質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第一七一号

昭和四十七年の政府見解における「基本的論理」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年六月十八日

中西 健治   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   昭和四十七年の政府見解における「基本的論理」に関する質問主意書

 政府は、平成二十七年六月九日の「新三要件の従前の憲法解釈との論理的整合性等について」において、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(平成二十六年七月一日閣議決定)で示された「武力の行使」の三要件(いわゆる新三要件)は、昭和四十七年十月十四日に参議院決算委員会へ政府が提出した「集団的自衛権と憲法との関係」で示された政府見解(以下「昭和四十七年の政府見解」という。)の基本的な論理を維持したものである、と主張する。
 政府が、「新三要件の従前の憲法解釈との論理的整合性等について」において引用する昭和四十七年の政府見解は、以下のとおりである。
①憲法は、第九条において、同条にいわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているが、前文において「全世界の国民が・・・・平和のうちに生存する権利を有する」ことを確認し、また、第一三条において「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、・・・・国政の上で、最大の尊重を必要とする」旨を定めていることからも、わが国がみずからの存立を全うし国民が平和のうちに生存することまでも放棄していないことは明らかであって、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない(以下「①の論理」という。)。
②しかしながら、だからといって、平和主義をその基本原則とする憲法が、右にいう自衛のための措置を無制限に認めているとは解されないのであって、それは、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るための止むを得ない措置としてはじめて容認されるものであるから、その措置は、右の事態を排除するためとられるべき必要最少限度の範囲にとどまるべきものである(以下「②の論理」という。)。
③そうだとすれば、わが憲法の下で、武力行使を行うことが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであって、したがって、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない(以下「③の論理」という。)。
 そして、政府は、①から③の論理の関係について、「①と②の部分が基本的論理でありまして、それについて、③の部分が帰結ということで、結論ということにこの文章はなっております。」(平成二十七年六月十日の衆議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会における中谷元防衛大臣の答弁)と答弁している。
 さらに、政府は、基本的論理と結論を整理する根拠について、「③の部分の冒頭にありますとおり、「そうだとすれば、」ということで結論として述べているものでございます。」(平成二十七年六月五日の衆議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会における横畠裕介内閣法制局長官の答弁)として、「そうだとすれば」という接続詞に着目する旨の答弁を行っている。
 しかし、③の論理をつぶさに見ると、「わが憲法の下で武力行使を行うことが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られる」という命題から、「したがって」とつなげて、対偶の関係にある「他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されない」という命題を導くものである。そのため、③の論理における「したがって」という接続詞は、対偶を取る形で論理を展開する役割を果たすものであり、「したがって」より後の部分が結論であると考えられる。
 その結果、③の論理は、全体が一塊として結論を構成するものではなく、「したがって」より前の部分は①及び②の論理とともに基本的論理を構成する一方、「したがって」より後の部分が結論に相当するものと思われる。
 以下、質問する。

一 ③の論理における「したがって」という接続詞は、「わが憲法の下で武力行使を行うことが許されるのは、我が国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られる」という命題から、「他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されない」という命題へ論理を展開する流れを表すものと認めるか。仮に、認めないとした場合、「したがって」の前後にある命題の関係と、「したがって」という接続詞の意味(順接、逆接など)を明らかにされたい。

二 政府が昭和四十七年の政府見解として引用する①から③の論理のうち、結論に相当するものは、③の論理のなかの「したがって」より後の部分に限定されるのではないか。仮に、③の論理全体を一塊として結論と捉える場合、結論であるにもかかわらず、「したがって」の前後で論理を展開する矛盾が生じるのではないか。

三 政府が昭和四十七年の政府見解として引用する①から③の論理のうち、基本的論理に相当する部分は①及び②の論理に加えて、③の論理の「したがって」より前の部分も含まれるのではないか。仮に、③の論理の「したがって」より前の部分は基本的論理に含まれないと解するのであれば、当該部分を基本的論理から除く理由を明らかにされたい。

  右質問する。