質問主意書

第189回国会(常会)

答弁書


答弁書第二〇九号

内閣参質一八九第二〇九号
  平成二十七年七月二十八日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員吉田忠智君提出二〇三〇年度の電力の需給構造における原発依存度に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員吉田忠智君提出二〇三〇年度の電力の需給構造における原発依存度に関する質問に対する答弁書

一、二、三の2、四及び八について

 平成二十七年七月十六日に経済産業省が策定した「長期エネルギー需給見通し」における平成四十二年度時点の総発電電力量に占める原子力発電の割合については、安全性の確保を大前提に、エネルギー自給率はおおむね二十五パーセント程度まで改善すること、電力コストは現状よりも引き下げること及び欧米に遜色ない温室効果ガス削減目標を掲げることといった政策目標を同時に達成するに当たって、徹底した省エネルギーの推進、再生可能エネルギーの最大限の導入、火力発電所の高効率化等により可能な限り原発依存度を低減することを見込んだものであり、平成四十二年度時点における個別の実用発電用原子炉の稼働の状況や設備利用率を想定して示したものではない。
 御指摘の核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)により発電用原子炉を運転することができる期間については、発電用原子炉設置者からの当該期間の延長に係る認可の申請の状況並びに当該申請を受けた原子力規制委員会の審査及び判断によるものと承知している。
 さらに、今後、発電用原子炉設置者等の自主的な安全性向上に向けた取組が着実に進むことなどにより、稼働停止の原因となる事象の発生頻度が減少し、設備利用率が向上していく可能性がある。
 こうしたことなどを考慮すれば、「二〇三〇年度の電力の需給構造における原発依存度を二十%から二十二%程度とするのは現時点で既に非常に困難である」との御指摘は当たらないものと考えており、「政府としてどのような対応を採るのか、具体的に明らかにされたい」とのお尋ねにお答えすることは困難である。
 いずれにせよ、平成四十二年度時点における実用発電用原子炉の基数や合計の設備容量については、発電用原子炉設置者からの運転期間の延長に係る認可の申請の状況並びに当該申請を受けた原子力規制委員会の審査及び判断によることから、現時点で予断をもってお答えすることは差し控えたい。

三の1について

 現時点において、御指摘の実用発電用原子炉は、合計四十六基である。それぞれの実用発電用原子炉について、①名称、②設備容量をお示しすると次のとおりである。
①北海道電力株式会社泊発電所一号機 ②五十七・九万キロワット
①北海道電力株式会社泊発電所二号機 ②五十七・九万キロワット
①北海道電力株式会社泊発電所三号機 ②九十一・二万キロワット
①東北電力株式会社女川原子力発電所一号機 ②五十二・四万キロワット
①東北電力株式会社女川原子力発電所二号機 ②八十二・五万キロワット
①東北電力株式会社女川原子力発電所三号機 ②八十二・五万キロワット
①東北電力株式会社東通原子力発電所一号機 ②百十万キロワット
①東京電力株式会社福島第二原子力発電所一号機 ②百十万キロワット
①東京電力株式会社福島第二原子力発電所二号機 ②百十万キロワット
①東京電力株式会社福島第二原子力発電所三号機 ②百十万キロワット
①東京電力株式会社福島第二原子力発電所四号機 ②百十万キロワット
①東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所一号機 ②百十万キロワット
①東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所二号機 ②百十万キロワット
①東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所三号機 ②百十万キロワット
①東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所四号機 ②百十万キロワット
①東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所五号機 ②百十万キロワット
①東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所六号機 ②百三十五・六万キロワット
①東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所七号機 ②百三十五・六万キロワット
①東京電力株式会社東通原子力発電所一号機 ②百三十八・五万キロワット
①中部電力株式会社浜岡原子力発電所三号機 ②百十万キロワット
①中部電力株式会社浜岡原子力発電所四号機 ②百十三・七万キロワット
①中部電力株式会社浜岡原子力発電所五号機 ②百三十八万キロワット
①北陸電力株式会社志賀原子力発電所一号機 ②五十四万キロワット
①北陸電力株式会社志賀原子力発電所二号機 ②百二十・六万キロワット
①関西電力株式会社美浜発電所三号機 ②八十二・六万キロワット
①関西電力株式会社高浜発電所一号機 ②八十二・六万キロワット
①関西電力株式会社高浜発電所二号機 ②八十二・六万キロワット
①関西電力株式会社高浜発電所三号機 ②八十七万キロワット
①関西電力株式会社高浜発電所四号機 ②八十七万キロワット
①関西電力株式会社大飯発電所一号機 ②百十七・五万キロワット
①関西電力株式会社大飯発電所二号機 ②百十七・五万キロワット
①関西電力株式会社大飯発電所三号機 ②百十八万キロワット
①関西電力株式会社大飯発電所四号機 ②百十八万キロワット
①中国電力株式会社島根原子力発電所二号機 ②八十二万キロワット
①中国電力株式会社島根原子力発電所三号機 ②百三十七・三万キロワット
①四国電力株式会社伊方発電所一号機 ②五十六・六万キロワット
①四国電力株式会社伊方発電所二号機 ②五十六・六万キロワット
①四国電力株式会社伊方発電所三号機 ②八十九万キロワット
①九州電力株式会社玄海原子力発電所二号機 ②五十五・九万キロワット
①九州電力株式会社玄海原子力発電所三号機 ②百十八万キロワット
①九州電力株式会社玄海原子力発電所四号機 ②百十八万キロワット
①九州電力株式会社川内原子力発電所一号機 ②八十九万キロワット
①九州電力株式会社川内原子力発電所二号機 ②八十九万キロワット
①日本原子力発電株式会社東海第二発電所 ②百十万キロワット
①日本原子力発電株式会社敦賀発電所二号機 ②百十六万キロワット
①電源開発株式会社大間原子力発電所 ②百三十八・三万キロワット

五について

 現時点において、政府として原子力発電所の新増設及びリプレースは想定していない。

六について

 原子炉等規制法第四十三条の三の三十二第一項の規定に基づき、発電用原子炉設置者がその設置した発電用原子炉を運転することができる期間は、当該発電用原子炉の設置の工事について最初に原子炉等規制法第四十三条の三の十一第一項の検査に合格した日から起算して四十年とされている。
 原子力規制委員会設置法(平成二十四年法律第四十七号)附則第九十七条において、同法附則第十七条及び第十八条の規定による改正後の原子炉等規制法の規定については、その施行の状況を勘案して速やかに検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて所要の措置が講ぜられるものとする旨が規定されているが、現時点において、その施行の状況に係る技術的課題等の知見について十分な蓄積がなく、制度の見直しについて検討できる状況にないのではないかと考えている。

七について

 御指摘の制度の導入について、現在、検討している事実はなく、平成二十七年五月二十日の衆議院経済産業委員会において宮沢経済産業大臣が「少なくとも私が経済産業省の責任者である間に、そういうものの検討を指示するとかいうことは一切行うつもりはございません」と答弁したとおりである。

九について

 長期エネルギー需給見通しに記載されているとおり、「長期エネルギー需給見通しは、現時点で想定される発電コスト、技術、国際的な燃料価格等を前提に策定されたものである。安全性、安定供給、経済効率性及び環境適合をより改善していくための努力は、今後とも官民挙げて着実に行っていく必要がある。また、今後、省エネルギーの進展、再生可能エネルギーの導入、各電源の発電コストの状況や原発をめぐる動向等長期エネルギー需給見通しを構成する様々な要素が変化することも想定される。このため、こうした状況変化も踏まえつつ、長期エネルギー需給見通しについては、少なくとも三年ごとに行われるエネルギー基本計画の検討に合わせて、必要に応じて見直す」こととしている。