質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第三三六号

マイカーを用いた旅客運送に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年九月二十五日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   マイカーを用いた旅客運送に関する質問主意書

 タクシーによる旅客の運送については、輸送の安全、利用者の保護等を図る観点から、道路運送法において必要な許認可等が定められており、こうした許認可等を得ずに有償で旅客を運送することは、いわゆる白タク行為として禁止されている。
 しかしながら、近年、一般のドライバーと旅客とをスマートフォン等の配車専用のアプリケーション(以下「配車アプリ」という。)によって仲介し、タクシー事業の許可を受けていない者が旅客を運送するというマイカーを用いた旅客運送を導入しようという動きが一部に見られる。
 平成二十七年二月、米ウーバー・テクノロジーズ(以下「ウーバー社」という。)は、九州大学の関連法人「産学連携機構九州」と提携し、交通需要のデータ収集を目的として、マイカーを用いた旅客運送の社会実験を実施した。この社会実験において、利用者は無償で利用できる方式としていたが、実際には、ウーバー社からドライバーに対価が支払われていたため、国土交通省は、白タク行為を禁止している道路運送法に抵触するとして、同年三月に中止を指導している。
 また、一般社団法人新経済連盟が、個人の持ち家やマイカーなどの遊休資産を活用することにより経済活性化を図るというシェアリングエコノミーの導入について規制改革会議及び国家戦略特区諮問会議に提案を行っている。
 平成二十七年五月、規制改革会議は、マイカーを用いた旅客運送の導入について、国土交通省に検討を要請し、検討結果を同年六月に得ている。同省は、検討の対象となった道路運送法の各条項に関して「対応不可」の結論を出しており、安全上の許可を得ることなくマイカーを用いて旅客運送を行うことを認めることは輸送の安全等の確保の観点から適切ではないこと、諸外国においても業務停止命令や訴訟が起きており大きな議論になっていることなどを指摘している。
 また、国土交通省は、マイカーを用いた旅客運送は、許可対象事業者に求められる事項に照らして、ドライバーが旅客を安全に輸送するために必要な二種免許を有していないこと、安全確保や法令遵守のための運行管理が行われないこと、旅客運送を行う車両としての整備・点検が適切になされているか不明確であること、事故発生時の責任はマイカーのドライバーのみが負い、仲介業者は責任を問われないこと、事故発生時にマイカー用の保険で補償が行われるか不明確なことなど多くの問題も指摘している。
 特に、マイカーを用いた旅客運送は、平成二十五年に議員立法により制定された「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法等の一部を改正する法律」による特定地域の指定制度などによって供給過剰状態を是正しつつあるタクシー事業とも大きく競合し、健全な事業環境の形成に深刻な影響をもたらすことも非常に危惧されるところである。
 この問題意識を前提に、以下質問する。

一 規制改革会議の資料「規制改革ホットライン検討要請項目の現状と措置状況」(管理番号27063022)において、シェアリングエコノミーを導入するため、「持ち家やマイカーなどの遊休資産の活用を阻害する可能性がある規制を洗い出し、それに対する必要な措置を検討し、実施する」との要望を一般社団法人新経済連盟が規制改革会議に対し行ったが、国土交通省から該当法令である道路運送法第四条第一項、第二十三条、第二十五条、第二十七条、第七十八条、第九十六条、第九十七条等について「対応不可」とされている。この検討結果に基づき、規制改革会議においては、輸送の安全、利用者の保護等を図る観点から、今般の一般社団法人新経済連盟による要望内容による道路運送法の改正に向けた議論を主たるテーマに据えるべきでないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

二 国家戦略特区ワーキンググループは、平成二十七年七月二十七日に、一般社団法人新経済連盟に対しヒアリングを実施している。同連盟は、同年四月二十八日から六月五日まで実施された「国家戦略特区等における新たな措置に係る提案募集」に対して「具体的な事業の実施内容」として「シェアリングエコノミーの実現/遊休資産の有効活用」を提案している。そして、「現行法は、(中略)個人が自家用車を用いて運賃の支払いを受けてライドシェアリングを行ったりすることを想定しておらず、我が国でこれを行うと違法と判断される可能性がある。」として、道路運送法第四条、第七十八条及び第八十条並びに道路運送法施行規則第五十二条を事業の実施を不可能又は困難とする規制等の根拠条文として掲げ、その規制・制度改革のために提案する新たな措置として「自家用資産をネット上でマッチングされる等、有償での各種シェア・サービスを合法的に行うことができるように関係法令等を整備する」ことを求めている。しかし、前記一において明らかとなったように、国土交通省は、マイカーを用いた旅客運送については、輸送の安全等を図る観点から適切でないと指摘しており、一般社団法人新経済連盟の要望に係る道路運送法の該当条項については、「対応不可」としている。輸送の安全等を図るという必要性は、国家戦略特区においても変わらないはずである。したがって、今後、輸送の安全等を図る観点から、道路運送法におけるいわゆる白タク行為の禁止を緩和するような特例措置は、国家戦略特区等といえども実施すべきではないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。