質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第一八四号

戦争法案における集団的自衛権等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年六月二十五日

福島 みずほ   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   戦争法案における集団的自衛権等に関する質問主意書

一 「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」及び「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案」が成立した場合、以下の行為を行うことは合法か違法か。またその理由を示されたい。

① 邦人輸送中の米輸送艦の防護
② 武力攻撃を受けている米艦の防護
③ 強制的な停泊検査
④ 米国に向け我が国上空を横切る弾道ミサイルの迎撃
⑤ 弾道ミサイル発射警戒時の米艦の防護
⑥ 米本土が武力攻撃を受け、我が国近隣で作戦を行う際の米艦の防護
⑦ 国際的な機雷掃海活動への参加
⑧ 民間船舶の国際共同護衛

二 岸田外務大臣は二〇一五年六月十九日の衆議院平和安全特別委員会において「自国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある、こうした厳密な、限定された理由をもって国連の報告している事例は存在しないと認識をしています」と答弁している。過去の集団的自衛権行使事例において、存立危機事態下で行使に至った事例は存在しないという理解でよろしいか。

三 私が、二〇一四年四月十日に提出した「集団的自衛権並びにその行使に関する質問主意書(第百八十六回国会質問第六七号)」に対する答弁書(内閣参質一八六第六七号)六及び七についてで示された、これまでに国際連合安全保障理事会に報告された集団的自衛権行使の十四事例は、「新三要件」を満たしているか、否か。

四 安倍総理が二〇一五年六月十七日の党首討論において「一体化論については、これは国際法上の観点から議論していることではなくて、憲法との関係において概念を整理したものであります」、「憲法の言わば禁止する武力の行使に当たらないという言わば後方支援、一体化しない後方支援というものを憲法との関係の概念で申し上げているわけでありまして、国際法との関係ではないわけであります」と述べている。また、同じく安倍総理は昨年七月十四日の衆議院予算委員会において「国際的に一体化論をとっている国はない」と答弁している。
 ところで政府は、現に戦闘行為が行われている現場でなければ、そのすぐ隣で弾薬を提供したり、発進準備中の戦闘機に給油したりしても合憲である旨の考え方を示している。しかしこのような考え方は、「武力攻撃との一体化」を無理やり線引きするための概念に過ぎず、国際法上の概念でないことは政府も認めているところである。このように後方支援の範囲を拡大することは、国際法上ないし相手国にとっては武力行使そのものとなる可能性が高くなると思われるがいかがか。

五 横畠内閣法制局長官は二〇一五年六月十一日の参議院外交防衛委員会で「この昭和四十七年の政府見解で示された物の考え方、法理というものについて、その当時、明確に限定的な集団的自衛権という意識、考え方はなかったわけでございまして、そこまで意識して昭和四十七年の政府見解が作られたわけではないと思いますが、物の考え方、法理といたしまして、昨年七月以降明らかにしております新三要件で認められる限定的な集団的自衛権といいますのは、この昭和四十七年の政府見解で示された①、②の基本的な、考え方ですよ、法理に適合するその範囲内のものであるということをるる御説明させていただいているところでございます」、「新三要件の下、限定的な集団的自衛権の行使が認められるという、その限定的な集団的自衛権に限るという、そういう考え方そのものが昨年七月以降のものであるということを申し上げているとおりでございます。それ以前の集団的自衛権をめぐる議論は、先ほどのフルスペック、フルサイズ、国際法上認められる集団的自衛権一般の全体を指して議論しているということでございます」と答弁している。
 一九七二年当時に存在しなかった考え方が、なぜ二〇一四年七月の閣議決定で新たに出てくるのか。そもそも、全面的に違憲とされてきた集団的自衛権について、限定的な部分ならば合憲となると解釈するのは非論理的ではないか。

  右質問する。