質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第一一二号

社会福祉法人における内部留保及び介護保険制度に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年四月十六日

櫻井 充   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   社会福祉法人における内部留保及び介護保険制度に関する再質問主意書

 先日提出した「社会福祉法人における内部留保及び介護保険制度に関する質問主意書」(第百八十九回国会質問第三〇号)に対する答弁書(内閣参質一八九第三〇号。以下「答弁書」という。)において、「「社会福祉法人の内部留保」については、一般的な意味での利益剰余金のことを指しており、過去の収支差の蓄積であるが、その定義については確立しているものではないため、お尋ねの「「社会福祉法人の内部留保」の定義」、「貸借対照表上のどの部分に当たるのか」、「設立年度による一施設当たりの内部留保額」の違い及び「社福における内部留保額について法人ごとの差異」についてお答えすることは困難である。」としていた。そこで以下質問する。

一 答弁書によると過去の収支差の蓄積の定義について大変曖昧であることが明示されていた。しかし、財政制度等審議会は平成二十六年五月に「財政健全化に向けた基本的考え方」において、「特別養護老人ホームの収支状況は他産業と比較しても極めて良好であり、巨額の内部留保の存在が指摘されている。なお、民間企業が経済の好循環に向けて近年にない賃上げを実現しつつある中、介護職員の処遇改善が求められているのであれば、まずは社会福祉法人等において内部留保を活用し、処遇改善を図っていく方策を講ずるべきである」と論じている。曖昧な定義の下での議論は現場の実状を反映できていないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。また、そのような曖昧な定義の下での議論に異論を挟まなかった審議会の委員は介護の現場をはっきりと理解していないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。理解しているというのであれば、何をもって理解していると考えるのか、その根拠を明らかにされたい。

二 財務省主計局は「今後は内部留保が蓄積しない水準まで介護報酬水準を適正化することが必要」としているが、内部留保の定義すら確立されていないことを政府が認めている以上、まずは内部留保の定義を確立し、各社会福祉法人や施設ごとの差異について調査すべきであり、内部留保はあるということを前提に介護報酬の引下げを行うのは適切ではないと考えるがいかがか。

三 今回の介護報酬改定において、介護職員の処遇改善に取り組むことができなかった場合は改定率がマイナス二・二七パーセント以上の引下げとなり、このことが各社会福祉法人の経営に甚大な影響を及ぼすことは明らかである。内部留保の社会福祉法人ごとの差異も分からず、どの程度の事業者が処遇改善に取り組むことができるのかも分からないにもかかわらず、内部留保はあるということを前提として、介護報酬全体をマイナス改定しても処遇改善ができるとする根拠を明らかにされたい。

四 そもそも財務省が指摘する内部留保が少ない社会福祉法人は賃上げを実行することは難しいと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。その上で、内部留保が少ない社会福祉法人はどのようにして賃上げを可能とすると想定しているのか明示されたい。

五 昨年度において、介護職員の処遇改善に取り組み、介護職員処遇改善加算金を受けることができた介護事業所は全事業者の何%か、若しくは何か所かを明らかにされたい。

六 介護関連施設の収入は介護報酬の額によって大きく左右される以上、介護施設で働く職員の賃金水準が労使交渉ではなく介護報酬によって決まっているのは明白である。その介護報酬を国が決めておきながら、賃金については各事業者に任せるとするのは責任転嫁であると考えるが、いかがか。

七 答弁書において「改定後においても全体としては事業者の安定的な経営に必要な収支差が残るように各サービスの報酬を設定する予定」としているが、「事業者の安定的な経営に必要な収支差」の定義と具体的な数値を示されたい。また、介護報酬全体が大きく引き下げられる中、そのようなことが可能であるとする根拠を明らかにされたい。

八 子どもを国公立大学又は私立大学に進学させる場合、家庭はいくら負担しなければならないのか平均的な金額をそれぞれ示されたい。その上で、現在の介護職員の一般的な給与水準で、子どもを大学に進学させることができるのか政府の見解を明らかにされたい。併せて、介護職員の未婚率、平均の子どもの人数及び子どもの大学進学率をそれぞれ明らかにされたい。さらに、各家庭の貯蓄額に差異があるのは当然であるが、現在の介護労働者の平均賃金で安心して子育てをできるのかどうか、政府の認識をその根拠も含めて明らかにされたい。

  右質問する。