質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第三三八号

中小法人等への課税に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年九月二十五日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   中小法人等への課税に関する質問主意書

 平成二十四年十二月に安倍内閣が発足してから二年九か月が経過するが、我が国経済は成長軌道に乗るどころか、円安等による悪い物価上昇や実質賃金の低下などにより、国民生活に極めて甚大な影響が及んでいる。このような経済状況の悪化や格差の拡大を、このまま放置することは到底できない。とりわけ、国民生活等に直結する税制については、「公平・中立・簡素」に加え、納税者の立場に立った制度面・執行面の抜本的な見直しが今こそ必要である。
 こうした税制の抜本的な見直しにおける基本的な考え方に立って、以下質問する。

一 消費税制度の納税義務は、前々年又は前々事業年度(「基準期間」)を基に判定しているが、これまでの政府による様々な見直しにもかかわらず、多額の課税売上高を有しながら免税事業者となる余地が一定程度残っているなど、根本的な解決策となっていない。
 また、免税事業者が多額の設備投資を行い、消費税の還付を受けようとする場合には、課税期間開始前に「課税事業者選択届出書」を提出する必要がある。しかし、この取扱いが全ての免税事業者に周知・理解されているとは言い難く、届出書の事前提出を行わなかったために、消費税の還付を受けられなくなった事例も少なくない。
 こうした弊害に関して、政府はどのような問題意識を有しているか、明らかにされたい。

二 こうした弊害を抜本的に解消するために、私は次のとおり、制度の見直しをすべきと考える。
 まず、納税義務を判定するための基準期間制度を廃止して、全ての事業者を課税事業者として取り扱う。その上で、その課税期間の課税売上高が一千万円以下の小規模事業者には、申告・納付を不要とする申告不要制度を創設する。また、簡易課税制度についても同様に、現行の基準期間による判定ではなく当該課税期間の課税売上高による判定とし、確定申告書の提出時に簡易課税制度を選択できる制度とする。
 この見解に対する政府の認識を明らかにされたい。

三 平成二十七年度税制改正においては、法人実効税率の引下げに伴う代替財源を確保するため、欠損金の繰越控除制度について、控除限度額を所得金額の百分の五十相当額まで段階的に引き下げることとなった。その際、中小法人等への適用は見送られ、従前通りとされたが、平成二十六年十二月の与党の「平成二十七年度税制改正大綱」においては、欠損金の繰越控除制度を始め、大法人(資本金一億円超の法人)と異なる扱いが認められている中小法人に対して、資本金一億円以下という資本金の基準をもって「一律に扱い、同一の制度を適用していることの妥当性について、検討を行う」と明記された。
 しかし、中小法人の多くが過去のデフレ不況の影響から未だに抜け切れず苦しんでいる中で、欠損金の繰越控除制度は企業経営上の有効なリスクヘッジとなっている。事業基盤の弱い中小法人については、業績回復の阻害要因とならないようにするため、現行の中小法人等に係る欠損金の繰越控除制度は今後とも維持すべきと考えるが、政府の認識を明らかにされたい。

四 平成二十七年度税制改正では、法人実効税率の引下げとともに、公共サービスの対価を広く公平に分かち合うという地方税の応益課税を強化するなどの観点から、大法人向けに法人事業税の外形標準課税の拡大が行われた。また、政府は、平成二十八年度税制改正以降も、法人実効税率を二十パーセント台まで引き下げることを目指して、課税ベースの更なる拡大等を行うこととしている。
 地方税における安定財源の確保や行政サービスの応益性の観点からは、大法人向けの外形標準課税の拡大は必要であるが、中小法人については雇用の安定や赤字法人の担税力を考慮し、景気回復の足かせにならないよう外形標準課税を導入すべきでないと考えるが、政府の認識を明らかにされたい。

  右質問する。