質問主意書

第187回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第七五号

内閣参質一八七第七五号
  平成二十六年十一月二十一日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員山本太郎君提出原子力発電所の「事故の真実」と「負の遺産」等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山本太郎君提出原子力発電所の「事故の真実」と「負の遺産」等に関する質問に対する答弁書

一の1の①及び③について

 お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが、東京電力株式会社福島第一原子力発電所(以下「福島第一原子力発電所」という。)第一号機、第三号機及び第四号機の原子炉建屋が爆発した時点での放射性物質の総量及び放出量については、燃料集合体の種類等により、燃料集合体ごとに大きく異なるものとなることから、これを推計し、お示しすることは困難である。

一の1の②について

 東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会が平成二十四年七月二十三日に取りまとめた最終報告書によれば、「一号機R/B内に不燃限界濃度を超える水素が蓄積され、金属摩擦や電気設備・機器に接続された電気ケーブルからの漏電又はその他の要因によって着火し、R/B内で爆発が生じたものと考えられる。(中略)二号機R/B内に蓄積する水素の量が抑制され、水素爆発が発生しなかった可能性が高い。(中略)三号機R/B爆発の原因は、主として、三号機R/B内で化学反応によって生じた可燃性ガスによるものと考えられ、かかる可燃性ガスとしては、一号機と同様に、水素以外には考え難い。(中略)四号機R/B爆発の原因となった水素は、三号機の炉心損傷が進行してジルコニウム・水反応により発生したものが、SGTS配管を通じて四号機R/Bへ流れ込んだ可能性が高い。」とされている。

一の1の④について

 お尋ねの「各号機内の核物質の状態及び放射線量の状態」の意味するところが必ずしも明らかでないため、お答えすることは困難である。

一の1の⑤について

 お尋ねの「各号機から、環境に放射性物質が全く放出されなくなる」の意味するところが必ずしも明らかでないため、お答えすることは困難である。

一の2の①について

 お尋ねの「環境に放出された汚染水」の意味するところが必ずしも明らかでないため、お答えすることは困難であるが、建屋等から海洋に流出又は放出した放射性物質によって汚染された水の量については、現時点で把握している限りにおいて、約一万千立方メートルと推定されている。

一の2の②について

 政府は、福島第一原子力発電所の事故後、公共用水域及び地下水において、水質における放射性物質のモニタリングを実施し、その結果を公表してきている。
 その結果によれば、河川水については、セシウム一三四は、福島県では平成二十三年九月二十六日に測定された一リットル当たり九ベクレルという値が最大値であり、茨城県、埼玉県、千葉県及び東京都では不検出となっている。セシウム一三七は、福島県では平成二十三年九月二十六日に測定された一リットル当たり十一ベクレル、千葉県では平成二十四年八月六日に測定された一リットル当たり一・三ベクレルが最大値であり、茨城県、埼玉県及び東京都では不検出となっている。
 地下水については、セシウム一三四は、福島県では平成二十三年十一月七日に測定された一リットル当たり一ベクレルという値が最大値であり、茨城県及び千葉県では不検出となっている。セシウム一三七は、福島県では平成二十三年七月一日に測定された一キログラム当たり一・一ベクレルという値が最大値であり、茨城県及び千葉県では不検出となっている。
 ただし、本モニタリングは公共用水域については神奈川県では実施しておらず、また、地下水については、埼玉県、東京都及び神奈川県において実施していない。
 なお、避難指示解除準備区域を対象とした放射線モニタリングアクションプランに基づき実施された井戸水の測定結果によれば、福島県では、土状の異物が混入していた検体について、セシウム一三四及びセシウム一三七については、平成二十四年六月二十九日に測定された一リットル当たり三十二・五ベクレル及び五十五・五ベクレルが最大値であった。

一の3について

 平成三十二年のオリンピック・パラリンピック競技大会を開催することについて、主催者である国際オリンピック委員会と契約を締結しているのは、東京都及び公益財団法人日本オリンピック委員会であり、政府として大会開催の辞退を判断する立場にないため、お答えすることは困難である。

二について

 お尋ねの「電力の供給不足が原因で発生した停電」の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成二十五年九月十五日に関西電力株式会社大飯発電所(以下「大飯発電所」という。)第四号機が稼働を停止して以降、一般電気事業者の供給区域全てに影響を及ぼすような電力供給不足による停電については、一般電気事業者から、実績はないと聞いている。

三について

 政府としては、福島第一原子力発電所の事故後の平成二十三年に、コスト等検証委員会(以下「委員会」という。)において、各電源の発電コストについて試算を行い、原子力発電の発電コストについては、キロワットアワー当たり八・九円以上と算出している。
 他の電源の発電コストについては、主な電源として、石炭火力はキロワットアワー当たり九・五円、LNG火力はキロワットアワー当たり十・七円、石油火力はキロワットアワー当たり二十二・一円、一般水力はキロワットアワー当たり十・六円、風力(陸上)はキロワットアワー当たり九・九円から十七・三円まで、太陽光発電(メガソーラー)はキロワットアワー当たり三十・一円から四十五・八円までと算出している。
 また、お尋ねの「日・米・独三ヶ国の電源別発電コスト」については、各国のエネルギーを巡る状況が異なることから、各国の発電コストと日本における発電コストを単純に比較することは適切ではないが、委員会報告書において、委員会における発電コスト算出の前提とは必ずしも一致しないものの、経済協力開発機構及び国際エネルギー機関による試算を利用し、比較した結果を示すと次のとおりである。
 原子力
  日本 キロワットアワー当たり四・三円
  米国 キロワットアワー当たり四・二円
  ドイツ キロワットアワー当たり四・三円
 石炭火力
  日本 キロワットアワー当たり七・六円
  米国 キロワットアワー当たり六・二円
  ドイツ キロワットアワー当たり六・〇円
 LNG火力
  日本 キロワットアワー当たり九・〇円
  米国 キロワットアワー当たり六・六円
  ドイツ キロワットアワー当たり七・三円
 なお、「①使用済み核燃料の処理費用、②廃炉費用、③環境汚染の原状回復費用、④苛酷事故における一件百兆円規模の経済的損失、⑤原発周辺住民に与える物質的精神的負担等」の意味するところが必ずしも明らかではないため、「原子力発電に伴って発生する前記①ないし⑤の各コストを一キロワット毎時当たり、各何円と試算しているのか」を明らかにすることは困難であるが、委員会の試算においては、再処理費用を含む核燃料サイクル費用についてはキロワットアワー当たり一・四円、廃炉処理費用を含む資本費についてはキロワットアワー当たり二・五円と算出している。

四の1について

 平成二十三年三月に発生した福島第一原子力発電所の事故により放出された放射性物質の陸側及び海側に降下した放射性物質の総量の比率の試算については行っていない。なお、同事故により原子炉から大気中へ放出された放射性物質については、その全てを正確に把握することが困難であるため、原子炉の状態等の解析結果から代表的な三十一核種の放出量等を推定し、その結果を「原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書―東京電力福島原子力発電所の事故について―」(平成二十三年六月原子力災害対策本部決定)において記載したところである。

四の2について

 お尋ねについては、放射性物質の放出による影響が、放射性物質の放出形態によって大きく異なることから、お答えすることは困難である。

四の3について

 政府としては、九州電力株式会社川内原子力発電所(以下「川内原子力発電所」という。)第一号機及び第二号機から全ての又は九割の放射性物質が陸側に放出されたという仮定の下での試算は行っていない。

五の1について

 我が国の原子力施設に存在する原子力発電所で発生した使用済燃料の集合体の体数については、平成二十六年八月三十一日時点において、北海道電力株式会社泊発電所においては九百八十一体、東北電力株式会社東通原子力発電所においては六百体、東北電力株式会社女川原子力発電所においては二千四百二十二体、福島第一原子力発電所においては一万千九百九体、東京電力株式会社福島第二原子力発電所においては六千四百七十六体、東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所においては一万三千七百三十四体、中部電力株式会社浜岡原子力発電所においては六千五百七体、北陸電力株式会社志賀原子力発電所においては九百六十体、関西電力株式会社美浜発電所においては九百四十三体、大飯発電所においては三千百十八体、関西電力株式会社高浜発電所においては二千五百五十一体、中国電力株式会社島根原子力発電所においては三千二百三十八体、四国電力株式会社伊方発電所においては千四百二十二体、九州電力株式会社玄海原子力発電所においては千九百六十八体、川内原子力発電所においては千九百四十六体、日本原子力発電株式会社東海第二発電所においては二千百六十五体、日本原子力発電株式会社敦賀発電所においては千五百四十二体、日本原燃株式会社再処理事業所においては一万二千二十二体、日本核燃料開発株式会社においては九体、ニュークリア・デベロップメント株式会社においては三体である。
 また、お尋ねの「人や生物に対して無害なものにするにはおよそ何年の歳月及び処理費を要するのか」については、具体的に意味するところが必ずしも明らかでなく、一概にお答えすることは困難である。
 なお、使用済燃料については、再処理に伴い使用済燃料から核燃料物質その他の有用物質を分離した後に残存する物を固型化した物(以下「ガラス固化体」という。)にして、地下三百メートル以上の深さの地層において、人間の生活環境から隔離して安全に最終処分することとしているが、処分の完了までに要する期間は未定である。また、この処分に要する費用については、平成二十五年度末の時点において、ガラス固化体四万本を最終処分する場合に約二・八兆円を要すると見積もっている。

五の2について

 お尋ねの「福島第一原発を人や生物に対し無害な状態」については、具体的に意味するところが必ずしも明らかでなく、一概にお答えすることは困難である。
 なお、政府としては、福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策のための予算として、東日本大震災発生後からこれまで約千六百六十一億円を、東京電力株式会社としては、平成二十五年度末時点で合理的な見積りが可能な金額として約九千七百十二億円を計上している。
 また、「東京電力(株)福島第一原子力発電所一~四号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」(平成二十五年六月二十七日原子力災害対策本部東京電力福島第一原子力発電所廃炉対策推進会議決定)においては、平成二十三年十二月から、三十年から四十年後までに廃止措置を終了させることを目標としている。

五の3について

 御指摘の「福島第一原発の事故発生から三十年後の二〇四一年三月の時点における日本の人口、日本人の健康状態、日本国の経済状態等」に対する福島第一原子力発電所の事故による影響についての予測は行っていない。

五の4について

 お尋ねの「人や生物に無害な状態にするには、最悪の場合およそ何年の歳月及び処理費を要するのか」については、具体的に意味するところが必ずしも明らかでなく、一概にお答えすることは困難である。
 なお、廃炉に伴い生じる放射性廃棄物(使用済燃料の再処理に伴い生じるものを除く。)については、発電用原子炉設置者により、生活環境に対する放射能の影響を未然に防止することを目標として処分されるべきものである。この処分に要する期間は、それぞれの発電用原子炉に係る放射性廃棄物の種類や放射能レベル等により様々であり、お答えするのは困難である。
 また、平成二十五年度末時点において、原子力発電施設解体引当金に関する省令(平成元年通商産業省令第三十号)に基づき承認された原子力発電施設ごとの解体に要する全費用の見積額の合計は、約二・八兆円である。