質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第一七九号

国債の平均償還年限長期化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年六月二十三日

藤末 健三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   国債の平均償還年限長期化に関する質問主意書

 財務省は、平成二十七年一月十四日に公表した「平成二十七年度国債管理政策の概要」において、「借換リスクの抑制や中長期的な調達コストの低減等を図るため、市場関係者の声も踏まえ、カレンダーベース市中発行額について、超長期債の増額や中短期債の減額等により平均償還年限を長期化」するとの方針を示し、カレンダーベース市中発行額の平均償還年限は、平成二十五年度(実績)の七年十一か月から平成二十七年度(当初予算ベース)では九年〇か月となる見通しを明らかにしている。
 しかしながら、私は、政府が必要以上に日本のデフォルトリスクを重視し過ぎ、市場環境を無視した平均償還年限の長期化を進めているのではないかと考えている。アジア通貨危機を始め、アルゼンチン、ギリシャ、ロシア等の財政危機は、いずれも主として自国通貨建てではない債務を抱える国において、経済停滞による通貨安などが債務膨張を招いた状況となっているものである。近代においては、自国通貨建て債務を中心に保有する国が財政破綻したケースはない。
 以上の認識の下で、国債の平均償還年限長期化について、以下質問する。

一 財務省が「平成二十七年度国債管理政策の概要」において示した平均償還年限の長期化については、「借換リスクの抑制」や「中長期的な調達コストの低減」等を理由としている。

1 「借換リスクの抑制」や「中長期的な調達コストの低減」とは、具体的に何を指すのか示されたい。
2 今回の平均償還年限の長期化は、現状の低金利のうちにできるだけ長期の資金調達を行うことを意図しているものか。そうであるとすれば、仮に金利が上昇した場合は、機動的に償還年限を短期化していくことが可能と考えているのか。
3 今回の平均償還年限の長期化には、日本国債に対する格付を高く維持しようとする意図もあるのか。むしろ、自国通貨建て債務のみを保有する国と、そうでない国を同じ基準で評価しようとしている格付機関の方針こそを問題視すべきではないか。
4 平成二十六年十二月十九日に開催された財務省の「国の債務管理の在り方に関する懇談会」における資料「各国の平均償還年限推移(ストックベース)」によると、日本国債の平均償還年限は、アメリカ、ドイツ、フランスよりも高いものの、イギリスよりは低い。
 今回の平均償還年限の長期化は、このような状況を踏まえて更なる長期化の余地があると判断したものであるのか、その判断の根拠とともに示されたい。

二 財務省は「平成二十七年度国債管理政策の概要」において、「市場関係者の声も踏まえ」平均償還年限を長期化するとしている。

1 「市場関係者の声」の具体的内容を示されたい。
2 一般に、国債の金利は償還期間が長期になるほど高くなるのであるから、市場関係者の需要に応じた償還年限の国債を発行することで、利払費というコストを最小にできると考える。そこで、平均償還年限の長期化が市場関係者の需要に対応したものであるのか、具体的な需要の予測をもって詳細に示されたい。
3 平成二十六年十二月十九日に開催された財務省の「国の債務管理の在り方に関する懇談会」では、「生保の場合、ALMを推進している観点から、超長期債のニーズが高い。」との意見が出されている。
 ただ、生命保険会社は、低金利では十分な運用利回りの確保が困難であり、むしろ高金利で運用できる金融商品を望んでいるに過ぎないとも思われる。このような意見を基に、結果的に利払費の増加につながりかねない超長期債の増額を図ることは妥当ではないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

三 国債発行により調達した資金は、政府の歳出により企業や家計など民間の経済主体に流れることになるが、その決済は金融機関の預貯金で行われるのが一般的であるため、結果として金融機関において資金運用の一環として国債購入に使われることになる。
 一般的な金融機関では、短期の預貯金を多く受け入れ、長期の融資や国債等で運用することが多いため、金利上昇の局面では金利リスクを負うことになる。金融機関が預貯金の満期に見合った資金運用を行うには、短期債も含めた投資機会を確保すべきであると考えるが、平均償還年限の長期化は金融機関のリスク管理の観点からも見直すべきではないか。

四 財務省が公表している国債金利情報によると、無担保コールレート(オーバーナイト物)の金利が〇・一%前後である中で、年限一年から三年で〇からマイナス〇・〇〇五%前後、十年で〇・五%前後、二十年で一・三%前後で取引されており、年限が短期の国債ではマイナス金利になっている。
 これは、年限一年から五年の国債の流通量が少ないことにより異常な金利が付されているものと考えるが、こうした状況をどう受け止めているのか。

  右質問する。