質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第一七八号

徴兵制度を禁じた日本国憲法第十三条及び第十八条の解釈の変更に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年六月二十三日

藤末 健三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   徴兵制度を禁じた日本国憲法第十三条及び第十八条の解釈の変更に関する質問主意書

 昨年七月一日に、集団的自衛権の行使禁止に関する政府の憲法解釈が変更された。
 一方、徴兵制度については、憲法上、明文での禁止規定は存在しないものの、政府の憲法解釈では許容されないとしている。
 例えば、一九八〇年八月十五日の「衆議院議員稲葉誠一君提出徴兵制問題に関する質問に対する答弁書」(内閣衆質九二第四号。以下「一九八〇年答弁書」という。)において、「徴兵制度は、我が憲法の秩序の下では、社会の構成員が社会生活を営むについて、公共の福祉に照らし当然に負担すべきものとして社会的に認められるようなものでないのに、兵役といわれる役務の提供を義務として課されるという点にその本質があり、平時であると有事であるとを問わず、憲法第十三条、第十八条などの規定の趣旨からみて、許容されるものではないと考える」と政府はしている。
 また、安倍内閣においては、本年六月十七日に行われた党首討論において、民主党の岡田代表による問いに対し、安倍首相が、徴兵制度については「憲法が禁じるところの苦役に当たる、これはもう明快である」と答弁している。
 そこで、以下質問する。

一 政府の憲法解釈を変更することにより、徴兵制度を容認することは論理的に可能か。論理的に不可能であるならばその根拠は何か。

二 安倍内閣が集団的自衛権の行使について安全保障環境の変容を理由として禁止から容認へと転じたように、環境の変化を憲法解釈変更の理由とすることが可能であるならば、将来、社会情勢が変化し、徴兵制度について、一九八〇年答弁書において示されたような「公共の福祉に照らし当然に負担すべきものと社会的に認められるような」状況となった場合は、合憲となり得る可能性があるか。

三 徴兵制度を禁止する論拠には憲法第十三条及び第十八条に加えて、憲法第九条及び第二十二条も含まれると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。また、徴兵制度を導入するためにはこれらの条文も含めた憲法の改正が必要と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

四 政府が、一九八〇年答弁書の見解から立場を変更していないのであれば、有事であっても徴兵制度の導入は不可ということであり、たとえ「わが国の存立が脅かされ」る事態においても、憲法を改正しない限り徴兵制度は認められないという理解でよいか。

五 国民は「国防の義務」を有しているか。有しているとすれば、その具体的内容を明らかにされたい。また、憲法に国民の「国防の義務」が明記された場合は、徴兵制度は合憲となるのか。

  右質問する。