質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第三四五号

介護サービスを取り巻く環境整備に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年九月二十五日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   介護サービスを取り巻く環境整備に関する質問主意書

 我が国の六十五歳以上の高齢者人口は過去最高の三千三百万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)も二十六・〇%と過去最高となった(平成二十六年十月一日現在)。このように、超高齢社会に入った日本で介護は国民的な課題となっている。しかしながら、介護サービスを取り巻く環境は厳しさを増す一方である。介護サービスの受益者である高齢者やその家族のためにも、介護サービスを取り巻く環境の整備は急務であると言える。
 この認識を前提に以下のとおり質問する。

一 介護サービス事業者の倒産件数(負債額一千万円以上)が、今年一から八月の八か月で前年一年間を上回る五十五件に達した(東京商工リサーチ調べ)。平成十二年の介護保険制度開始以来の年間倒産件数の最多記録を既に更新している。倒産の背景には、事業者に支払われる介護報酬が本年四月に二・二七%引き下げられたことや、景気回復で他業種に人材が流れたことによる人手不足があるとされる。介護サービスの休止により、最終的に迷惑をこうむることになるのは、介護を必要とする当事者である。このような介護報酬引下げに起因する現在の事態は、かねてから私たちが懸念していたことであり、政府の政策的な判断の結果と言える。この事態を政府はどのように認識しているか示されたい。

二 平成二十七年四月からの介護報酬改定では、人材確保のために「処遇改善加算」も拡充してはいる。しかし、処遇改善加算は収入の低い事業所では加算額も低くなる。また、介護職以外のスタッフの賃金に充てることもできない。これらの課題が人手不足の解決を阻害し、介護施設の職員の確保を困難にしている面があると考えるが、政府の見解を示されたい。

三 日本だけではなく世界の高齢化は急速に進行している。特にアジア諸国においては、日本と同等かそれ以上の速さで高齢社会を迎えると予測されている。そのような情勢の中で、気配りときめ細やかなサービスを特徴とする「日本式介護・高齢者向けサービス」の積極的な海外展開を、日本の成長戦略の一環として図っていくべきと考える。介護の海外展開については、「日本再興戦略」改訂二〇一四(平成二十六年六月二十四日閣議決定)において位置付けられるなど政府としても取組を進めていくこととされているが、そのための具体的な取組とタイムスケジュールを示されたい。

四 首都圏は、日本を代表する産業が集積しており、他地域に比べ賃金水準が高い。他産業に比べ高いとは言えない報酬水準にとどまっている介護職は、首都圏における人材確保と言う点で、賃金水準においてはるかに優位にある他の産業とは競争ができない状況である。しかしながら、首都圏を始め大都市部については、今後急速に介護サービスの需要増大が予想される。結果として、首都圏では介護人材の確保が極めて困難になり、介護事業の継続が極めて困難となる事態が予想される。現在の介護報酬体系では、若干の「地域区分」を加味しているが、首都圏における他産業との賃金格差を是正するレベルとは到底言えない。
 このような首都圏における賃金格差に由来する介護人材確保の困難性について、政府はどのような問題意識を持ち、どのような対応を検討されているのか、明らかにされたい。

  右質問する。