質問主意書

第188回国会(特別会)

答弁書


答弁書第一六号

内閣参質一八八第一六号
  平成二十七年一月九日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員小西洋之君提出憲法の平和主義及び憲法前文の趣旨等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小西洋之君提出憲法の平和主義及び憲法前文の趣旨等に関する質問に対する答弁書

一について

 憲法の基本原則の一つである平和主義については、憲法前文第一段における「日本国民は、・・・政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」の部分並びに憲法前文第二段における「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」及び「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」の部分がその立場に立つことを宣明したものであり、憲法第九条がその理念を具体化した規定であると解している。

二について

 お尋ねの憲法前文の箇所のうち、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、」の趣旨は、戦争の主体が国家である、戦争を起こすことの決定は国政の運用に当たる国家機関によってなされるということに着目し、かつて体験したような戦争の惨禍が起こることがないようにするという日本国民の固い決意を表明したところにあると考えられ、これは憲法の基本原則の一つである平和主義を強調したものであり、また、「ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」の趣旨は、過去の戦争が国家機関の手によって行われ、その惨禍を日本国民が等しく受けたということに着目し、国民主権を確立することにより、過去のそのような例が起こることがないようにするという固い決意を表明したものであると解している。

三から五までについて

 お尋ねの憲法前文第二段の趣旨は、我が国が平和主義及び国際協調主義の立場に立つことを宣明したものと解している。また、憲法前文第二段第一文に規定する「人間相互の関係を支配する崇高な理想」とは、友愛、信頼、協調というような、民主的社会の存立のために欠くことのできない、人間と人間との関係を規律する最高の道徳律をいい、同文に規定する「深く自覚する」とは、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚した結果、自ら進んで決意したことを示したものであり、憲法前文第二段第三文に規定する「恐怖と欠乏」とは、「平和のうちに生存する権利」の言わば対極にある戦争によってもたらされる様々な惨禍などのことをいうものと解している。

六について

 お尋ねの「かかる原理」とは、「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。」という部分を受けており、「この憲法は、かかる原理に基くものである。」と規定することにより、日本国憲法が、国民主権の原理や間接民主制を採用していることを明らかにしていると解している。
 また、御指摘の「憲法解釈の変更を行ったところの新しい憲法規範」の意味するところが必ずしも明らかでなく、お尋ねの「「一切の憲法」には政府が憲法解釈の変更を行ったところの新しい憲法規範も含まれると解してよいか」についてお答えすることは困難である。
 さらに、お尋ねの「「排除する」との文言の法的効果」については、法規範としては、一般的に言えば、憲法の個々の条文が重要な意味を持つものであり、他方、憲法前文は、それぞれの条文を解釈する場合の解釈上の指針としての意味を持つものと解している。

七について

 お尋ねの憲法前文第三段の趣旨は、我が国が国家の独善主義を排除し、国際協調主義の立場に立つことを宣明したものと解している。

八について

 お尋ねの憲法前文第四段の趣旨は、憲法前文全体でうたわれている理想と目的を達成することを誓うものであると解している。