質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第一二一号

福島第一原発の十一万倍ものトリチウムが六ヶ所再処理工場から海洋へ放出されたことに関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年四月二十八日

川田 龍平   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   福島第一原発の十一万倍ものトリチウムが六ヶ所再処理工場から海洋へ放出されたことに関する再質問主意書

 私が提出した「福島第一原発の十一万倍ものトリチウムが六ヶ所再処理工場から海洋へ放出されたことに関する質問主意書」(第百八十九回国会質問第五三号。以下「前回主意書」という。)に対する答弁書(内閣参質一八九第五三号。以下「答弁書」という。)は、放射性物質が環境基本法により規制されることになったにもかからず同法が全く尊重されず、旧態依然とした内容になっており、国民の信頼を裏切るものである。また、誤答や答弁漏れがあることから、再質問する。
 環境基本法、原子力規制委員会設置法の精神である「人と環境を守る」原点に立ち返り答弁願いたい。

一 答弁書一についてでは、「トリチウムの濃度は、(中略)これらの濃度を単純に比較することは適切ではないと考えている。」としているが、前回主意書の質問一におけるアクティブ試験の数字は日本原燃株式会社(以下「日本原燃」という。)のホームページに「最新月の再処理工場からの放出日等」として掲載された放出月日と排水量と各核種の放出量を基に調べたものである。また、地下水バイパスによる排水について、東京電力株式会社(以下「東電」という。)と福島県漁業協同組合連合会は二〇一四年三月に「海洋放出の運用目標値」を両者で合意したと聞いている。本目標値に定める濃度も、アクティブ試験の際の濃度も、同じ海洋放出濃度である。「単純に比較できない」とする国の解釈は納得できないため、この点につき再度政府の見解を明らかにされたい。

二 答弁書二についてでは、「一方、御指摘の「原発からの放射性物資の放出濃度に係る規制値」は、(中略)これらの濃度を単純に比較することは適切ではないと考えている。」としている。「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則の規定に基づく線量限度等を定める告示」においては、トリチウムの水中の濃度六万ベクレル毎リットルは「周辺監視区域外の水中の濃度限度」となっているが、原子力発電所(以下「原発」という。)からこれ以上の濃度の排水を放出しても構わないのか、政府の見解を明らかにされたい。また、「告示(放射線を放出する同位元素の数量等を定めるの件)」では「排液中又は排水中の濃度限度」としてトリチウムについて六万ベクレル毎リットルになっているが、両告示の違いを示されたい。

三 答弁書三から五まで及び七についてでは「国際放射線防護委員会の勧告を踏まえ、原子力発電施設及び再処理施設の周辺監視区域外における一般公衆の被ばく線量が年間一ミリシーベルト以下となるように放射能濃度等の限度を定めており、その上で、施設からの放出形態や核種の種類に応じた規制を行っている。」としている。

1 前回主意書の質問三の「「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則の規定に基づく線量限度等を定める告示」(中略)は環境や人々を守るための最低限の規制ではないか、政府の見解を示されたい。」に対する答弁がなかったので、この点について政府の見解を明らかにされたい。
2 施設周辺監視区域外における一般公衆の被ばく線量が年間一ミリシーベルト以下だから、沖合三キロメートル、水深四十四メートルからどんな高濃度の放射性物質を海洋に放出しても問題なしとするのでは、海洋汚染防止に関して全く考慮していないことになる。環境基本法、原子力規制委員会設置法の目的や理念に抵触すると考えられるが、前回主意書の質問四に対する答弁が漏れていたため、この点について政府の見解を明らかにされたい。
3 東電福島第一原発事故を経験し、放射性物質も環境基本法で規制することになった。しかし、同法第二章で規定する環境基本計画や環境基準は放射性物質についてはいまだに定められていない。これらはいつ策定されるのか、前回主意書の質問五で質した放射性物質の環境基準を定めることに関する政府の見解がなかったので、この点について政府の見解を明らかにされたい。
4 前回主意書の質問六に対する答弁がなかった。六ヶ所再処理工場に環境基本法第二十条(環境影響評価の推進)は適用されないのか、政府の見解を明らかにされたい。加えて、六ヶ所再処理工場の本格稼働について、パブリックコメントを行い国民の判断を仰ぐべきではないか、この点についても政府の見解を明らかにされたい。

四 六ヶ所再処理工場から海洋へのトリチウムの放出量(管理目標値)は年に一京八千兆(1.8×1016)ベクレルになっており、実際、アクティブ試験ではこれに合致する放出があった(二〇〇七年九月から十月)。
 この放出年管理目標値は北海道電力株式会社泊発電所三基のトリチウム海洋放出年管理基準の百五十倍に相当し、東電福島第一原発六基の同年管理基準の八百二十倍に相当する。このような大量の放射性物質を海洋へ放出することは環境基本法第五条(国際的協調による地球環境保全の積極的推進)に逆行する行為ではないか。加えて、太平洋に面する世界各国の了解を得なくてもよいのか。政府の見解を明らかにされたい。

五 六ヶ所再処理工場から海洋へ高濃度のトリチウムが放出されていたアクティブ試験最盛期(二〇〇六年度から二〇〇八年度)の公的機関による海洋モニタリングデータを精査した。この間、事業者の日本原燃と青森県が海洋放出口の直上、南北五キロメートルと二十キロメートル地点の海水を同時期に五十から六十回測定したところ、全ての試料についてトリチウムは不検出であった。一方、東北電力株式会社は放出口北二十五キロメートル地点の東北電力株式会社東通原子力発電所沖合海水から三回にわたりトリチウムを検出(検出限界二ベクレル毎リットル)しており、これは六ヶ所再処理工場が起源と日本原燃も認めている。また、六ヶ所村にある公益財団法人環境科学技術研究所でも放出口に近い尾駮港の海水から三十三回中六回トリチウムを検出(検出限界二ベクレル毎リットル)している。日本原燃の海水トリチウム濃度データ(検出限界二ベクレル毎リットル)は実態を反映しない信頼性に欠けるものと思われるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。