質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第三三四号

トラック運送事業における人材不足の解決に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年九月二十五日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   トラック運送事業における人材不足の解決に関する質問主意書

 トラック運送事業に従事するドライバーの平均年収は全産業平均と比較して、百万円以上も低い。一方、月間実労働時間は全産業平均と比較して、約三十時間以上も長い。ドライバーは、他産業と比べて長時間労働であるにもかかわらず低賃金という実態にある。一方、トラック運送事業の有効求人倍率は、年々上昇傾向にあり、平成二十六年には職業全体の有効求人倍率が一・〇〇倍であるのに対して、一・五五倍と非常に高いものとなっているが、「ドライバーが募集しても集まらない」状況が継続している。このようなドライバー不足が更に悪化すると、トラック運送事業が我が国経済のライフラインとしての機能を維持できなくなるおそれがある。
 この問題意識を前提に、以下質問する。

一 ドライバー不足の最大の要因は、他産業に比べて長時間労働で低賃金という厳しい労働条件にあり、安定した輸送力を確保するためには、ドライバーの労働条件を他産業並に向上させなければならないと考える。しかしながら、この問題の背景には、運賃・料金が値崩れしてしまっていることがある。事業者自体が、適正な運賃・料金を収受できていないために、非常に厳しい事業経営を強いられており、結果として、ドライバーの労働条件の低下を余儀なくされていると考える。この運賃・料金が適切な水準を維持できていない問題について、政府はどのような問題意識を持ち、どのような対策を検討しているのか、明らかにされたい。

二 トラックドライバー不足に対応した具体的な人材確保対策が必要だと考える。
 厚生労働省が所管する雇用関係助成金については、例えば、建設業では業種に特化した形で従業員の処遇や職場環境の改善を図る際に利用できる「建設労働者確保育成助成金」がある。トラック運送事業についても同等の内容の助成金を設けることを検討すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

三 前記二に関して、同じくトラックドライバー不足に対応した人材確保対策としては、ハローワーク等も積極的に活用すべきであり、例えばトラック運送業界に特化した合同企業説明会等の開催などについて、ハローワーク等に働き掛けるべきではないかと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

四 平成二十七年度から「トラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会」を中央及び全都道府県に設置し、取引環境と労働時間の改善をテーマに、関係者が一体となって取組を推進している。来年度以降、パイロット事業を実施し、長時間労働抑制に向けて、トラック運送事業者と荷主が諸対策を講じることとされているところ、長時間労働抑制が促進されるよう、中小企業に対する労働時間の短縮を支援する助成金の拡充等、諸対策に係る補助・助成の充実を図るべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

五 トラックドライバーの労働条件を改善するための「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(以下「改善基準告示」という。)の遵守に当たっては、ドライバーや事業者だけの努力では対応が困難であり、荷主企業の協力が必須である。例えば長時間労働の防止については、積み込み時の出荷遅れや荷卸し時の順番待ちなどによる「手待時間」の短縮などが必要となる。しかしながら、このようなコンプライアンスのためのルール遵守に向け荷主企業の理解と協力が得られている事例は数少ない。
 したがって、運送事業者の自主的な努力だけに頼るのではなく、行政から荷主企業への改善基準告示の周知を徹底し、その遵守へ向け運送事業者に対する協力を厳しく指導すべきではないかと考えるが、この問題について政府はどのように具体的に取り組んでいるのか、明らかにされたい。

  右質問する。