質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第一九二号

昭和四十七年の政府見解の論理の解釈に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年七月六日

中西 健治   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   昭和四十七年の政府見解の論理の解釈に関する再質問主意書

 政府は、平成二十七年六月九日の「新三要件の従前の憲法解釈との論理的整合性等について」において、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(平成二十六年七月一日閣議決定。以下「本閣議決定」という。)で示された「武力の行使」の三要件(いわゆる新三要件)は、昭和四十七年十月十四日に参議院決算委員会へ政府が提出した「集団的自衛権と憲法との関係」で示された政府見解(以下「昭和四十七年の政府見解」という。)の基本的な論理を維持したものである、と主張する。
 政府が、「新三要件の従前の憲法解釈との論理的整合性等について」において引用する昭和四十七年の政府見解は、以下のとおりである。
①憲法は、第九条において、同条にいわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているが、前文において「全世界の国民が・・・・平和のうちに生存する権利を有する」ことを確認し、また、第一三条において「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、・・・・国政の上で、最大の尊重を必要とする」旨を定めていることからも、わが国がみずからの存立を全うし国民が平和のうちに生存することまでも放棄していないことは明らかであって、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない(以下「①の論理」という。)。
②しかしながら、だからといって、平和主義をその基本原則とする憲法が、右にいう自衛のための措置を無制限に認めているとは解されないのであって、それは、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るための止むを得ない措置としてはじめて容認されるものであるから、その措置は、右の事態を排除するためとられるべき必要最少限度の範囲にとどまるべきものである(以下「②の論理」という。)。
③そうだとすれば、わが憲法の下で、武力行使を行うことが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであって、したがって、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない(以下「③の論理」という。)。
 そして、政府は、②の論理について、②の論理の解釈そのものをしたことがない旨及び②の論理における「外国の武力攻撃」について、必ずしも我が国に対する直接の武力攻撃に限定されるものではない旨答弁している(いずれも平成二十七年六月十九日の衆議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会における横畠裕介内閣法制局長官答弁)。
 しかし、平成二十七年六月二十二日の衆議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会において、過去に内閣法制局長官を務めた宮崎礼壹参考人は、②の論理の解釈として、「外国の武力攻撃」は外国の我が国に対する武力攻撃に限定される旨の意見を陳述している。
 そこで、私は、本年六月二十五日に「昭和四十七年の政府見解の論理の解釈に関する質問主意書」(第百八十九回国会質問第一八六号)を提出し、「政府は、過去において、②の論理の解釈を行ったことはないか。」及び「政府は、過去において、②の論理における「外国の武力攻撃」を、我が国に対する武力攻撃に限定した答弁を行ったことはないか。」と尋ねたところ、本年七月三日の政府答弁書(内閣参質一八九第一八六号)において、「昭和四十七年の政府見解について、基本的な論理にまで遡って検討したのは本閣議決定に至る過程での検討が初めてである」として、過去に②の論理の解釈を行ったこと自体がない旨を答弁している(以下「本件答弁書答弁」という。)。
 しかし、昭和五十六年六月三日の衆議院法務委員会において、角田禮次郎内閣法制局長官(当時)は、「憲法九条の解釈として、自衛権というものは政府がたびたび申し上げているように持っているわけでございますけれども、その自衛権というものはあくまで必要最小限度と申しますか、わが国が外国からの武力攻撃によって国民の生命とか自由とかそういうものが危なくなった場合、そういう急迫不正の事態に対処してそういう国民の権利を守るための全くやむを得ない必要最小限度のものとしてしか認められていない、こういうのが私どもの解釈でございます。」と答弁している(以下「角田長官答弁」という。)。
 角田長官答弁は、憲法第九条の解釈に端を発していること、並びに、「外国からの武力攻撃によって国民の生命とか自由とかそういうものが危なくなった場合」、「急迫不正の事態に対処してそういう国民の権利を守るための全くやむを得ない」及び「必要最小限度のもの」という文言の共通性から、②の論理と軌を一にするものであり、「こういうのが私どもの解釈でございます。」という文言で締めていることから、②の論理の解釈を示したものと解される。
 加えて、角田長官答弁では、「自衛権というものはあくまで必要最小限度と申しますか、わが国が外国からの武力攻撃によって(以下略)」とあるため、他国に対する武力攻撃への対処は、必要最小限度を超えるものと考えていたことが窺える。すなわち、②の論理における「外国の武力攻撃」について、我が国に対する武力攻撃に限定する趣旨の答弁と解される。
 そのため、本件答弁書答弁と角田長官答弁には、昭和四十七年の政府見解の基本的論理に遡った検討の有無、②の論理の解釈の有無及び②の論理における「外国の武力攻撃」を我が国に対する武力攻撃に限定した答弁の有無という点について、認識の齟齬が認められる。
 以下、再質問する。

一 政府は、本閣議決定に至るまで、昭和四十七年の政府見解について基本的な論理にまで遡って検討した事実はないか。角田長官答弁との整合性に触れつつ、政府の見解を明らかにされたい。また、仮に、検討した事実があるのであれば、本件答弁書答弁を訂正されたい。

二 政府は、過去において、②の論理の解釈を行ったことはないか。角田長官答弁との整合性に触れつつ、政府の見解を明らかにされたい。

三 政府は、過去において、②の論理における「外国の武力攻撃」を、我が国に対する武力攻撃に限定した答弁を行ったことはないか。角田長官答弁との整合性に触れつつ、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。