質問主意書

第190回国会(常会)

質問主意書


質問第一五号

完全自動走行に向けた国家戦略特区プロジェクトに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年一月十四日

大久保 勉   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   完全自動走行に向けた国家戦略特区プロジェクトに関する質問主意書

 昨年、「官民ITS構想・ロードマップ二〇一五~世界一安全で円滑な道路交通社会構築に向けた自動走行システムと交通データ利活用に係る戦略~」(以下「構想」という。)が発表され、この構想に基づく、「完全自動走行に向けた国家戦略特区プロジェクト」(以下「特区」という。)も発表されている。
 しかし、構想においては技術的な記述が中心であり、自動走行の法的位置づけや事故時の責任については、ほとんど触れられていない。特区における公道実証実験においても、これらが不明確なまま行われるのではないかと危惧している。自動走行システムは、今後の自動車開発、製造及び販売並びに自動車保険等に大きな影響を与えると考える。日本が世界に先駆けて完全自動走行システムを実現するためには、法整備を早急に行うことが必要と考えるため、以下、質問する。

一 特区では、神奈川県湘南エリア、仙台市荒浜地区及び名古屋市を対象としているが、それぞれの実験開始時期と実験地区の詳細を明らかにされたい。また、他地域での実験を計画していれば、併せて明らかにされたい。

二 昨年十月一日に、内閣府によって特区の説明(以下「説明」という。)が行われた。説明で使用されたロボットタクシー株式会社(以下「ロボットタクシー社」という。)の資料では、自動走行サービス実証実験の安全対策について、「自動走行車には実証実験担当者が2名乗車」と記載され、「「運転者」が運転席に座り、緊急時に対応を実施。加えて「オペレーター」が同乗しシステム監視や周辺状況の確認など、追加で安全を確保」とある。実験担当者二名について、両者又は一方の者が、道路交通法(以下「道交法」という。)第二条第一項第十八号及び道路交通に関する条約(以下「条約」という。)第四条に規定される「運転者」に該当するか、それぞれ明らかにされたい。とくに、条約第八条第五項では、「運転者は、常に、車両を適正に操縦し」とあり、第十条では「車両の運転者は、常に車両の速度を制御していなければならず」と定められているが、実験では緊急時以外は対応しないわけであり、「常に」に該当しないため、運転者とみなされないという解釈もある。これを踏まえて政府の見解を明らかにされたい。

三 説明で使用された内閣府の資料では、現在議論されている条約の改正案の第八条第六項として、「運転者によるオーバーライドが可能であり、又は機能を停止できるときは、第5項及び第10条に適合するものとみなす」とある。これを裏返せば、現状の条約では、「運転者によるオーバーライドが可能であり、又は機能を停止できるときであっても、第五項及び第十条に適合しない」と考えられるが、政府の見解を明らかにされたい。とくに、説明で使用されたロボットタクシー社の資料では、オーバーライド・緊急停止ボタンが安全対策とされているため、この状態では現在の条約に違反するという解釈がある。これを踏まえて政府の見解を明らかにされたい。

四 前記二及び三に関連して、わが国の特区制度が国際条約に優先することがあり得るという解釈でよいか、政府の見解を明らかにされたい。

五 特区における実証実験で交通事故が発生した場合について、

(一) 実証実験担当者が周囲の交通状況の監視や操作を行う必要があると整理され、自動走行システムにオーバーライドが可能だったケース
(二) 実証実験担当者が周囲の交通状況の監視や操作を行う必要があると整理され、自動走行システムにオーバーライドが不可能だったケース
(三) 実証実験担当者が周囲の交通状況の監視や操作を行う必要がないと整理され、自動走行システムにオーバーライドが可能だったケース
(四) 実証実験担当者が周囲の交通状況の監視や操作を行う必要がないと整理され、自動走行システムにオーバーライドが不可能だったケース
 以上の四ケースについて、運転者及びオペレーターの責任の所在はどうなるのか、それぞれ明らかにされたい。また、運転者及びオペレーター以外(運転者及びオペレーターの管理者、自動走行システム開発者、自動走行システム運用者並びに車両保有者等)の責任の所在についても、併せて明らかにされたい。

六 特区における実証実験で交通事故が発生した場合について、同乗する住民モニターに責任は及ぶことは原則としてないという理解でよいか、明らかにされたい。

七 説明で使用されたロボットタクシー社の資料では、レベル四の公道サービス開始時期について、東京オリンピック・パラリンピックを目標としているように読めるが、これは正しいか、政府の見解を明らかにされたい。

八 構想では、レベル四の市場化期待時期について、「2020年代後半以降」とされ、「世界最先端のITSを、2020年東京オリンピック・パラリンピックにおいてショーケースとして海外に対して提示、プレイアップする」とも記述されている。構想における、「市場化期待時期」、「ショーケース」の意味を明らかにされたい。またこれは、特区の実験結果をオリンピック・パラリンピックに向けて東京地区に活用し、そこから全国に拡大したうえで、海外に展開していくという理解でよいか、併せて明らかにされたい。

  右質問する。