質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第二五四号

教職員定数の充実の必要性に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年八月二十六日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   教職員定数の充実の必要性に関する質問主意書

 財務省は、二〇一五年五月十一日に財政制度等審議会(以下「財政審」という。)の財政制度分科会に提出した資料(以下「財務省提出資料」という。)の中で、教職員定数について、今後の少子化の見通しにより二〇二四年度までの九年間で、基礎定数三万七千七百人、加配定数四千二百十四人、合計四万一千九百十四人減らせるとの試算を示し、「教職員定数合理化計画」の策定を主張した。そして、財政審の六月一日の「財政健全化計画等に関する建議」にも、同様の内容が盛り込まれた。
 親の世代のライフスタイルや雇用形態の多様化により、非正規雇用の増加、貧富の差が拡大する中で、親の貧困が子に連鎖する深刻な現実があり、その深刻さは川崎市における中学一年生殺害事件等にも端的に表れているのではないか。また、地縁や血縁の希薄化そして核家族化などにより、昔と異なり夫婦あるいはひとり親のみによる子育てが主流となってきている。そのことにより、子育てに必要な手助けを気軽に得られないという現実もある。このような「負の連鎖」を食い止めるためにも、また、子どもたちの創造性を育み、心の問題をすくい上げるためにも、貧困対策のプラットフォームやセーフティネットとしての学校の機能に着目する必要がある。教職員を削減するのではなく、教職員のみならず、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等学校全体の人的体制の充実が急務であるとともに、能力のある有能な人材に集まってもらうためにも、待遇の改善も必要である。少子化のみを理由とした教職員定数の削減は望ましくないと考える。
 これらの認識を前提に、教職員定数の充実の必要性に関する政府の見解について、以下質問する。

一 教職員定数の充実の必要性については、六月二日に参議院文教科学委員会が、翌三日には衆議院文部科学委員会が、それぞれ全会一致で決議を行っている。決議が指摘している、「学校現場を取り巻く課題が複雑困難化し、教職員が多忙化しているなどの実態」、「いじめ対策や特別支援教育、貧困による教育格差の解消など、社会の変化によって、学校が対応しなければならない現代的な教育課題が増大している実態」について、政府の認識を明らかにされたい。
 また、教職員定数の計画的な改善、加配教職員配置のための定数の確保といった決議の要請について、政府の認識を明らかにされたい。

二 財務省提出資料によれば、担任外の教員数が多く、教員一人当たりの児童・生徒数で見れば決して国際基準を下回っていないとあるが、それは非正規教員の増加によるものであって、G5諸国と単純に比較することは適当ではないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

三 財務省提出資料において示された、「十分な財源が既に手当てされている」とする、更なる少人数学級の推進は必要ないともとれる見解は、子育てや教育の現場の実感からかけ離れている。文部科学省が六月五日に公表した、「財政制度等審議会の「財政健全化計画等に関する建議」に対する文部科学省としての考え方」においても、学習集団が小さいほど子どもたちの自己肯定感が高い傾向があるとしている。また、教員が児童生徒一人一人の個性・特性に応じたきめ細やかな指導・対応が可能になる等のデータもある。
 また、公立小学校一年生の学級編制の標準を四十人から三十五人に引き下げた、平成二十三年に成立した公立義務教育諸学校の学級編成及び教職員定数の標準に関する法律及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律附則第二項において、政府は、公立の義務教育諸学校の学級規模及び教職員の配置の適正化に関し、小学校二年生以上の学級編制の標準を順次改定すること等について検討を行い、その結果に基づいて法制上の措置その他の必要な措置を講ずるものとされている。
 この点について、政府において現在どのような検討が行われているのか、また、その結果に基づいて今後どのような措置を講ずる予定であるのか、明らかにされたい。

四 経済財政諮問会議や産業競争力会議といった、主として経済・財政について議論が行われる場で、近年、教育に関する議論が行われることが多い。しかし、例えば、五月二十六日の経済財政諮問会議に提出された資料「論点整理・文教・科学技術のポイント」を取りまとめたのは、経済界のメンバーや経済学者などであり、教育を専門とする関係者が入っていない。
 財政や経済の論理だけで教育が議論されてしまうことは問題であり、これらの会議で教育に関する議論を行うのであれば、教育の専門家を積極的に加えるべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。