質問主意書

第188回国会(特別会)

質問主意書


質問第一〇号

アベノミクスの失政と中小企業の信用保証に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年十二月二十四日

川田 龍平   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   アベノミクスの失政と中小企業の信用保証に関する質問主意書

 アベノミクスによる経済効果は中小企業には及んでおらず、消費税増税、円安などによって、むしろ中小企業の経営はますます厳しくなってきている。
 先の政府答弁書(内閣参質一八七第九九号)でも、平成二十五年三月末で中小企業金融円滑化法が失効したため、金融庁の指導にもかかわらず、平成二十五年度は岩手、宮城、秋田、山形、福島、栃木、三重、富山各県において、金融機関が信用保証協会(以下「保証協会」という。)に代位弁済請求するケースが増加したとされている。また、代位弁済した保証協会から強引な取立てをされているとの苦情が寄せられている。同様のケースが平成二十六年度にはもっと増えると予想している。
 そこで、以下質問する。

一 保証協会が代位弁済した後、債務者に求償する場合のマニュアルやガイドライン、指針といったものを金融庁で作成すべきではないか。

二 中小企業庁が平成十八年度以降、保証協会に対して経営者本人以外の第三者を保証人として求めること(以下「第三者連帯保証」という。)を禁止した理由を示されたい。

三 罪刑法定主義により、犯罪については遡及して処罰することは許されないが、民事的な処理については許される。現に、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第七十五条は、預金保険機構が買い取った不良債権について、時効を二年間停止させることとし、時効を実質二年延長している。これらの例も踏まえ、平成十八年度以前の第三者連帯保証に対しても何らかの規制をするべきではないか。

四 前記三に関連して、第三者連帯保証人の所有する自宅や給与を差し押さえることも規制されるべきではないか。

五 平成十八年度に第三者連帯保証を禁止した一方で、第三者の物上保証を禁止しなかったのは、連帯保証は、連帯保証人が無限責任を負うのに対して、物上保証は、物上保証人が有限責任を負うとの理由であると思料するが、その理解でよいか。

六 実際に第三者の物上保証で一番多く担保が設定されるのは物上保証人の自宅ではないか。そうであれば、物上保証でも物上保証人が生活を破綻させられるという点では同じと考える。第三者の物上保証についても、第三者の生活の拠点となるべき自宅等の資産については除外するべきだと考えるが、いかがか。

七 一例として、息子の会社のために、二十年前に、親が自宅に根抵当権を設定し、その枠がまだ残っていたところに、最近になって息子の会社が同じ銀行から保証協会の信用保証が付いた無担保融資を受け、その返済ができなくなって、保証協会が銀行に代位弁済した際、保証協会が銀行から根抵当権の一部の譲渡を受け、無担保融資を担保融資に切りかえ、保証協会は、銀行から譲り受けた根抵当権に基づいて親の自宅を競売にかけたケースを承知している。親は、当該無担保融資について、全く知らされていないし、また、保証協会が銀行から根抵当権の一部の譲渡を受けることを全く了解していなかった。この例のように、保証協会が、第三者の生活を破壊し、生存権を奪うまで物上保証を拡大し、第三者が実際に住んでいる家を競売にかけるというのは、行き過ぎではないか。このようなことが起こらぬよう、対策を講ずべきことも含め、政府の見解を明らかにされたい。

八 前記七に関し、他にも保証協会が十年以上前の第三者の物上保証について、競売申立てをしているケースを承知している。物上保証が長期的に継続するというのは、昨今の変化の激しい経済情勢においては問題があり、政府は何らかの対策を講じるべきではないか、政府の見解を明らかにされたい。

九 身元保証の期間を三年としているのは、それ以上長期になると、被保証人の生活や心情に変化が生じ、そのような状況の変化まで保証するというのは身元保証人の負担が大きくなるからとの趣旨ではないか。

十 前記九に関して、金融機関に対する物上保証も、物上保証人が主契約者のために私財を失う可能性がある過重な負担を引き受けるという点で、身元保証と共通している。保証時から何年も経過し、債務者企業の経営状態や経済事情は変化しているのに、いつまでも保証を継続させるのは、身元保証人が期限の規制により保護されているのに比して、物上保証人にとって酷であり、均衡を欠くのではないか。

十一 海外主要国において、身元保証と物上保証についての規制の均衡はどのようになっているか。政府の把握しているところを明らかにされたい。

  右質問する。