質問主意書

第189回国会(常会)

答弁書


答弁書第六〇号

内閣参質一八九第六〇号
  平成二十七年三月十三日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員櫻井充君提出タクシー政策と規制改革会議に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員櫻井充君提出タクシー政策と規制改革会議に関する質問に対する答弁書

一について

 政府としては、道路運送法及びタクシー業務適正化臨時措置法の一部を改正する法律(平成十二年法律第八十六号)の施行によるタクシー事業への参入や車両数の増加に関する規制緩和により、タクシーサービスの多様化や旅客の待ち時間の短縮等の一定の効果が認められる一方、地域によっては、需要が低迷する中、車両が増加する等の影響もあり、運転者の労働条件の悪化等の問題が生じていると認識している。

二について

 政府としては、規制改革会議が公表した「改正タクシー特措法の特定地域に係る指定基準に関する意見」(平成二十六年六月十三日公表。以下「意見」という。)は、特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法(平成二十一年法律第六十四号。以下「法」という。)第三条第一項の規定に基づく特定地域(以下「特定地域」という。)の指定基準について、行政の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用にならないよう慎重に設定すべきであるとの趣旨であると認識している。

三について

 政府としては、意見は、特定地域の指定基準について、行政の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用によって、憲法第二十二条第一項の規定により保障される営業の自由を不当に制限することのないよう慎重に設定すべきであるとの趣旨であると認識している。

四について

 国土交通大臣は、法第三条第一項の規定に基づき、特定の地域において、タクシー事業が供給過剰であると認める場合であって、当該地域におけるタクシー事業の一定の状況に照らして、当該地域における供給輸送力の削減をしなければ、タクシー事業の健全な経営を維持し、並びに輸送の安全及び利用者の利便を確保することにより、その地域公共交通としての機能を十分に発揮することが困難であるため、当該地域の関係者の自主的な取組を中心としてタクシー事業の適正化及び活性化を推進することが特に必要であると認めるときは、当該特定の地域を、期間を定めて特定地域として指定することができるとされており、同大臣が特定地域として指定するか否かの判断を行う場合の基準(以下「指定基準」という。)を策定したところである。指定基準の策定に当たっては、タクシー事業が供給過剰である地域で、供給過剰を効果的に解消するとともに、運転者の労働条件の改善やタクシーのサービス水準の向上等を実現し、タクシー事業を利用者にとって更に安全で、安心して利用できる公共交通機関として進化させるという議員立法である特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法等の一部を改正する法律(平成二十五年法律第八十三号)の趣旨を尊重するとともに、「特定地域の指定については、その法的効果に鑑み厳格に行うこと」とした「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(平成二十五年十一月八日衆議院国土交通委員会)及び「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(平成二十五年十一月十九日参議院国土交通委員会)や内閣総理大臣の諮問機関である規制改革会議が公表した意見を勘案したところである。

五について

 人口三十万人以上の都市を含む地域であることを特定地域の指定の要件としているのは、このような地域においては、営業所以外の場所におけるタクシーによる運送の引受け(以下「流し営業」という。)が多く行われており、タクシー事業の供給過剰による弊害が、そうした流し営業が行われている地域において顕在化しやすいことを踏まえたことによるものである。

六について

 お尋ねの「適正車両数」については、各地方運輸局等において算定しているものである。
 例えば、東北運輸局においては、まず、当該年度の前年度の総実車キロに当該年度前五年度の総実車キロの対前年度比率の平均値を乗じて得た数を、当該年度前五年度の総走行キロの平均値に平成十三年度の実車率を乗じて得た数を当該年度前五年度の実働車両数の平均値で除して得た数により除して得た数を、さらに、三百六十五で除して得た数を算出する。その上で、当該数を、平成十三年度の実働率又は当該年度前五年度の実働率の平均値のいずれか低い数値で除して得た数を適正車両数の上限とし、平成十三年度の実働率又は当該年度前五年度の実働率の平均値のいずれか高い数値で除して得た数を適正車両数の下限としている。
 適正車両数は、その他の地方運輸局等においても、東北運輸局と同様に、総実車キロにより示された直近の需要量及び総走行キロ、実働率等により算出された一日一台当たりの直近の供給量に基づき、直近の需要量に対応した車両の数を算定しているものであり、直近の需要と供給の動向を踏まえた適正なものと認識している。

七について

 六についてで述べたとおり、適正車両数の算定に当たっては、直近の需要と供給の動向を踏まえており、「現在の市場環境を反映しているとはいえず」との御指摘は当たらないものと認識している。

八について

 適正車両数は、道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)に基づく営業区域ごとに、当該営業区域に事業所を置く事業者の輸送実績報告に基づき算定しており、地域の需要と供給の動向を踏まえたものと認識している。