質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第二〇三号

昭和四十七年九月十四日の参議院決算委員会における吉國内閣法制局長官答弁に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年七月十三日

中西 健治   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   昭和四十七年九月十四日の参議院決算委員会における吉國内閣法制局長官答弁に関する再質問主意書

 政府は、平成二十七年六月九日の「新三要件の従前の憲法解釈との論理的整合性等について」において、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(平成二十六年七月一日閣議決定)で示された「武力の行使」の三要件(いわゆる新三要件)は、昭和四十七年十月十四日に参議院決算委員会へ政府が提出した「集団的自衛権と憲法との関係」で示された政府見解(以下「昭和四十七年の政府見解」という。)の基本的な論理を維持したものであると主張する。
 そして、昭和四十七年の政府見解が提出されるきっかけとなった昭和四十七年九月十四日の参議院決算委員会において、吉國一郎内閣法制局長官(当時)は「憲法の前文においてもそうでございますし、また、憲法の第十三条の規定を見ましても、日本国が、この国土が他国に侵略をせられまして国民が非常な苦しみにおちいるということを放置するというところまで憲法が命じておるものではない。第十二条からいたしましても、生命、自由及び幸福追求に関する国民の権利は立法、行政、司法その他の国政の上で最大の尊重を必要とすると書いてございますので、いよいよぎりぎりの最後のところでは、この国土がじゅうりんをせられて国民が苦しむ状態を容認するものではない。」との答弁を行っている(以下「吉國長官答弁」という。)。
 吉國長官答弁に関して、私が本年六月十八日に「昭和四十七年の政府見解における「自衛の措置」及び「外国の武力攻撃」に関する質問主意書」(第百八十九回国会質問第一七〇号)を提出したところ、本年六月二十六日の政府答弁書(内閣参質一八九第一七〇号)二についてで、「(吉國長官答弁における)「日本国が、この国土が他国に侵略をせられまして」及び「この国土がじゅうりんをせられて」という部分は、吉國一郎内閣法制局長官(当時)が、我が国に対する武力攻撃を念頭に置いて述べたものと認識している。」(以下「答弁②」という。)との答弁があった。
 これを踏まえて、私が本年六月二十九日に「昭和四十七年九月十四日の参議院決算委員会における吉國内閣法制局長官答弁に関する質問主意書」(第百八十九回国会質問第一八九号)を提出し、「答弁②で示された吉國内閣法制局長官の答弁に対する政府の認識(「我が国に対する武力攻撃を念頭に置いて述べたもの」)は、吉國長官答弁における憲法前文及び第十三条の条文解釈にまで及ぶか。仮に、及ばないというのであれば、答弁②で示された政府の認識と吉國長官答弁における条文解釈の関係をいかに理解すればよいのか、明らかにされたい。」(以下「本件質問」という。)と尋ねたところ、本年七月七日の政府答弁書(内閣参質第一八九第一八九号)二についてで、「お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、先の答弁書二についてでお答えしたとおり、御指摘の答弁の「日本国が、この国土が他国に侵略をせられまして」及び「この国土がじゅうりんをせられて」という部分は、吉國一郎内閣法制局長官(当時)が、我が国に対する武力攻撃を念頭に置いて述べたものと認識している。」(以下「本件答弁」という。)との答弁があった。
 しかし、本件答弁は、本件質問で尋ねた条文解釈について全く触れておらず、本件質問に対する答弁として十分ではないと考える。
 以下、再質問する。

一 吉國長官答弁は、「憲法の前文においてもそうでございますし、また、憲法の第十三条の規定を見ましても」及び「第十二条(第十三条のことと考えられる。)からいたしましても、生命、自由及び幸福追求に関する国民の権利は立法、行政、司法その他の国政の上で最大の尊重を必要とすると書いてございますので」とあるように、条文の規定を根拠に、「日本国が、この国土が他国に侵略をせられまして国民が非常な苦しみにおちいるということを放置するというところまで憲法が命じておるものではない。」及び「いよいよぎりぎりの最後のところでは、この国土がじゅうりんをせられて国民が苦しむ状態を容認するものではない。」という条文上明らかではない規範を導くものである。
 そのため、吉國長官答弁は、憲法前文及び第十三条の条文解釈を示したものと考えるが、政府の認識はいかがか。仮に、吉國長官答弁は条文解釈を示したものと認められないのであれば、吉國長官答弁は、いかなる要素が欠けるため条文解釈と認められないのか、明らかにされたい。

二 前記一において条文解釈を示したものと認める場合、政府は、吉國一郎内閣法制局長官(当時)が、吉國長官答弁において、我が国に対する武力攻撃を念頭に置いて、憲法前文及び第十三条の条文解釈を行ったと認識しているか。仮に、これと異なる認識である場合、政府は、答弁②で示された吉國一郎内閣法制局長官(当時)の認識と憲法前文及び第十三条の条文解釈の関係をいかに考えるか、明らかにされたい。

  右質問する。