質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第三三九号

いじめ撲滅に向けた更なる取組に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年九月二十五日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   いじめ撲滅に向けた更なる取組に関する質問主意書

 去る七月五日、岩手県矢巾町で中学二年の男子生徒がいじめを苦に電車に飛び込み自ら命を絶った。男子生徒は、担任と交わす「生活記録ノート」に繰り返されるいじめの実態や自殺を示唆する内容を記すなど、一年時から繰り返し「SOS」を発していたにもかかわらず、その声は届かなかった(以下「本件事件」という。)。
 平成二十五年九月には、滋賀県大津市におけるいじめ自殺事件を契機に成立したいじめ防止対策推進法が施行されたが、同年度のいじめ認知件数は十八万五千件を超え、いじめを原因とする自殺は学校から報告のあったものだけでも九件に上るなど、依然としていじめはなくならず、いじめによる自殺も後を絶たないのが実情である。
 ついては、いじめ撲滅に向けた更なる取組が必要であるとの観点から、以下質問する。

一 いじめ防止対策推進法が、国を始めとする関係者の責務を定めるとともに、学校に対しては、いじめ防止基本方針の策定やいじめ対策組織の設置を義務付け、児童生徒の心身等に重大な被害が生じた疑いがある場合には速やかに調査組織を設けること等を求めているにもかかわらず、いじめの重大事案が発生するのはなぜか、また、その責任はどこにあると考えるか、政府の見解を示されたい。

二 報道によれば、本件事件の男子生徒の学校では、いじめ防止基本方針は策定されていたが、そこに定められている教職員研修や保護者アンケートは実施されておらず、また、いじめ対策組織は設置されていたが、いじめの報告自体がなく、実質的な議論はなされていなかった。さらに、今回の事案については、担任から校長等への報告はなく、教職員間の情報共有や組織的対応もなされていなかったとのことである。政府は、事実関係をどのように把握しているか明らかにされたい。

三 本件事件を受け、文部科学省は、八月四日、学校のいじめ対策について緊急点検を求める通知を全国の教育委員会等に発出した。いじめ防止対策推進法に基づく取組を強化し、その実効性を高めるためには、当該通知を学校現場に周知徹底するとともに、点検結果を踏まえた適切な対応を促すことが必要であると考えるが、政府としてどのような措置を講ずるつもりか明らかにされたい。

四 いじめ防止対策推進法に基づき様々な取組がなされたとしても、それらが形骸化していてはいじめの未然防止や早期発見・早期対応にはつながらない。教職員が子供の「SOS」を察知する感度を高め、いじめの重大事案に発展するかもしれないという危機意識を高めることが重要である。それを可能とする環境整備として、少人数学級等により一人一人の子供に目が行き届きやすくするほか、スクールカウンセラー等の専門家との連携も必要であると考えるが、政府の見解を示されたい。

五 本件事件において学校がいじめ認知件数をゼロと報告していたことから、文部科学省は、八月二十五日、同省が毎年実施している全国的ないじめの実態調査(平成二十六年度分)について、教育委員会等に再調査を求める通知を発出した。統一的な調査手法はなく、教育委員会や学校がアンケートの実施方法、質問内容等を決定している中で、認知されずに見過ごされているいじめ事案を掘り起こし必要な対応につなげるため、政府は、教育委員会等に対し、どのような工夫や取組を求めていくのか明らかにされたい。

  右質問する。