質問主意書

第189回国会(常会)

答弁書


答弁書第二六六号

内閣参質一八九第二六六号
  平成二十七年九月八日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員藤末健三君提出改正後の重要影響事態安全確保法に防衛大臣の安全配慮義務規定が設けられていないことに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員藤末健三君提出改正後の重要影響事態安全確保法に防衛大臣の安全配慮義務規定が設けられていないことに関する質問に対する答弁書

一及び三について

 現在、国会に提出している我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案(以下「改正法案」という。)による改正後の重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律(平成十一年法律第六十号。以下「重要影響事態安全確保法」という。)は、そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態、すなわち重要影響事態に対応するために、我が国が実施する措置について定めるものである。
 一方、現在、国会に提出している国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案(以下「国際平和協力支援活動法案」という。)は、我が国の平和及び安全に対する影響を要件とせず、国際社会の平和及び安全を脅かす事態であって、その脅威を除去するために国際社会が国際連合憲章の目的に従い共同して対処する活動を行い、かつ、我が国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があるもの、すなわち国際平和共同対処事態に対応するために、我が国が実施する措置について定めるものである。
 このように、それぞれの法律において、我が国が対応する事態は、我が国の平和及び安全に対する影響という点において相違があるため、自衛隊の部隊等の安全確保の徹底という点においても、全く同様の取扱いとはせず、国際平和協力支援活動法案においては、自衛隊の部隊等の安全確保をより徹底する必要があることを踏まえ、防衛大臣が自衛隊の部隊等の安全の確保に配慮すべき義務や自衛隊の部隊等の安全を確保するための現場の判断によるその活動の一時休止等を定めた規定(以下「安全配慮関係規定」という。)を設けている。
 なお、重要影響事態安全確保法及び改正法案による改正後の重要影響事態等に際して実施する船舶検査活動に関する法律(平成十二年法律第百四十五号)においても、防衛大臣は、自衛隊の部隊等が重要影響事態における後方支援活動、捜索救助活動及び船舶検査活動(以下「後方支援活動等」という。)を円滑かつ安全に実施することができるように当該後方支援活動等を実施する区域(以下「実施区域」という。)を指定するものとしている。加えて、実施区域の全部又は一部において、自衛隊の部隊等が後方支援活動等を円滑かつ安全に実施することが困難であると認める場合における防衛大臣による活動の中断命令や、戦闘行為が行われている等の場合における現場の判断による一時休止といった措置を定めているところ、このような仕組みにより、自衛隊の部隊等が攻撃を受けない安全な場所で活動を行うことが十分に確保されている。

二について

 重要影響事態安全確保法には、安全配慮関係規定は設けられていないが、いわゆる安全配慮義務は、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきものと解されているところ、自衛隊の隊務を統括し、自衛隊の部隊等に対する指揮監督権を有する防衛大臣も、このような一般的な安全配慮義務を負うものであり、このことは、自衛隊の部隊等が、重要影響事態安全確保法に基づいて活動を行う場合にも当てはまる。

四について

 二についてにおいて述べたことは、自衛隊の部隊等が、改正法案による改正後の武力攻撃事態等及び存立危機事態におけるアメリカ合衆国等の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律(平成十六年法律第百十三号。以下「米軍等行動関連措置法」という。)に基づいて活動を行う場合にも当てはまるものであり、米軍等行動関連措置法第四条が、「行動関連措置は、武力攻撃及び存立危機武力攻撃を排除する目的の範囲内において、事態に応じ合理的に必要と判断される限度を超えるものであってはならない。」と規定し、その目的及び限度を定めていることは、その目的及び限度に応じて自衛隊員の安全確保についても配慮した上で、必要な支援を行う趣旨を含むものである。