質問主意書

第189回国会(常会)

答弁書


答弁書第三二一号

内閣参質一八九第三二一号
  平成二十七年十月六日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員糸数慶子君提出選択的夫婦別姓に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員糸数慶子君提出選択的夫婦別姓に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「新国内行動計画」に明記された「男女平等の見地から、夫婦の氏や待婚期間の在り方等を含めた婚姻及び離婚に関する法制の見直し」については、法制審議会民法部会身分法小委員会において調査審議がされ、平成八年二月には、同審議会において選択的夫婦別氏制度の導入等を内容とする「民法の一部を改正する法律案要綱」の答申がされたが、各方面から様々な意見が提出されたこと等から、同要綱に基づく法案の国会への提出は見送られた。

二について

 民法(明治二十九年法律第八十九号)については、昭和二十九年七月に法務大臣から「民法に改正を加える必要があるとすれば、その要綱を示されたい」との包括的な諮問がされたことに基づき、逐次見直しが行われていたところ、その一環として、御指摘の「法制審議会民法部会身分法小委員会」における調査審議が行われたものである。したがって、平成三年当時、「民法の婚姻規定の見直し」に関し、法務大臣が法制審議会に諮問した事実はない。

三について

 法制審議会は法務大臣の諮問機関であり、その答申は尊重すべきものと考えている。

四について

 お尋ねの「法制審議会答申後に立法化されていないもの」の趣旨が必ずしも明らかではないが、法制審議会の答申のうち、これを受けた立法がされていないものには、御指摘の平成八年二月二十六日付け「民法の一部を改正する法律案要綱」(民法等の一部を改正する法律(平成二十三年法律第六十一号)及び民法の一部を改正する法律(平成二十五年法律第九十四号)により立法がされた部分を除く。)のほかに、例えば、昭和四十年二月十九日付け「司法試験法の一部を改正する法律案要綱」等がある。

五について

 現在把握している限りにおいては、お尋ねの「法律で夫婦の姓を同姓とするように義務付けている国」は、我が国のほかには承知していない。

六について

 選択的夫婦別氏制度の導入については、御指摘のような「意見」を含め、国民の間にも様々な意見があるものと承知している。同制度を導入した場合に「家族の絆が壊れる」かどうかを客観的に判断することは困難であり、その根拠となる調査結果があるとも承知していない。なお、平成二十四年十二月に実施した世論調査においては、「夫婦・親子の名字(姓)が違うと、夫婦を中心とする家族の一体感(きずな)に何か影響が出てくると思うか」との質問に対し、「家族の名字(姓)が違うと、家族の一体感(きずな)が弱まると思う」と答えた者の割合が三十六・一パーセント、「家族の名字(姓)が違っても、家族の一体感(きずな)には影響がないと思う」と答えた者の割合が五十九・八パーセントとなっている。

七について

 御指摘の「法制審答申の他の事項」は、選択的夫婦別氏制度の導入や再婚禁止期間の短縮等であるが、これらの事項は我が国の家族の在り方に深く関わる問題であり、国民の理解を得ながら検討を進める必要があると考えている。御指摘の答弁もその趣旨を述べたものであり、お尋ねの「程度」を具体的にお答えすることは困難である。

八の1について

 御指摘の「様々な意見」としては、選択的夫婦別氏制度の導入に反対であり、現在の法律を改める必要はないとする意見や、同制度の導入には反対であるが、婚姻によって氏を改めた者が婚姻前の氏を通称として使用することができるように法律を改めることは構わないとする意見などがあると認識している。

八の2について

 選択的夫婦別氏制度は、御指摘の「選択肢を増やす」ものであるところ、これを導入するか否かは、我が国の家族の在り方に深く関わる問題であり、国民の理解を得ながら検討を進める必要があると考えている。

九の1について

 御指摘の「法律上の規定のない通称の使用を拡大していく方針」の意味するところが必ずしも明らかではないため、そのような方針であるかについてお答えすることは困難である。

九の2について

 御指摘の「通称使用を拡大し、公的にも認めることで不便を解消できるという方法」の意味するところが必ずしも明らかではなく、そのような「方法」を採用することを前提とした質問にお答えすることは困難である。

九の3について

 政府としても、女性の活躍を促進することは重要であると考えているが、選択的夫婦別氏制度を導入するか否かは、我が国の家族の在り方に深く関わる問題であり、国民の理解を得ながら検討を進める必要があると考えている。

十について

 民法第七百五十条においては、夫婦は婚姻の際に定めるところに従い夫又は妻の氏を称するものとされているが、この規定は、夫又は妻の氏のいずれを称するかを夫婦の選択にゆだねており、男女の平等の理念に反するものではないことから、御指摘の条約に違反するものではなく、また、御指摘の法務大臣の「認識」が憲法第九十八条第二項の規定に反することもないと考えている。政府としては、女子差別撤廃委員会においても、このような我が国の立場に理解が得られるよう説明に努めてまいりたい。