質問主意書

第190回国会(常会)

質問主意書


質問第一四号

消費税の軽減税率制度の導入に伴う課題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年一月十四日

藤末 健三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   消費税の軽減税率制度の導入に伴う課題に関する質問主意書

 政府は、二〇一七年四月より、消費税率の八%から一〇%への引上げと併せて、「酒類及び外食を除く飲食料品」及び「新聞」に係る消費税率を八%に据え置くことを決定した。しかしながら、このような消費税の軽減税率制度の導入は極めて重大な問題があるため、以下、それぞれの課題について質問する。

一 政府は、「酒類及び外食を除く飲食料品」及び「新聞」を対象に軽減税率制度を導入するとしているが、このような飲食料品等の消費税率を軽減したとしても、高所得者ほど軽減額が大きくなるなど、低所得者の救済措置とはならないのではないか。このように、軽減税率制度は給付措置と比べ、低所得者への富の再分配効果は極めて弱くなると考えるが、政府の見解を示されたい。

二 軽減税率制度を導入している欧州諸国の例を見ても、対象品目の区分けは極めて複雑になることは避けられない。例えば、イギリスの歳入関税庁のホームページには膨大で事細かに区分や説明が掲載されているが、これでは納税者等の混乱を招くものとなる。財務省は、飲食料品と外食との線引きが困難な、いわゆるグレーゾーンに相当するものが千二百件から千三百件に上るとしているが、これら対象品目の区分けを国民にどのように周知していくつもりか、今後の政府の対応を示されたい。

三 消費税の軽減税率制度を導入することにより、小売業者等は、複数税率を扱うレジシステムやPOSの導入、さらには会計システムの導入など多額の費用や事務負担の増加となるが、政府としてどのような支援を行うつもりなのか。特に、レジシステムやPOSといった最新システムの導入が困難な中小事業者への対策について具体的に示されたい。

四 消費税の軽減税率制度の導入に当たって財務省は、およそ一年半の準備期間が必要としてきたが、既にその期間を十分確保できない状況となった。こうした中で、政府は、実際に制度導入が可能と考えているのか。また、軽減税率制度を導入すれば、納税者だけでなく徴税を行う税務職員、とりわけ消費税担当の調査官等の業務が増大することになるが、具体的にどのような業務が増え、それに対してどのように執行体制を整備するつもりか、今後必要となる事務費用を含めて明確に示されたい。さらに、一部報道では、諸外国の事例を見ると政府関係者の労力などコストが倍以上になると予想しているが、この点についても政府の見解を示されたい。

五 消費税の軽減税率制度の導入による減収額については、これまでの与党の議論によれば、「酒類及び外食を除く飲食料品」で一兆円、さらに「新聞」で二百億円と見込まれていた。しかし、政府の「平成二十八年度税制改正の大綱」(平成二十七年十二月二十四日閣議決定)においては、軽減税率制度の導入による国及び地方の減収見込額を一兆円程度と一千億円未満を四捨五入して試算しているが、これを百億円単位まで明確に示されたい。その上で、軽減税率制度を導入した場合の代替財源の確保について、与党の「平成二十八年度税制改正大綱」(平成二十七年十二月十六日)では、「平成28年度末までに歳入及び歳出における法制上の措置等を講ずることにより、安定的な恒久財源を確保する。」としているが、消費税の税率を更に引き上げることになるのか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。