質問主意書

第189回国会(常会)

答弁書


答弁書第八九号

内閣参質一八九第八九号
  平成二十七年四月十日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員江口克彦君提出局地的な大雨及び集中豪雨による災害対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員江口克彦君提出局地的な大雨及び集中豪雨による災害対策に関する質問に対する答弁書

一について

 昭和五十一年から平成二十六年までの期間における一時間降水量が五十ミリメートル以上の降雨の年間の発生回数は増加傾向にあり、その原因としては、地球温暖化に伴う大気中の水蒸気量の増加が寄与している可能性があるが、両者の関係については、更なる観測データの蓄積や気候の変化に関連する研究の進展を踏まえた評価が必要であると認識している。

二について

 気象庁においては、雨雲を把握するための気象ドップラーレーダーを全国二十か所に、上空の風を把握するためのウィンドプロファイラーを全国三十三か所に、地上の気象状況を把握するための地域気象観測システム(アメダス)を全国約千三百か所に、それぞれ整備するとともに、我が国周辺を含む広範囲にわたる雲の状況を把握するための気象衛星を整備しているほか、国土交通省が整備したレーダーのデータや地方公共団体等が保有する全国約九千三百か所の雨量計のデータを収集する体制を整備しているところであり、現状では、観測された降水域の移動については予測可能となっているが、局地的な大雨や集中豪雨をもたらす新たに発生する積乱雲による降水域を予測することは困難である。
 また、局地的な大雨や集中豪雨の予測精度を向上させるため、同庁においては、平成二十七年中に運用の開始を予定している「静止地球環境観測衛星」による観測の間隔の短縮及び分解能の改善並びに気象レーダーによる観測の高度化により、気象状況を把握する技術を向上させる取組とともに、このような技術の向上により得られる観測データを基にスーパーコンピュータを用いて気象状況を分析し、及び予測する技術を向上させる取組を進めている。

三について

 お尋ねの「避難勧告等の判断基準」については、平成二十六年八月に広島市で発生した土砂災害を受け、同年九月四日に、内閣府政策統括官(防災担当)付参事官(調査・企画担当)及び消防庁国民保護・防災部防災課長(以下「参事官等」という。)から、都道府県消防防災主管部長に対し、「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン(案)」(平成二十六年四月内閣府(防災担当))(以下「ガイドライン」という。)に基づき、避難勧告等の判断基準の再点検をすること等を市町村に依頼するよう通知したところである。ガイドラインにおいては、「土砂災害警戒情報の発表をもって避難勧告の判断基準とすることを基本とする」こと及び「基本的に夜間であっても、躊躇することなく避難勧告等は発令する」ことが明記されている。
 また、お尋ねの「情報提供」については、現在、土砂災害警戒情報、大雨警報等について、都道府県から、ファックス、電話等により市町村へ通知されるとともに、気象庁からインターネットを活用して市町村へ提供しているところであるが、平成二十六年の土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成十二年法律第五十七号)の改正により、土砂災害警戒情報について、都道府県知事が市町村の長に通知するとともに一般に周知させるため必要な措置を講ずることが義務付けられたところであり、引き続き、情報伝達体制の充実に努めてまいりたい。
 さらに、特に気象状況が切迫した局面においては、市町村に対し、当該地域を管轄する気象台等から、その状況を直接電話で伝える取組を進めており、引き続き、確実な実施に努めてまいりたい。

四について

 平成二十二年十一月に内閣府が実施した「避難勧告・避難指示に関する住民向けアンケート調査」によれば、避難準備情報、避難勧告及び避難指示の違いについて、「よく知っていた」が五・一パーセント、「ある程度は知っていた」が五十三・〇パーセント、「はじめて知った」が四十一・九パーセントであった。

五について

 お尋ねについては、「災害時の避難に関する専門調査会報告」(平成二十四年三月中央防災会議「災害時の避難に関する専門調査会」)において、「市町村が住民などに安全確保行動を促すための手段として「避難準備情報」、「避難勧告」及び「避難指示」があるが、これらの違いが明確に認識されていない。」という課題に対応して、「市町村は、住民などが自ら適切な安全確保行動を判断できるように、「避難準備情報」、「避難勧告」、「避難指示」の違いについて、自らの明確な理解の下、住民などに対して周知・徹底することが必要である。」とされており、平成二十四年五月九日に、中央防災会議会長(内閣総理大臣)から都道府県防災会議会長に対し、市町村防災会議にこのことを含めた同報告の内容に留意されたい旨を周知するよう依頼を行っているところである。
 また、ガイドラインにおいては、避難勧告等が発令された場合に、そのときの状況に応じて住民等が採るべき避難行動及び避難勧告等を住民等に伝達する手段について、それぞれの具体例を明記しているところであり、平成二十六年四月八日に、参事官等から都道府県消防防災主管部長に対し、ガイドラインを市町村に周知するよう依頼しているところである。

六について

 政府としては、災害から国民の生命、身体及び財産を守るため、お尋ねの「局地的な大雨や集中豪雨に係る防災関係予算」を含め、防災対策の推進に必要となる予算を確保してきているところであり、引き続き、その確保に努めてまいりたい。