質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第九七号

高速道路新設の理由に使われる「第三次救急医療機関」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年四月三日

山本 太郎   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   高速道路新設の理由に使われる「第三次救急医療機関」に関する質問主意書

 少子高齢化社会を迎え、財政制約はますます厳しくなる。国民共通のサイフである予算をどう使うかという優先順序を決定する際は、正確な情報を発信し、その情報を基に、国民と地域のニーズを適切に反映させて見極めることが大切である。
 二〇一四年四月、社会資本整備審議会道路分科会は「道路の老朽化対策の本格実施に関する提言」(以下「本件提言」という。)で、同審議会が二〇〇二年以降、「今後適切な投資を行い修繕を行わなければ、近い将来大きな負担が生じる」と警告してきたと述べ、改めて「最後の警告」として「今すぐ本格的なメンテナンスに舵を切れ」と思い切った表現で国土交通大臣に対し維持管理の重要性を訴えている。これは、警告から十年目の二〇一二年に山梨県大月市笹子町で起きた中日本高速道路株式会社の管理する中央自動車道の笹子トンネル天井板落下事故で九人の命が犠牲となったことが背景にある。
 本件提言は、二〇〇八年の時点で九百七十七あった通行止め・通行規制橋梁の数が、二〇一三年までに二千百四と倍増しているとし、こうした事実を知らない道路利用者が約九割いると記している。また「国民が道路施設の老朽化の状況等を知る機会は少なく、道路管理者による情報発信の努力が不十分」と断じている。
 「最後の警告」を真剣に受け止め、人命を守ることを優先し、少なくとも当分の間は新設を中止して、道路の老朽化対策に邁進するのかと思っていたところ、相変わらず、様々な理由付けにより、高速道路の新たな計画の進行を図っている。
 その一つは中部横断自動車道である。本件提言からわずか三か月後の二〇一四年七月二日に開催された社会資本整備審議会第十五回道路分科会で、国土交通省の国道・防災課長が資料「道路の老朽化対策の本格実施について」を説明した後に、道路局長が資料「新たな国土構造を支える道路交通のあり方について」で「拠点間の連携による救急医療体制の構築」を理由に中部横断自動車道の必要性について説明を行っている。
 そこで以下質問する。

一 二〇一四年七月二日開催の社会資本整備審議会第十五回道路分科会の資料「新たな国土構造を支える道路交通のあり方について」及び議事録によれば、道路局長は、長野県東部の佐久、上田地区では、圏域人口四十一万人に対し、重篤な疾患や多発外傷に対応できる第三次救急医療施設は、唯一、佐久市にある佐久総合病院しかなく、ここまで行かないとお産もできないことを中部横断自動車道等の道路ネットワークの必要性として挙げている。

1 厚生労働省は長野県東部地域の第三次救急医療施設を含めた病院不足に関し、地域住民のニーズを把握しているのか、明確にされたい。
2 厚生労働省は、地域住民がどのように病院不足を解消したいと考えているかについて当該自治体などが把握しているかどうか認識しているか。認識しているとすればどのような事実か明確にされたい。
3 国土交通省と厚生労働省又は国土交通大臣と厚生労働大臣との間で、長野県東部地域の第三次救急医療施設の不足問題の解消に向けて事実の照会、協議、相談等を行った事実はあるか。あるとすればそれらがいつどのような形で行われたのか明確にされたい。
4 少子高齢化となり、医療へのアクセスの確保はより喫緊の課題である。その課題を、医療機関の更なる設置によって実現するのか、高速道路新設によって実現するのかは、国民主権で決定されるべき事柄であるが、日本政府は今後、地域住民による合意形成をどのような参加制度により確保していくのか、方針を明確にされたい。

二 社会資本整備審議会道路分科会の関東地方小委員会でも、二〇一〇年十二月二日に開催された第一回会合で、国土交通省関東地方整備局の路政課長が「現在、このような病院に当該地域から行くには非常に搬送の時間を要している状況でございます。特に、南佐久地域は高齢化が進んでおりまして、心疾患による死亡者が全国平均の1・4倍というような状況になってございまして、非常に地域に不安が芽生えている状況ということでございます」と、中部横断自動車道の必要性を説明した。
 これに対し、委員からは、新たに病院を作るとの代替案の是非に関する質問や、「千葉県ではドクターヘリとか、福島のほうではドクターカーとかという仕組みがある」との代替案への言及があったほか、「医療機関へのアクセスが不足しているとおっしゃっているのは、地元の方々にちゃんと聞いて、こういうニーズが出てますか」との住民の意向を尋ねる質問がなされた。

1 路政課長は、代替案については「道路整備以外の代替案を排除するというのは、この計画段階評価の思想としては間違っていて、多分そういったものも比較をするべきだという発想なんだろうと思います」と回答したが、その後、なんらかの進展があったのであれば明らかにされたい。ないのであれば、不作為の理由を明らかにされたい。
2 住民の意向については「地域の方に聞いた意見というのは、市役所を通じて聞いているとかということですので、必ずしも正しくはないのかもわかりません」などと答えているが、その後、自治体がどのように住民の意向を吸い上げたかを調査したかどうか明らかにされたい。

三 現時点までに山梨県、長野県内で、通行止めや通行規制がある橋梁数と、それらを解消するために必要となる予算及び期間について、試算又は情報把握を行っているか明らかにされたい。行っている場合は、橋梁数、予算及び期間を明らかにし、その情報を、両県又は国が、住民に対してどのように提供してきたか明らかにされたい。

  右質問する。