質問主意書

第189回国会(常会)

答弁書


答弁書第二九三号

内閣参質一八九第二九三号
  平成二十七年九月二十九日

内閣総理大臣臨時代理           
国務大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員牧山ひろえ君提出安全保障関連法案における集団的自衛権と集団安全保障の関係に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員牧山ひろえ君提出安全保障関連法案における集団的自衛権と集団安全保障の関係に関する質問に対する答弁書

一並びに二の1から5まで及び7について

 我が国による「武力の行使」が憲法をはじめとする我が国の法令に従い、かつ、国際法を遵守して行われることは当然であるが、その「武力の行使」が許される憲法上の根拠と国際法上の根拠とは区別して理解する必要がある。
 憲法上、我が国が「武力の行使」を行い得るのは、あくまでも「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(平成二十六年七月一日閣議決定)でお示しし、平成二十七年九月十九日に成立した我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)による改正後の自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第七十六条第一項及び第八十八条並びに改正法による改正後の武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成十五年法律第七十九号)第二条第二号及び第四号、第三条第三項及び第四項並びに第九条第二項第一号ロに明記されている「武力の行使」の三要件を満たす場合に限られるが、その国際法上の根拠としては、個別的自衛権若しくは集団的自衛権の行使又は国際連合安全保障理事会決議(以下「国連安保理決議」という。)に基づくいわゆる集団安全保障の措置がある。国際連合憲章(昭和三十一年条約第二十六号。以下「憲章」という。)第五十一条は、「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」と規定しているが、国連安保理決議に基づくいわゆる集団安全保障の措置が採られた場合において、それ以後国際連合加盟国が個別的自衛権又は集団的自衛権を行使し得なくなるかについては、それぞれの場合の具体的状況によるものであり、憲章の解釈上必ず行使し得なくなるというものではないと考えている。一において御指摘の岸田外務大臣の答弁は、このような国際法上の考え方を述べたものであり、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号)第五条の規定と矛盾するものではない。
 また、お尋ねの「多国籍軍への「参加」」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、存立危機事態において我が国が「武力の行使」を行う場合に、その国際法上の根拠は、まずは集団的自衛権の行使となる場合が通常であると考えられるが、国連安保理決議に基づくいわゆる集団安全保障の措置になることもあり得る。集団的自衛権の行使の場合には、国際法上、武力攻撃を受けた国の要請又は同意が必要であるが、国連安保理決議に基づくいわゆる集団安全保障の措置の場合には、国際法上、武力攻撃を受けた国の要請又は同意は必要ない。

二の6について

 お尋ねについては、それぞれの場合の個別具体的な状況によるため、一概にお答えすることは困難である。