質問主意書

第189回国会(常会)

答弁書


答弁書第二九七号

内閣参質一八九第二九七号
  平成二十七年九月二十九日

内閣総理大臣臨時代理           
国務大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員前川清成君提出明治大学法科大学院青柳幸一教授による司法試験問題漏洩に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員前川清成君提出明治大学法科大学院青柳幸一教授による司法試験問題漏洩に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 大学入試センター試験の問題は、独立行政法人大学入試センターにおいて、高等学校の学習内容を踏まえ、専門的見地から作成されていると承知している。
 また、お尋ねの「講師等大学受験予備校(以下、「予備校」という。)の関係者」の意味するところが必ずしも明らかではないが、独立行政法人大学入試センターにおいては、平成十三年に策定した「独立行政法人大学入試センター教科科目第一委員会委員の選考等に関する細則」に基づき、「大学、大学共同利用機関法人又は独立行政法人・・・の教授若しくは准教授又は学識経験のある者で理事長が特に必要と認めたものであること」、「高等学校等の教育課程に理解と認識を有し、原則として大学入学者選抜試験問題の作成経験を有すること」及び「試験の公正な実施に関して社会的疑義の生じる恐れのある子又は兄弟姉妹等に大学入学志願者がいないこと又は任命の日から三年以内に生じることが予測されないこと」の全てに該当する者のほか、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和三十一年法律第百六十二号)に規定する指導主事その他の高等学校等教育関係者で、「大学入試センター試験に理解と認識を有すること」、「任期中及び任期満了後一年間は、高等学校等において授業を担当しないこと」及び「試験の公正な実施に関して社会的疑義の生じる恐れのある子又は兄弟姉妹等に大学入学志願者がいないこと又は任命の日から三年以内に生じることが予測されないこと」の全てに該当する者が試験問題を作成していると承知している。

三について

 司法試験と大学入試センター試験とは、その趣旨及び目的が異なることから、一概に比較することは困難である。

四について

 法科大学院においては、将来の法曹としての実務に必要な学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を涵養するための理論的かつ実践的な教育を体系的に実施するものとされており、また、司法試験は、法科大学院における教育との有機的連携の下に、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかの判定を行うものとされていることから、司法試験における問題作成等を行う司法試験考査委員については、司法試験を行うについて必要な学識経験を有する者として、法科大学院の教員をもこれに任命してきたものである。

五について

 お尋ねについては、司法試験の実施をつかさどる司法試験委員会において、漏えいの原因を究明するとともに、御指摘の点も含め、適切な再発防止策を検討していく方針である。

六について

 捜査中の事件に関する情報については、関係者の名誉やプライバシーを保護する必要があるほか、当該情報を開示することにより罪証隠滅を招くなどして捜査・公判への支障が生じるおそれがあることから、慎重に対応しているところである。

七について

 プライバシーに関わる情報については、これを明らかにすることで個人の権利利益を害するおそれがあることから、慎重に対応しているところである。

八について

 御指摘の「処分基準」は、「司法試験法第十条に規定する受験禁止期間に関する処分基準」(平成二十一年三月三十日司法試験委員会決定)であり、その全文は次のとおりである。
 不正の手段によって司法試験若しくは司法試験予備試験を受け、若しくは受けようとした者又は司法試験法若しくは同法に基づく法務省令に違反した者に対しては、以下を基準として、受験禁止期間を決定する。ただし、不正の手段及び司法試験法等に違反した行為の内容又は情状により下記の受験禁止期間を減免することができる。
 態様一 虚偽の出願(替え玉受験、無資格受験など)によって司法試験若しくは司法試験予備試験を受け、若しくは受けようとした者
 受験禁止期間 五年間、司法試験及び司法試験予備試験を受けることができないものとする。
 態様二 一のほか、不正の手段によって司法試験若しくは司法試験予備試験を受け、若しくは受けようとした者
 受験禁止期間 四年以上の期間を定めて、司法試験及び司法試験予備試験を受けることができないものとする。
 態様三 一のほか、司法試験法施行規則第五条に規定する司法試験の実施に関し司法試験委員会の指示に従わなかったなど、司法試験法若しくは同法に基づく法務省令に違反した者
 受験禁止期間 一年以上の期間を定めて、司法試験及び司法試験予備試験を受けることができないものとする。

九及び十について

 御指摘の「受験生」は、平成二十七年司法試験論文式試験公法系科目第一問の出題内容につき、御指摘の「青柳教授」から教示を受けるとともに、論述すべき内容について指導を受けていたものであり、これは、八についてでお答えした処分基準のうち、態様二の「一のほか、不正の手段によって司法試験若しくは司法試験予備試験を受け、若しくは受けようとした者」として、同処分基準の「四年以上の期間を定めて、司法試験及び司法試験予備試験を受けることができないものとする」に該当する。本件においては、御指摘の「受験生」の意思に反して出題内容が教示されたなどの特段の事由は認められず、事前に入手した出題内容を了知した状態で受験するという行為は、過去の処分事例と比較しても、不正行為としての重大性及び悪質性が格段に高いものであると判断されたため、司法試験法(昭和二十四年法律第百四十号)第十条の規定に基づき、五年間、司法試験及び司法試験予備試験を受けることができないものとする処分が決定されたものである。