質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第三一七号

不具合が発生した川内原発一号機を運転させ続けることに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年九月二十四日

山本 太郎   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   不具合が発生した川内原発一号機を運転させ続けることに関する質問主意書

 平成二十七年八月十一日、九州電力株式会社(以下「九電」という。)川内原子力発電所一号機(以下「川内原発一号機」という。)が再稼働されたが、再稼働後九日目の八月二十日に早くも不具合が発生した。九電による点検の結果、八月二十四日に、発電に用いた蒸気を冷却して水に戻す装置である二次系復水器内の細管五本に損傷が見つかり、今回の不具合はその損傷部位から海水が漏出したものとされた。九電は、翌八月二十五日に同細管を含めた計六十九本の細管の施栓を実施すると、早くもその二日後の八月二十七日には、発電機出力を七十五パーセントから九十五パーセントに、次いで八月二十九日には百パーセントに上げ、八月三十一日には定格熱出力一定運転すなわちフル稼働の状態とした。
 九電では川内原子力発電所で想定される不具合を、その深刻度に応じてレベル〇から四に分類しているとのことであり、今回の不具合は発電・送電を続けながら対応すると定めた「レベル二」に該当すると判断して原子力規制委員会(以下「規制委」という。)に報告、規制委の田中俊一委員長は八月二十六日の定例記者会見において、細管の損傷に関する記者からの質問に対して「しばらく止まっていた原子炉ですから、いろんなところで水、お湯を回せばいろんなことが起こりうるので、慎重に一歩一歩やっていくということで、そういう過程で見つかったということかと思います。それは適切に対応いただいていると私は思っていますが。」と述べ、特に安全上の問題はないとの見解を示した。
 しかしながら九電川内原発一号機は、昭和五十九年に営業運転を開始、今年で運転開始後三十一年を経過した高経年炉であり、今回見つかった細管の損傷以外にも、経年劣化による物理的変化があらゆる装置、機器に潜在している可能性が否定できないことは、今回の運転再開直後の細管損傷の発覚という異常事態を鑑みれば、もはや疑う余地はない。
 「世界で最も厳しい水準の規制基準」と政府が認めた、いわゆる新規制基準を満たしたとして再稼働されたはずの原子力発電所(以下「原発」という。)が、早くも再稼働後九日目に不具合を生じたというこの異常事態について、また、不具合が発覚したのち一週間で、詳細な原因究明もなされないまま早くも発電機出力を上昇させ、営業運転へと進めようとしている拙速な再稼働行程について、九電始め規制委さらに安倍内閣は、近隣住民に対してはもちろんのこと、国民に対して真摯かつ十分な説明をすべきであるし、また、詳細な原因究明及び国民に対する十分な説明なくして、このような損傷が存在している老朽高経年炉を、これ以上運転させ続けるべきではないと考える。
 以上を踏まえて、不具合が発生した九電川内原発一号機を運転させ続けることに関して、安倍内閣としてはいかなる認識を持っているのかを確認すべく、以下質問する。

一 今回の不具合について、規制委が九電からの第一報を受けたのはいつか、具体的日時を明示されたい。加えて、それは九電が九電川内原発一号機の計器異常を覚知した後、何時間経過していたのか、政府の把握している範囲で具体的に示されたい。

二 前記一に関して、九電からの第一報は、原子力施設における不具合発生時の対応として相応しい、迅速なものであったと言えるか、政府の認識を明らかに示されたい。

三 前記一に関して、九電から規制委に対して出された第一報の内容を具体的に示されたい。

四 九電川内原発一号機再稼働に係る使用前検査等で、今回不具合を生じた二次系復水器に関する検査はいつ行われたのか、その施工日時を明確に示されたい。加えて、その際の検査結果についても具体的に明らかにされたい。

五 今回不具合を生じた二次系復水器に関して、過去にも細管の損傷等の不具合を生じたことはあるか、明確に示されたい。また、使用されている細管の耐用年数は何年か、さらに過去に細管の交換履歴、修理歴等があれば、その日時も併せて具体的に明示されたい。

六 最低でも四年間運転停止していた原発を運転再開させた例は、九電川内原発一号機の他、世界各国において過去何例存在するか、国名及び原発名も併せて、政府の把握している範囲で具体的に明示されたい。

七 前記六に関して、これらの長期運転停止していた原発を運転再開させた後に、緊急停止や機器等の損傷等、何らかの不具合を生じた原発は、世界各国において過去何例存在するか、国名及び原発名も併せて、政府の把握している範囲で具体的に明示されたい。

八 九電は今回の不具合を発電・送電を続けながら対応すると定めた「レベル二」に該当すると判断したとのことであるが、規制委はその判断の決定過程において、いかなる関与をしたのか明確に示されたい。

九 今回不具合を生じた二次系復水器に関して、九電は損傷している細管を撤去交換することなく残し、施栓のみ行い、定格熱出力一定運転に向けて発電機出力を段階的に上昇させたが、今後も、このまま損傷した細管を撤去交換することなく復水器内に残した状態で運転継続させるとの理解でよいか。加えて、損傷した細管を撤去交換することなく復水器内に残した状態のまま運転継続させることを、政府としては容認しているとの理解でよいか、政府の認識を明確に示されたい。

十 「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(昭和三十二年法律第百六十六号)(以下「原子炉等規制法」という。)は、その第四十三条の三の二十三第一項で「原子力規制委員会は、発電用原子炉施設の位置、構造若しくは設備が第四十三条の三の六第一項第四号の基準に適合していないと認めるとき、発電用原子炉施設が第四十三条の三の十四の技術上の基準に適合していないと認めるとき、又は発電用原子炉施設の保全、発電用原子炉の運転若しくは核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物の運搬、貯蔵若しくは廃棄に関する措置が前条第一項の規定に基づく原子力規制委員会規則の規定に違反していると認めるときは、その発電用原子炉設置者に対し、当該発電用原子炉施設の使用の停止、改造、修理又は移転、発電用原子炉の運転の方法の指定その他保安のために必要な措置を命ずることができる。」としている。本条文にある原子炉等規制法第四十三条の三の十四においては「発電用原子炉設置者は、発電用原子炉施設を原子力規制委員会規則で定める技術上の基準に適合するように維持しなければならない。」としているが、損傷した細管が現在もなお撤去交換されることなく二次系復水器内に残されている状態の九電川内原発一号機は、「原子力規制委員会規則で定める技術上の基準に適合」している発電用原子炉施設であるとの理解でよいか、政府の認識を明確に示されたい。

十一 「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」(昭和五十三年通商産業省令第七十七号。以下「実用炉則」という。)は、品質保証計画における保安活動の改善に関して、その第七十五条第一項において「不適合に対する再発防止のために行う是正に関する処置(以下「是正処置」という。)に関する手順(第百三十四条各号に掲げる事故故障等の事象その他が発生した根本的な原因を究明するために行う分析(以下「根本原因分析」という。)の手順を含む。)を確立して行うこと。」としている。今回の二次系復水器に生じた不具合については、この根本原因分析の手順にのっとった原因究明が適切に行われたか否か、また、是正処置に関する手順にのっとった適切な再発防止策が講じられたか否かに関して、政府として九電に対し、いかなる確認を行ったのか、明確に示されたい。

十二 前記十一に関して、実用炉則においてその確立が求められている根本原因分析の手順にのっとった原因分析によって、今回の二次系復水器に生じた不具合すなわち細管損傷は、いかなる原因によって生じたものと結論されたのか、政府の把握している範囲において明確に示されたい。

十三 九電川内原発一号機は、「世界で最も厳しい水準の規制基準」と政府が認めた、いわゆる新規制基準を満たしたとして初めて再稼働された原子炉であるにもかかわらず、その再稼働後九日目という極めて早い段階で不具合を生じたことを鑑みれば、同基準そのものに瑕疵があると考えざるを得ないが、政府としての認識如何。

十四 今回の九電川内原発一号機に生じた不具合に関して、近隣住民及び国民に対して、政府としてはいかなる説明を行ったか。説明を行った事実があれば、その説明を行った日時と内容を具体的に示されたい。

十五 今回不具合が発生した九電川内原発一号機を、その不具合の根本原因がいまだ十分に解明されていない状態、また、近隣住民及び国民に対して根本原因及び再発防止策に関する説明がいまだ不十分な状況のまま営業運転に向け運転継続させれば、国民の我が国の原子力行政に対する不安や不信感を、より一層増幅することにつながりかねないと考えるが、政府の見解如何。

  右質問する。