質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第二〇七号

出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案及び同法の在留資格取消制度に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年七月十五日

神本 美恵子   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案及び同法の在留資格取消制度に関する質問主意書

 本年三月六日、政府は出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(以下「本法律案」という。)を提出した。本法律案では、出入国管理及び難民認定法(以下「現行法」という。)第二十二条の四第一項を改正し、在留資格取消制度の事由を追加するとしているが、既に現行法の下で実施されている在留資格取消制度の運用状況との関わりから、以下、質問する。

一 本法律案では、在留資格取消の対象について、所定の活動を継続して三か月以上行わないで在留している場合(現行法第二十二条の四第一項第六号)に加え、所定の活動を行わず、「他の活動を行い又は行おうとして在留している」場合も、在留資格取消事由とする(本法律案で追加される第二十二条の四第一項第五号)。現行法第二十二条の四第一項第六号に基づく在留資格取消処分は、二〇一二年に十六件、二〇一三年に五十八件、二〇一四年に六十四件となっているが、その在留資格別、国籍別、男女別の内訳を示されたい。また、どのようなケースを取消処分に相当すると判断したのか、在留資格別に例示されたい。
 同号が定めている「当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除く」という例外規定によって、同号による取消処分がなされなかった過去十年間の件数と、その在留資格別、国籍別、男女別の内訳を示されたい。また、どのようなケースを「正当な理由がある」と判断したのか、在留資格別に例示されたい。
 また、現行法第二十二条の四第二項には、「法務大臣は、前項の規定による在留資格の取消しをしようとするときは、その指定する入国審査官に、当該外国人の意見を聴取させなければならない」とあるが、二〇一二年から二〇一四年の間で、同項に基づいて意見聴取をした件数とその取消事由(同条第一項第一号から第十号)別の内訳及び同条第五項による取消件数とその取消事由(同条第一項第一号から第十号)別の内訳を示されたい。

二 現行法第二十二条の四第一項第七号では、在留資格取消事由として「日本人の配偶者等の在留資格(中略)をもつて在留する者又は永住者の配偶者等の在留資格(中略)をもつて在留する者が、その配偶者の身分を有する者としての活動を継続して六月以上行わないで在留していること」と定めている。しかし、その適用に対しては、現行法第二十二条の五で「前条第一項に規定する外国人について同項第七号に掲げる事実が判明したことにより在留資格の取消しをしようとする場合には、第二十条第二項の規定による在留資格の変更の申請又は第二十二条第一項の規定による永住許可の申請の機会を与えるよう配慮しなければならない」と明示し、また二〇〇九年の衆議院及び参議院の両法務委員会における附帯決議でも、「その弾力的な運用を行うとともに、配偶者からの暴力等により当該活動を行わないことに正当な理由がある場合には、在留資格の取消しの対象とならない旨の周知徹底を図ること」とされた。現行法第二十二条の四第一項第七号に基づく在留資格取消処分は、二〇一三年に十九件、二〇一四年に三十件となっているが、その在留期間別、国籍別、男女別の内訳と、そのうち婚姻中だが在留資格を取り消した件数を示されたい。また、どのようなケースを取消処分に相当すると判断したのか、国籍別に例示されたい。
 同号が定めている「当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除く」という例外規定によって、同号による取消処分がなされなかったここ三年間の件数と、その在留期間別、国籍別、男女別の内訳を示されたい。また、どのようなケースを「正当な理由がある」と判断したのか、国籍別に例示されたい。

三 人種差別撤廃委員会は二〇一四年八月、日本の第七-九回合同報告書に関する総括所見のパラグラフ十七において、現行法第二十二条の四第一項第七号について「これらの条項は、夫によるドメスティック・バイオレンスの被害者である外国人女性が、虐待的な関係性から逃れ、支援を求めることを妨げうる」と懸念し、「締約国は、日本人あるいは永住資格を有した日本人でない者と婚姻している外国人女性が離婚や絶縁と同時に国外追放されないように、また法律の適用は、事実上、女性たちを虐待的な関係性のなかにとり残さないように法律を見直すべきである」と勧告した。さらに同委員会は、この「勧告のフォローアップに関する情報を、本総括所見採択の一年以内に提供するよう」日本政府に求めている(同総括所見パラグラフ三十二)。政府は、同委員会の勧告を真摯に受け止めて回答しなければならないが、その検討状況、内容と送付時期を明らかにされたい。

  右質問する。