質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第二九五号

政府提出の安全保障関連法案と日米安全保障条約の関係等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年九月十六日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   政府提出の安全保障関連法案と日米安全保障条約の関係等に関する質問主意書

 現在、参議院で審議中の政府提出の我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案(以下「安全保障関連法案」という。)と日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(以下「日米安全保障条約」という。)との関係等について以下のとおり質問する。

一 日米安全保障条約第五条には、米国の日本防衛義務が規定されている。他方、同条約第六条には「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」と、第五条の見返りとして、日本による接受国支援体制(ホスト・ネーション・サポート)が規定されている。
 こうした第五条と第六条の関係について、政府は「片務的」と見ているのか、それとも「双務的」と見ているのか、見解を明らかにされたい。

二 今回の安全保障関連法案において、集団的自衛権の行使事例とされる米艦防護は、日米安全保障条約第五条の米国による日本防衛義務を日本が一部手助けするものである。そうだとすれば、逆に日米安全保障条約第六条の日本によるホスト・ネーション・サポート、つまり、我が国の在日米軍の基地負担等を軽減させなければ、我が国が負担を増やすだけの一方的なものになるのではないかと考えるが、政府の見解如何。また、政府はこの視点に立って、米国政府と我が国の負担軽減を求める交渉を行った事実はあるのか、また今後行う予定があるのか明らかにされたい。

三 日米安全保障条約が「片務的」と言われる理由の一つに、米国に日本防衛義務があることに対して、日本は米国が攻撃を受けた時に助ける義務がないということがある。そこで、仮に米国の施政下(米国本土やハワイ、グアム等)に攻撃があった場合、日本が米国と共同して防衛するようになると、日本のホスト・ネーション・サポートは免除あるいは軽減されるのか。具体的に明らかにされたい。

四 日米がお互いの施政下を防衛するのではなく、今回の安全保障関連法案のように、米国が、米国の施政下以外で攻撃を受けた場合、日本が集団的自衛権を行使して米国を助けることは、日米安全保障条約の「片務性(仮にあるとすれば)」を解消することにつながるのか。つまり、米国が他国で行う戦争につきあうことが片務性の解消になるのか、政府の見解を明らかにされたい。

五 本年四月二十七日に改訂された「日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」の内容は、実質的に従来の日米安全保障条約の内容や運用を踏み越えるものであり、もし実現しようとするならば、同条約そのものを改定しなければならないと考えるが、政府の見解如何。仮に同条約の改定が必要でないと考えるのならば、その根拠、並びに同条約を改定する場合とはどのような場合か明確な基準を示されたい。

六 日本が容認しようとしている集団的自衛権の行使が限定的であるということについて、国際法上そのような概念がない中で、諸外国、特に米国政府及び米国民にどのようにして認識と理解を求めるつもりか、具体的に示されたい。

七 安倍総理は、安全保障関連法案により、「日米同盟が完全に機能」し、「抑止力はさらに高ま」ると答弁している(平成二十七年五月二十六日衆議院本会議)。現在の日米安全保障条約は、不完全にしか機能しておらず、抑止力も十分ではないという認識か。日米安全保障条約と、それによる抑止力に関する政府の認識を明らかにされたい。

  右質問する。