を押し切り、昨年十二月二十一日、本計画を厚生労働省に申請した。
 住民の理解が全く得られていない本計画は、市民病院がこれまで担っていた地域の小児・周産期医療を中心とした医療水準を後退させ、住民の命と健康を危険にさらすものであって、政府は本計画に同意しないよう強く求めるものである。
 よって、以下質問する。

一 公立病院が担う医療機能を見直す場合には、住民の理解が当然の前提である。「新公立病院改革ガイドライン」(平成二十七年三月三十一日付け総務省自治財政局長通知)においても、「当該病院が担う医療機能を見直す場合には、これを住民がしっかりと理解し納得しなければならない。」とされている。病院再編計画の策定にあたっての住民の理解に関する政府の見解を求める。

二 全国の産科医師一人あたりの年間平均分娩数を明らかにされたい。

三 医療法施行令第五条の三第二項の厚生労働大臣の同意の要件を示されたい。

四 「医療計画について」(平成二十四年三月三十日厚生労働省医政局長通知)4(5)において特例の申請書に都道府県医療審議会の意見を附することとされている趣旨は何か。政府の見解を求める。

五 本計画の特例の申請書に附された大阪府医療審議会の意見書には、「採決の結果」として「賛成した委員一人、反対した委員十二人、賛否を保留した委員四人」と記載されている。これまで厚生労働大臣に申請があった同様の事例において、都道府県医療審議会の意見書で反対委員が多数を占める例があったか否か明らかにされたい。また本計画の特例の申請書に附された大阪府医療審議会の意見書に記された反対意見の内容を具体的に明らかにされたい。

六 本計画の特例の申請書に附された大阪府医療審議会の意見書に記された反対意見について、どのように受け止めているか。政府の見解を求める。

  右質問する。