質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第三〇四号

日本国憲法前文における「恐怖と欠乏から免かれ」の意味に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年九月十七日

藤末 健三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   日本国憲法前文における「恐怖と欠乏から免かれ」の意味に関する質問主意書

 政府は、憲法前文における「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」という文言(以下「本文言」という。)の趣旨について、平成二十七年三月二十四日の「参議院議員小西洋之君提出憲法前文の平和的生存権に係る文言の趣旨に関する質問に対する答弁書」(内閣参質一八九第八〇号)において「御指摘の文言は、全世界の国民は基本的人権が維持され保障されるための条件である平和を享受する権利を有していることを述べたものと解している。」としている。他方、国際的には、一九四一年の大西洋憲章において、全ての人類が恐怖と欠乏から解放されてその生命を全うすることを保障するような平和の確立がうたわれ、国連総会の決議(一九七八年、一九八四年)においても平和的生存権への言及が見られる。このような前提の下、以下質問する。

一 平成二十七年一月九日の「参議院議員小西洋之君提出憲法の平和主義及び憲法前文の趣旨等に関する質問に対する答弁書」(内閣参質一八八第一六号)においては、憲法前文に規定する「恐怖と欠乏」の意味について、「戦争によってもたらされる様々な惨禍などのことをいう」としているが、「平和」と「恐怖と欠乏」との関係については、平和により「恐怖と欠乏から免れる」という面と「恐怖と欠乏から免れる」ことにより平和が達成されるという面の両面があるのではないか。そこで、本文言について、全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免かれる権利を有していることも含むという解釈でよいか、政府の見解を明らかにされたい。

二 二〇一五年八月十四日に発表された安倍内閣総理大臣の談話においても「我が国は、(中略)、世界の更なる繁栄を牽引してまいります。繁栄こそ、平和の礎です。暴力の温床ともなる貧困に立ち向かい、世界のあらゆる人々に、医療と教育、自立の機会を提供するため、一層、力を尽くしてまいります。」とあるが、この談話は憲法前文の精神に基づくものであるのか、政府の見解を明らかにされたい。

三 二〇一五年二月にこれまでのODA大綱を改定して定められた開発協力大綱においても「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する我が国は、コロンボ・プランに加盟した一九五四年以降一貫して、国際社会の平和と繁栄を希求し、政府開発援助(ODA)を中心とする開発協力を通じ、開発途上国の開発努力を後押しするとともに、地球規模課題の解決に取り組んできた。」とあるが、このような理念を日本政府が引き続き維持していくのか、明らかにされたい。

  右質問する。