質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第三三〇号

あはき師の労災保険取扱いに係る労働局との協定に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年九月二十五日

大久保 勉   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   あはき師の労災保険取扱いに係る労働局との協定に関する質問主意書

 あん摩マツサージ指圧師、はり師及びきゆう師(以下「あはき師」という。)が、労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)の被保険者に施した療養に関して、都道府県労働局(以下「労働局」という。)に療養(補償)請求を行うに当たっては、「指名施術所」としての指名を労働局より受ける必要があり、かつ、当該指名を受けるには、予め労働局と協定を締結した団体(以下「対象団体」という。)に所属することが実務として定着している(以下「本件実務」という。)。
 いうまでも無く、被保険者は、あはき師を選択する自由があり、かつ、あはき師に対して、療養(補償)請求の受領を委任する民法上の権限を制限する法令は存しない。しかし、本件実務により、被保険者は自身が選択するあはき師の種類によって、民法上の委任をする権限が制限されているのが現状である。
 よって以下、質問する。

一 本件実務の趣旨及び根拠として、厚生労働省からは、平成二十七年五月八日及び六月二十九日に、「あはき師による療養(補償)請求が不正の温床となっていることから、その対策として、対象団体によるチェック機能を期待している点にある」との説明(以下「本件説明」という。)があった。本件説明を政府の正式な見解と考えてよいか、明らかにされたい。また、本件説明以外に本件実務の趣旨及び根拠があれば、併せて明らかにされたい。

二 前記一に関して、あはき師による労災保険の療養(補償)請求が不正の温床となっていることを示すデータはあるか、明らかにされたい。データがある場合は、データとともに、データの裏付けとなる調査における、調査対象、調査年月日、調査期間及び調査項目を併せて明らかにされたい。データがない場合は、対象団体に加入することなく療養(補償)請求が認められる柔道整復師による療養を受けた被保険者及び対象団体に加入しているあはき師による療養を受けた被保険者と、対象団体に加入していないあはき師による療養を受けた被保険者との間に、療養(補償)請求方法に差異を設ける趣旨及び根拠を明らかにされたい。

三 対象団体となるために必要な要件、基準及び書類を明らかにされたい。特に、対象団体となるための加入人数要件があれば、明らかにされたい。

四 対象団体に加入していないあはき師による療養を受けた者のうち、健康保険を利用する者と、労災保険を利用する者とで、療養(補償)請求方法に差異を設ける趣旨及び根拠を明らかにされたい。

五 健康保険金の請求に関し、あはき師が対象団体に加入している場合と加入していない場合とを比較した際、不正請求の件数、額又は割合において、対象団体に加入していない場合に不正請求の件数又は額が多い若しくは割合が高いことを示すデータはあるか。データがある場合は、データとともに、データの裏付けとなる調査における、調査対象、調査年月日、調査期間及び調査項目を明らかにされたい(調査が複数回の場合は直近五回分)。データがない場合は、調査を行わない理由を示されたい。

六 健康保険金の請求に関し、あはき師による請求の場合と柔道整復師による請求の場合とを比較した際、不正請求の件数、額又は割合において、あはき師による請求の場合に不正請求の件数又は額が多い若しくは割合が高いことを示すデータはあるか。データがある場合は、データとともに、データの裏付けとなる調査における、調査対象、調査年月日、調査期間及び調査項目を明らかにされたい(調査が複数回の場合は直近五回分)。データがない場合は、調査を行わない理由を明らかにされたい。

七 対象団体に加入することなく療養(補償)請求が認められる柔道整復師による療養を受けた被保険者又は対象団体に加入しているあはき師による療養を受けた被保険者と、対象団体に加入していないあはき師による療養を受けた被保険者との間に療養(補償)請求方法に差異を設ける本件実務は、憲法第十四条が保障する平等権を侵害するとの指摘もあるが、これに対する政府の見解を明らかにされたい。

八 労働局に対して療養(補償)請求を行うあはき師が、対象団体への加入が強制されることになる本件実務は、憲法第二十一条第一項が保障する結社の自由及び憲法第二十二条第一項が保障する経済活動の自由を侵害するとの指摘もあるが、これに対する政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。