質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第二九三号

安全保障関連法案における集団的自衛権と集団安全保障の関係に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年九月十六日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   安全保障関連法案における集団的自衛権と集団安全保障の関係に関する質問主意書

 現在、参議院で審議中の政府提出の我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案(以下「安全保障関連法案」という。)における集団的自衛権と集団安全保障の関係について以下のとおり質問する。

一 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(以下「日米安全保障条約」という。)第五条前段は、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する」としている。これは、他国から日本に武力攻撃があった場合、米国は集団的自衛権を用いて日本を防護し、日本は個別的自衛権を用いて自らを守ることと理解している。
 同条後段は、「前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。」と規定している。
 これは、日米安全保障条約上は国連安全保障理事会による集団安全保障措置が執られた場合、それまでの措置は「終止しなければならない」、(shall be terminated)としており、集団安全保障措置が執られた「とき」(when)には、米国は集団的自衛権の行使を終止するものと読める。
 他方、岸田外務大臣は、本年八月二十七日の参議院外交防衛委員会で、国連憲章第五十一条について、「安全保障理事会が必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛権の行使の権利を害するものではないという規定になっています。これは国際法上も、これは重複する、重なる場合もあり得るというふうに理解されていると承知をしております。」と答弁している。
 この解釈は、日米安全保障条約の規定と矛盾するのではないか。政府の見解を示されたい。

二 岸田外務大臣は本年八月二十六日の参議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会で、我が国の武力の行使の根拠として、国際法上、個別的自衛権、集団的自衛権及び集団安全保障が存在する旨答弁している。

1 政府は、我が国が武力を行使する国際法上の根拠として、自衛権のほかに集団安全保障措置があることを認めるということか。
2 平成二十六年七月一日の閣議決定「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」において、「憲法上許容される上記の「武力の行使」は、国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある」と記載されているが、集団安全保障措置を国際法上の根拠とするならば、閣議決定を逸脱するのではないか。
3 安全保障関連法案に基づく存立危機事態の要件が満たされれば、国連安全保障理事会の決議に基づく集団安全保障措置としての武力行使に当初から参加できるということか。
4 行使が認められると政府が答弁している集団的自衛権と集団安全保障のそれぞれについて、武力攻撃を受けた国からの要請や同意や国連決議の要否を始めとした要件及び手続の違い、また、日本が採りうる手段に差異は生じるのかなど、両概念の相違について整理して示されたい。
5 集団的自衛権と集団安全保障の両概念について、双方の関係性を示されたい。とりわけ、双方の要件を満たす場合に、どちらの概念が優先されるかについて、政府の見解を示されたい。
6 集団的自衛権の行使として参加している活動が集団安全保障措置に切り替わる際には、国内的及び外交的に、どのような手続を必要とするのか、明らかにされたい。
7 我が国の武力の行使が集団安全保障措置を根拠に行われるとするならば、多国籍軍への「後方支援」にとどまらず、多国籍軍への「参加」が、法理上可能となるということか。

  右質問する。