質問主意書

第189回国会(常会)

答弁書


答弁書第二五九号

内閣参質一八九第二五九号
  平成二十七年九月四日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員藤末健三君提出国外犯処罰規定に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員藤末健三君提出国外犯処罰規定に関する質問に対する答弁書

一について

 従来から、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空へ派遣するいわゆる「海外派兵」は、一般に、自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないが、他国の領域における武力行動でいわゆる自衛権発動の三要件に該当するものがあるとすれば、憲法上の理論としては、そのような行動をとることが許されないわけではないと考えてきており、この趣旨は、昭和三十一年二月二十九日の衆議院内閣委員会で示された政府の統一見解によって既に明らかにされているところである。このような考え方は、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(平成二十六年七月一日閣議決定)でお示しした「武力の行使」の三要件(以下「新三要件」という。)の下で行われる自衛の措置としての「武力の行使」にもそのまま当てはまるものと考えられる。
 新三要件を満たす場合に例外的に外国の領域において行う「武力の行使」については、ホルムズ海峡での機雷掃海のほかに、現時点で個別具体的な活動を念頭には置いていない。
 お尋ねの国外犯処罰規定は、例えば、機雷掃海に従事する部隊に所属する自衛隊員が、補給等のため、外国の同意を得て当該外国に上陸することがあり得ることを踏まえて立案したものである。

二について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、一についてで述べたとおり、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空へ派遣するいわゆる「海外派兵」は、一般に、自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないと考えている。また、新三要件を満たす場合に例外的に外国の領域において行う「武力の行使」については、ホルムズ海峡での機雷掃海のほかに、現時点で個別具体的な活動を念頭に置いていないが、掃海艦艇による機雷の掃海は、戦闘が現に継続しているような現場では、円滑に実施することは困難であり、掃海活動の現場で他国の部隊と戦闘状態に入るようなことは想定されない。

三について

 憲法の解釈を最終的に確定する権能を有する国家機関は、憲法第八十一条によりいわゆる違憲立法審査権を与えられている最高裁判所である。一般論として、最高裁判所において、司法権の具体的な事件性というものを超えて、法律そのものが違憲であるというような、抽象的な規範統制を行うということはなく、また、最高裁判所の違憲判決については、どのような事件について、どのような理由によって、どのような判断がなされたかという判決の具体的な内容に応じて、個別具体的に適切に対応すべきものである。

四について

 自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第百十八条第一項第四号の罪については、現行法においても、現在、国会に提出している我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案においても、刑法(明治四十年法律第四十五号)において国外犯処罰規定が設けられている罪の法定刑との均衡等を考慮し、国外犯処罰規定を設けることとはしていない。