質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第三三号

シリア渡航を表明する邦人に対する旅券返納命令に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年二月十八日

中西 健治   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   シリア渡航を表明する邦人に対する旅券返納命令に関する質問主意書

 本年二月七日、外務大臣は、旅券法第十九条第一項第四号の規定に基づき、シリアへの渡航を計画する邦人(五十代男性)に対し旅券の返納を命じ(以下「本件旅券返納命令」という。)、同人の旅券を受領した。
 しかし、同人は報道目的での渡航を計画していたため、本件旅券返納命令は、海外渡航の自由に対する制約のみならず、報道の自由及び取材の自由に対する制約としての側面も認められる。
 海外渡航の自由、報道の自由及び取材の自由は、いずれも憲法上保障されると解される権利である。とりわけ、報道の自由及び取材の自由は、国民の知る権利に奉仕し、民主主義の根幹をなす権利であるため、その制約に当たっては極めて慎重な判断が求められる。
 そこで、以下質問する。

一 外務大臣は、本件旅券返納命令を発出するに当たり、いかなる事情から「旅券の名義人の生命、身体又は財産の保護のために渡航を中止させる必要があると認められる場合」(旅券法第十九条第一項第四号)及び「旅券を返納させる必要があると認めるとき」(同法同条第一項柱書)に当たると判断したのか。本件旅券返納命令に至る判断過程及び考慮要素を明らかにされたい。

二 本件旅券返納命令における返納の期限は、何月何日何時何分と定められたのか。また、右返納期限を定めたのは何月何日何時何分か、日時を示されたい。

三 外務大臣は、旅券法第十九条第一項第四号に基づき旅券の返納を命ずるに当たり、行政手続法第三章に定める意見陳述のために、聴聞(行政手続法第十三条第一項第一号)又は弁明の機会の付与(同条第一項第二号)のいずれの手続を執るべきか、政府の見解を明らかにされたい。

四 本件旅券返納命令において、前記三における聴聞又は弁明の機会の付与はなされたか。仮に、前記三に定める手続がなされなかった場合、その理由を示されたい。

五 いかなる事情があれば、報道の自由又は取材の自由を制約しても「旅券を返納させる必要があると認めるとき」(旅券法第十九条第一項柱書)に当たるのか。海外渡航の自由の制約との違いに配慮しつつ、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。