質問主意書

第189回国会(常会)

答弁書


答弁書第二一四号

内閣参質一八九第二一四号
  平成二十七年八月四日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員大久保勉君提出店頭デリバティブ規制に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員大久保勉君提出店頭デリバティブ規制に関する質問に対する答弁書

一について

 金融商品取引業者等(金融商品取引業者又は登録金融機関をいう。以下同じ。)は、一定の金利スワップ取引又はクレジット・デリバティブ取引を行う場合には、金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第百五十六条の六十二の規定に基づき、当該取引に基づく自己及び相手方の債務をそれぞれ当該各号に定める者に負担させることが義務付けられているが、当該負担を義務付けられた金融商品取引清算機関等(金融商品取引清算機関又は外国金融商品取引清算機関をいう。以下同じ。)は、同法第百五十六条の六十三の規定に基づき、内閣総理大臣に対して、債務負担した取引残高を報告することとされている。
 当該報告によると、金融商品取引清算機関等により債務負担された残高は、平成二十七年三月末の想定元本ベースで、金利スワップ取引が約二千二百八十七兆四千億円、クレジット・デリバティブ取引が約二兆五千億円となっている。

二について

 本年九月一日時点で、金融商品取引法等の一部を改正する法律(平成二十四年法律第八十六号)第三条の規定による改正後の金融商品取引法第四十条の七第一項に規定する特定店頭デリバティブ取引を行う場合に同項に規定する電子情報処理組織(以下「電子取引基盤」という。)を使用しなければならない金融商品取引業者等は二十四社(以下「二十四業者」という。)であると承知している。二十四業者は、本年九月一日以降において、電子取引基盤を使用した取引を円滑に開始できるよう、鋭意準備を進めているものと承知している。
 また、同項に違反する行為については、罰則の対象にはなっていないが、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認められるときは、内閣総理大臣は金融商品取引法第五十一条又は第五十一条の二の規定に基づく業務改善命令を発出することができ、当該命令が発出された場合には、当該金融商品取引業者等名が公表されることとなる。
 いずれにせよ、当該規定の適用については、本年九月一日以降の状況に基づいて判断されるべきものであり、金融庁としては、二十四業者における準備状況について、引き続き、注視してまいりたい。

三について

 中央清算機関を利用しない店頭デリバティブ取引(以下「非清算店頭デリバティブ取引」という。)について、バーゼル銀行監督委員会(以下「BCBS」という。)及び証券監督者国際機構(以下「IOSCO」という。)は、平成二十五年九月に、金融機関同士が行う非清算店頭デリバティブ取引について、変動証拠金及び当初証拠金の授受を含む規制(以下「証拠金規制」という。)を、各国において平成二十七年十二月から順次導入することを決定した。なお、一般的に、変動証拠金とは、時価評価に基づいて算定される価格に対応する証拠金を指し、当初証拠金とは、相手方の債務不履行により将来発生するおそれのある損失の合理的な見積額に対応する証拠金を指すものである。その後、BCBS及びIOSCOは、平成二十七年三月に規制導入時期を延期し、平成二十八年九月より順次導入することを決定した。
 我が国では、平成二十六年七月に金融商品取引業等に関する内閣府令等の改正案(以下「改正案」という。)を公表し、平成二十七年十二月より証拠金規制を順次実施することを予定していたが、規制の実施時期の延期に関する当該決定に鑑み、我が国における規制の実施時期についても見直しているところである。
 また、現時点において、規制の実施に当たって障害となる重大な事項があるとは認識していないが、改正案に対する公募意見も踏まえ、今後、規制の内容及び実施時期について確定していく予定である。