質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第二九四号

政府提出の安全保障関連法案と我が国の国際貢献の在り方等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年九月十六日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   政府提出の安全保障関連法案と我が国の国際貢献の在り方等に関する質問主意書

 政府提出の我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案(以下「安全保障関連法案」という。)と国際社会に対する我が国の貢献の在り方等に関し、以下質問する。

一 「現在の国際情勢と現場の状況を顧みない戦争法制を黙って見過ごすことができない」と立ち上げられたNGO有志のネットワーク「NGO非戦ネット」には、本年二月のODA大綱改定に携わった国際協力NGOセンター前理事長の大橋正明氏も呼びかけ人に名を連ねており、九月十日に発表された「安保法制に対する国際共同声明」には国内外の三百三十一団体が賛同し、安保法案に反対の声をあげている。
 「NGO非戦ネット」は、安全保障関連法案の成立により我が国が集団的自衛権を行使し、他国軍隊の後方支援を行えば、紛争に対して中立な「日本ブランド」は通用しなくなり、NGOの活動環境は著しく悪化し、NGO職員や現地の協力者が紛争当事者から攻撃されるリスク、テロの標的となるリスク等が上昇する。その結果、紛争に苦しむ人々への支援活動が従来どおり行えなくなれば死活問題であると訴えている。
 本年九月にはポスト二〇一五年の新たな国際開発目標が国連で合意される予定であるが、人道支援や開発協力を通じた我が国の非軍事の貢献に不可欠な担い手であるNGOの懸念を政府はどのように受け止めているのか。また、世界各地で国際協力に携わるNGOの意見を、実際にどれほど詳細に聴取したのか明らかにされたい。

二 本年二月に策定された開発協力大綱では、非軍事的協力による平和と繁栄への貢献を基本方針として定めている。我が国がODAを開始して以降六十年にわたって築き上げてきた我が国の平和ブランドは、この非軍事分野における地道な貢献に裏付けされているものである。
 一方、国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案は、武力の行使を行っている他国の軍隊に対して自衛隊が後方支援等を行うものであり、軍事的な支援を追求していると言える。また同法案では、他国の領域内における支援が想定されていることから、現地の住民から外国軍隊の行動として一体的に捉えられるなどの誤解を受け、我が国がこれまで培ってきた平和ブランドが大きく損なわれるおそれがある。これらを踏まえ、我が国としては軍事的支援ではなく、平和主義を徹底したODAや民間協力を通じた人間の安全保障の推進に努めるべきと考えるが、政府の認識を明らかにされたい。

三 開発協力大綱ではODAの軍事的用途及び国際紛争助長への使用の回避が述べられている一方、民生目的等の開発協力に軍が関係する場合は、実質的意義に着目し個別具体的に検討することが明記された。
 今般の我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案による国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(以下「PKO協力法」という。)改正では、従来の国際連合平和維持活動に加え、国連が統括しない国際連携平和安全活動が新たに設けられたほか、これらの活動の業務の種類として、安全確保業務や駆け付け警護、矯正行政事務及び立法・行政・司法に関する事務に関する助言・指導、国軍再建に対する支援が新たに追加された。
 これら改正後のPKO協力法に基づき行われる活動とODAとの連携は想定されるのか。想定されるのであれば、どのような形で連携は行われるのか、具体例を示されたい。また、その際、ODAが軍事転用されたり紛争を助長したりするおそれはないのか、これらを防止するための具体的方策も含めて明らかにされたい。

四 パレスチナのガザやヨルダン川西岸で外国人が誘拐された事件では、多くの場合に地元有力者の交渉で解決されている。これらの例に鑑みても、現地で活動するNGO関係者や本国の政府が、普段から現地住民との間でいかに関係を築いているか、軍事力に頼らず情報収集を重ね、交渉力を蓄えているかが重要であると考える。
 海外で邦人が殺害される事案が起こるたびに提言される情報収集能力の強化が不十分なまま、自衛隊の海外派遣をいたずらに先行させるよりも、現地に根付いて活動しているNGOを見習い、いまだ不十分とされる情報収集能力や分析能力を高め、安全を確保する能力や交渉力を高めるべきではないかと考えるが、我が国の情報収集能力及び情報分析能力に関する現状及びそれらを強化するための対応方針に関し政府の認識を示されたい。

  右質問する。