質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第三四四号

医療に関する適切な税制に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年九月二十五日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   医療に関する適切な税制に関する質問主意書

 医療や診療報酬に関係する税制について、以下のとおり質問する。
 少子高齢化が急速に進む我が国にあっては、国民の健康を支える医療体制のさらなる充実が必要となっている。しかるに、医療や病院経営を支える関連税制は、必ずしも医療現場の実情を踏まえたものになっていない。これらの税制について適切な施策を行うことが、国民皆保険を堅持することにもつながると考える。
 その必要性の認識の下、以下のとおり質問を行う。

一 社会保険診療に係る収入に対する消費税が「非課税」とされているため、医療機器や医薬品の仕入価格のうち、消費税率分を医療機関が負担することとなる、「医療機関等の控除対象外消費税(損税)」問題については、過去、診療報酬に医療機関の負担分を上乗せすることで、医療機関の消費税負担を補填してきた。しかしながら、この補填方式には大きな問題があり、速やかに医療機関等の消費税負担をめぐる問題の抜本的解決を図る必要があると考える。

1 診療報酬による補填に関し、制度的・マクロ的な補填の過不足についての政府の認識を示されたい。消費税率五%時点までの診療報酬本体部分の補填不足が依然として残存しているという主張に対し、政府は、補填不足はないと主張してきた。補填不足はないという根拠について具体的に示されたい。また、現在もこのような認識に立っているのか、現時点における政府の見解を示されたい。
2 平成二十六年の消費税八%への引上げに対しても、診療報酬の改定によって手当てが行われた。この平成二十六年の診療報酬改定による補填状況について、政府の認識を示されたい。また、その補填状況を踏まえ、次回平成二十八年改定の方向性及び検討状況を示されたい。
3 医療機関の税負担は、それぞれの仕入構成によって異なる。高額な医療機器等、設備投資の多い医療機関において負担割合が高くなっており、高額の設備投資を要する医療機関とそうではない医療機関との間で不公平が生じている。このため、医療機関による仕入構成の違いへの対応については、診療報酬による補填では対応できないと考えるが、政府の見解を示されたい。
4 前述のように、診療報酬への上乗せによる補填に対しては、実際に医療機関が負担している税との乖離や、病院機能の違いや高額投資の有無などによる医療機関の間の不公平があると指摘されている。また、社会保険診療を非課税とする一方で、医療機関が仕入れ時に掛かる消費税を負担しているという制度は、国民や患者にとっては分かりにくいものである。控除対象外消費税の問題を診療報酬への上乗せにより対応することには限界があり、関係者の負担の公平性、透明性を確保するために制度の抜本的解決が必要と考える。平成二十七年度の与党税制改正大綱は、抜本的な解決に向け「個々の診療報酬項目に含まれる仕入れ税額相当額分を「見える化」することなどにより実態の正確な把握を行う」としている。「見える化」によって、診療報酬における消費税相当分が明らかになり、関係者の理解が促されるとともに、医療機関における消費税相当分の診療報酬の公平な配分が可能になると考えるが、この「見える化」の必要性に対する政府の見解及び政府が行っている「見える化」の取組状況を示されたい。
5 この問題については、再三委員会質疑で取り上げてきたが、いまだ抜本的な解決に至っていない。平成二十九年四月に想定される消費税の再引上げの影響の大きさに鑑みても、この問題の抜本的解決は「消費税率十%引上げ時」ではなく、前もって準備を進めた上で「消費税率十%引上げ時まで」に実施すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

二 消費税の簡易課税制度は、課税売上高の一定割合を仕入れとみなして、中小事業者の事務負担を軽減する制度である。中小事業者では、専任の記帳・経理等の事務を行う従業員はほとんどいないため、中小医療機関にとっても極めて必要性の高い制度と言える。
 このように、消費税の簡易課税制度は中小医療機関の事務負担軽減措置として必要不可欠であり、その見直しは慎重に行うべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 医療機関に対する事業税の特例措置の見直し論が台頭している。事業税が課税になれば、医療機関の経営基盤が揺らぎ、結果として地域医療に混乱を来すことになりかねない。
 そもそも医療は公共的なものであり、そのため医療法でも非営利性が義務付けられている。また、社会保険診療は、事業税の非課税を前提として、低廉な公定価格が定められている。さらに、医師は住民健診、予防接種、学校医等の地域医療活動に積極的に取り組んでおり、医療機関は行政が行うべき公共的サービスを自ら担っていると言える。それゆえ昭和二十七年から社会保険診療に係る所得については非課税とされていたのであるが、これらの非課税とされてきた理由付けに変更があるのか。政府の認識を明らかにされたい。

  右質問する。