質問主意書

第189回国会(常会)

答弁書


答弁書第五四号

内閣参質一八九第五四号
  平成二十七年三月十日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員川田龍平君提出六ヶ所・東海両再処理工場の重大事故防止と核燃料施設の新規制基準適合性審査の強化等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出六ヶ所・東海両再処理工場の重大事故防止と核燃料施設の新規制基準適合性審査の強化等に関する質問に対する答弁書

一の1について

 再処理施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則(平成二十五年原子力規制委員会規則第二十七号。以下「事業指定基準規則」という。)においては、再処理設備及びその附属施設(以下「再処理施設」という。)は、冷却機能の喪失により高レベル放射性液体廃棄物が沸騰し、大量の放射性物質が空気中に放出する事象等を含めた重大事故の発生及び拡大を防止するために必要な措置を講じたものでなければならないとされている。当該措置とは、重大事故の発生及び拡大を防止するための設備が有効に機能するかを確認することとされており、確認に当たっては、重大事故が単独で、同時に又は連鎖して発生することを想定して評価することとされている。原子力規制委員会においては、当該評価の適否を含め、再処理事業者からの核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)第四十四条第一項の規定に基づく再処理の事業の指定の申請及び原子炉等規制法第四十四条の四第一項の規定に基づく再処理の事業に係る変更の許可の申請の内容について、事業指定基準規則に係る適合性審査を行うこととされている。なお、再処理事業者から申請書等が提出された場合には、その内容を同委員会のホームページにおいて公表している。

一の2について

 再処理事業者は、原子炉等規制法第四十六条の二の二の規定に基づき、再処理施設の性能が技術上の基準に適合するよう当該再処理施設を維持することが義務付けられており、原子力規制委員会においては、原子炉等規制法第四十六条の二の三の規定に基づき、再処理施設の性能が技術上の基準に適合しているかどうかについて毎年一回検査を行っている。
 また、再処理事業者は、原子炉等規制法第五十条第一項の規定に基づき、使用済燃料の再処理の事業に関する規則(昭和四十六年総理府令第十号)で定めるところにより再処理施設の巡視及び点検並びにこれらに伴う処置に関すること等について保安規定を定めなければならず、再処理事業者及びその従業者は、同条第四項の規定に基づき、これを守らなければならないとされている。また、同委員会においては、同条第五項の規定に基づき、再処理事業者及びその従業者が保安規定を遵守しているかについて、定期的に検査を行うこととされている。

一の3及び9について

 お尋ねについては、原子力規制委員会において、現在、事業指定基準規則等に係る適合性審査を行っていることから、現時点でお答えすることは困難である。

一の4について

 政府としては、独立行政法人日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」という。)の核燃料サイクル工学研究所再処理施設(以下「東海再処理施設」という。)に東京電力株式会社の福島第一原子力発電所に到達したものと同程度の津波が襲来した場合におけるお尋ねの「同施設に貯蔵してある高レベル放射性廃液」に具体的に生じる事象については評価していない。原子力機構によれば、津波による冷却機能の喪失等への対策として、敷地内の高台への電源車の配備等を行っているとのことである。

一の5について

 原子力機構によれば、東海再処理施設の敷地外への放射性物質や放射線の著しい放出を伴う事故への対策として、東海再処理施設において、電源の多重化等の冷却機能の確保等を行っているとのことである。政府としては、東海再処理施設の安全確保のため、今後とも原子力機構が必要な措置を講ずるよう指導してまいりたい。

一の6及び7について

 事業指定基準規則においては、重大事故の発生及び拡大を防止するための設備が有効に機能するかを確認するに当たっては、重大事故が単独で、同時に又は連鎖して発生することを想定して評価することを求めている。
 また、事業指定基準規則においては、重大事故が発生した場合における再処理施設を設置する工場又は事業所外への放射性物質及び放射線の放出を抑制するために必要な設備を設けることを求めている。
 さらに、お尋ねの「この基準を満たさない限り六ヶ所再処理工場の本格稼働は認めるべきではない」との点については、日本原燃株式会社の再処理事業所再処理施設について、現在、事業指定基準規則等に係る適合性審査を行っていることから、現時点でお答えすることは困難である。

一の8について

 政府として、御指摘の報道及び御指摘の者らの下北半島南部における海成段丘のとう曲変形に係る研究については承知している。

一の10について

 原子力災害対策指針(平成二十四年十月三十一日原子力規制委員会決定)において、再処理施設に係る原子力災害対策重点区域(以下「重点区域」という。)の範囲の目安としては、再処理施設から半径約五キロメートルとされているが、実用発電用原子炉に係る重点区域の設定の考え方を踏まえ、再処理施設に係る重点区域の範囲の見直しを行うこととしている。なお、当該見直しを踏まえ、原子力災害対策に係る地域防災計画を作成すべき範囲について検討を行うこととしている。

二の1及び2について

 御指摘の委員の就任前に、御指摘の委員と原子力関連企業等との間で報酬や寄附金等の形で金銭の授受があったことは承知しているが、原子力規制委員会設置法(平成二十四年法律第四十七号)第七条第七項の規定に定める欠格要件に該当しない者のうちから、専門的知見に基づき中立公正な立場で独立して職権を行使する原子力規制委員会の委員として最適任と考えられる者を選定しており、同条の規定に抵触するものではないと考えている。
 御指摘の「自己申告書」が何を指すのか明らかではないが、御指摘の委員は同法第十一条第四項の規定に基づき定められた「原子力規制委員会委員長及び委員の倫理等に係る行動規範」(平成二十四年九月十九日原子力規制委員会決定)に基づき、直近三年間の個人の研究又は所属する研究室等に対する原子力事業者等からの寄附金額等の情報についての公表を行ったものである。同規範は、職務の中立公正に関し国民の疑惑又は不信を招くような行為を防止するために定められたものである。

二の3について

 広報資料等において、原子力規制委員会は「原子力に対する確かな規制を通じて、人と環境を守る」ことを使命とすることを明示しており、こうしたことを広く国民に伝えていくことは重要と考えている。

二の4について

 原子力規制委員会において、最新の科学的知見や国際原子力機関等の規制基準を参考にしつつ再処理施設の規制に必要な基準を設定し、再処理施設がその基準に適合しているか否かを確認しているところであるが、安全性の追求に終わりはなく、継続的な安全性の向上が重要であり、再処理事業者においても、更なる安全性の向上に努めるべきであると考えている。