質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第八九号

局地的な大雨及び集中豪雨による災害対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年三月三十一日

江口 克彦   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   局地的な大雨及び集中豪雨による災害対策に関する質問主意書

 近年、雨の降り方が変化したことにより、局地的な大雨や集中豪雨の発生回数が増加している。平成二十六年八月豪雨においては、広島市で発生した大規模な土砂崩れにより七十人以上の貴重な人命が失われるなど、全国各地で甚大な人的・物的被害が発生した。局地的な大雨や集中豪雨による災害の発生は今後も懸念されるところであるが、このような悼ましい災害の発生を未然に防ぎ、国民の生命・財産を守るためにも早急な対策が求められる。そこで、局地的な大雨及び集中豪雨による災害対策に関して、以下質問する。

一 近年、短時間のうちに記録的な降雨量をもたらす大雨が全国各地で観測されている。
 例えば、平成二十五年台風第二十六号においては、東京都大島町で二十四時間雨量八百二十四ミリという記録的な大雨が観測され、土砂災害が発生し、四十人近くの方々が犠牲になった。平成二十六年八月豪雨においても、広島市では、わずか三時間近くの集中豪雨による土砂災害で七十人以上が犠牲となった。気象庁は、このような大雨が発生する事態について、どのように現状を把握し、その原因を分析しているのか明らかにされたい。

二 災害による被害を最小限のものとするためには、事前の備えが必要である。局地的な大雨や集中豪雨の場合は、いつ、どこで、どの程度の雨が見込まれるかについて、できるだけ正確な予報が重要であると考える。
 気象庁は、平成二十六年八月七日より高解像度降水ナウキャストの運用を開始しているが、平成二十六年八月に発生した広島市の集中豪雨は予測できなかったとする報道もある。
 そこで、政府として、局地的な大雨や集中豪雨を予報するに当たって、どのような観測体制を整備し、どの程度の精度まで予報ができるようになっているのか、明らかにされたい。
 また、今後、予測精度を向上させるために、何に重点を置いて取り組んでいくつもりか、政府の見解を示されたい。

三 局地的な大雨や集中豪雨、台風などによる災害に対応するためには、大雨に関する事前の情報を正確に把握し、住民に伝達し、避難してもらうことが重要である。避難勧告、避難指示等は市町村長の判断に任されているが、広島市では避難勧告を発するに当たって五項目もの判断基準を有していたことが、平成二十六年八月豪雨による土砂災害が発生した際に判断が遅れた一因と指摘する報道もある。
 政府は、「土砂災害など重大な自然災害に対する主な被害防止対策」(平成二十六年九月五日平成二十六年(二〇一四年)八月豪雨非常災害対策本部決定)を公表しており、その中で、「深夜を含めた災害リスク情報の的確な提供」として、同年四月に内閣府が改定・公表した「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)の周知徹底と確認を行うとしている。今後は、市町村長がためらわず判断できるよう、避難勧告等の判断基準の簡素化について、国から市町村へ要請するべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
 また、土砂災害警戒情報など、災害に直結するような防災情報を市町村に積極的に提供すべきと考えるが、現在どのような体制で情報提供を行い、今後、どのように発展させるべきと考えているのか、政府の見解を明らかにされたい。

四 「避難勧告」、「避難指示」については、似たような用語であり、一見すると、どちらが切迫した事態を表しているのか国民が理解しにくい。例えば、「ガイドライン」においては、避難勧告の一段前の措置として「避難準備情報」の発令があるが、高齢者、障害者、乳幼児、その他災害時に特に配慮を要する者については、「立ち退き避難する」とあり、避難勧告と同じ意味合いを持っている。
 そこで、避難準備情報、避難勧告及び避難指示の用語に関して、国民が災害の切迫性の度合いを正しく理解し、避難に役立てているかについて把握するために調査を実施したことはあるか。調査を実施したことがあれば、その結果を示されたい。また、調査が行われていないのであれば、調査の必要性について政府の見解を明らかにされたい。

五 安倍総理は、夜間の避難勧告を住民に確実に知らせるため、緊急速報メールの整備を促進する考えを示したと報道されていたが、災害時における情報伝達については、住民に避難場所や災害関連情報が正しく伝わり、実際に避難行動につなげることが何よりも重要であると考える。
 そこで、こうした災害時の避難行動に重要な情報の伝達方法について、避難準備情報、避難勧告及び避難指示を災害の切迫性の度合いを段階的に、より的確に伝わる用語に見直していくことも含め、情報の受け手である国民の意見を十分に反映しつつ、国と地方公共団体が連携し、周知を徹底していくべきではないかと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

六 道路の冠水や家屋の床上・床下浸水、土砂崩れ等の局地的な大雨や集中豪雨によって被害が発生しやすい場所の特定を行い、それぞれの箇所に応じた防災対策を行うことは重要である。
 しかし、広島市における土砂災害では、被災箇所において、土砂災害警戒区域等の指定や砂防ダムの整備が進んでいなかったとされている。
 政府は、事前防災・減災の観点から国土強靱化を推進していくとしていることから、災害から国民を守るためにこれまで以上に十分な予算措置が必要になると考えるが、土砂災害対策に関係する予算補助などは社会資本整備総合交付金等により一括交付されるため、その内訳が不明確となっている。土砂災害対策や気象観測網の整備などの局地的な大雨や集中豪雨に係る防災関係予算について、現在の予算規模に対する認識と今後の方針について示されたい。

  右質問する。