質問主意書

第189回国会(常会)

答弁書


答弁書第三〇八号

内閣参質一八九第三〇八号
  平成二十七年十月二日

内閣総理大臣臨時代理           
国務大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員川田龍平君提出日本版コンパッショネートユース制度に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出日本版コンパッショネートユース制度に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの理由は、御指摘のいわゆる日本版コンパッショネートユース制度(以下「人道的見地からの治験」という。)が、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)に基づき治験として実施される場合、治験実施計画書に基づいて実施されるため安全性が確保され、また、健康被害発生時には補償措置が適用されるなど被験者保護が図られることから、同法に基づき治験として実施されることが適当であると考えられることである。また、お尋ねの法令形式については、医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成九年厚生省令第二十八号。以下「GCP省令」という。)の改正により必要な規制緩和措置を整備することを予定している。

二について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、政府としては、未承認薬を国民に提供する方法は国によって様々であると承知している。

三及び四について

 人道的見地からの治験においては、治験の成績は、有効性を比較する対照薬を投与する比較対照群を設定せず、被験者の安全確保を主眼として治験実施計画書を策定することから、治験の対象とされる薬物の承認申請時には、主として安全性の観点から検証的試験(「有効性を検証するために実施される治験」をいう。以下同じ。)の成績を補う資料として評価されるものである。したがって、現行の治験の定義を変更するものではないと考えている。

五について

 人道的見地からの治験において発生した副作用についても、現行の治験と同様に評価されると考えている。

六について

 人道的見地からの治験においては、比較対照群を設定せず、被験者の安全確保を主眼として治験実施計画書を策定するものであり、検証的試験で有効性が確認されなかった場合でも、人道的見地からの治験により、その有効性の判断が覆されるものではないと考えている。

七について

 人道的見地からの治験が対象とする患者としては、検証的試験の組入れ基準に合致するものの組入れに間に合わなかった患者及び検証的試験の組入れ基準に合致しないものの患者の状態が安全性の観点から組入れが許容される範囲の患者を考えている。

八について

 御指摘の「一九九九年ガイドライン」及び「二〇〇九年ガイドライン」は、いずれも医薬品企業法務研究会が作成したものであるが、両ガイドラインに実質的な差異はないものと承知しており、人道的見地からの治験における機会原因に係る健康被害は補償されないということが両ガイドラインに記載されているものと承知している。

九について

 厚生労働省及び文部科学省においては、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(平成二十六年文部科学省・厚生労働省告示第三号)において、臨床研究対象者への配慮を含め、人を対象とする医学系研究の実施に当たり関係者が遵守すべき事項について定めているところであり、また、臨床研究に係る制度の在り方については、現在、被験者保護の観点を含めその法制化に向けた作業を進めているところであることから、新たなガイドラインの策定等については考えていない。

十について

 人道的見地からの治験については、患者団体を含む関係者からの意見を踏まえて検討してきたものであり、更に今後、GCP省令の一部改正についてパブリックコメントを行い、広く意見を募集する予定である。

十一について

 今回検討している五項目のGCP省令の規制緩和措置は、人道的見地からの治験に限定した措置とすることを考えている。

十二について

 現行の治験においても、患者負担を求めることについて禁止しているものではなく、人道的見地からの治験においても、患者負担を求めることもあり得ると考えている。