第187回国会(臨時会)
質問第一〇二号 グローバル市場拡大を前にした我が国LED産業の国家戦略に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 平成二十六年十一月二十日 石上 俊雄
参議院議長 山崎 正昭 殿 グローバル市場拡大を前にした我が国LED産業の国家戦略に関する質問主意書 省エネ・長寿命の特長をもつLED照明は、東日本大震災による電力需給逼迫を機に我が国で一気に市場が拡大した。国内で既存照明の代替需要が一巡する今後は、海外、特にアジアを中心に本格的なグローバル市場が立ち上がり、二〇二〇年にその規模は二〇一一年比で十倍以上に急成長するとの予測もある。 LEDの要素技術は半導体やフラットパネルディスプレイ、太陽電池の製造技術と共通点が多く、これらを得意とする韓国、台湾、中国は近年、自国のLED産業の強化に国を挙げて取り組み始めた。なかでも中国は、製造装置購入への補助金導入、国内十都市で大規模にLED街灯を設置する「十城万蓋」プロジェクト、また、産業全体の成長率を年率三十パーセントとする大胆な国家目標を掲げるなど、LED産業を国家における重要戦略産業と位置付けている。 我が国のエレクトロニクス産業の歴史を振り返ると、薄型テレビやDVDプレイヤー、DRAMメモリなど、当初、我が国が製品イノベーションを主導していたにもかかわらず、基幹技術がモジュール化され、グローバル市場が形成される普及期に突入するとシェアを落とし、市場から撤退するケースが少なからず存在した。こうした轍を二度と踏まないために、今こそ産官学で知恵を結集し、我が国LED産業の在るべき姿、目指すべき方向性を描いた国家戦略の策定が強く求められている。 そこで、以下質問する。 一 LED照明市場は今後、どの地域でどのような規模で推移すると予測されるのか、また、製品の品質や価格に関して各国企業の間でどのような競争が展開されると分析されるのか、政府の見解を明らかにされたい。 二 LED産業に対する各国の支援・強化策や、ビッグ3と呼ばれる欧米三社(ドイツのオスラム社、オランダのフィリップス社、アメリカのGE社)のLED世界戦略をどう分析しているのか、政府の見解を明らかにされたい。 三 政府は二〇一〇年の「新成長戦略」や「エネルギー基本計画」において「高効率次世代照明を二〇二〇年までにフローで百パーセント、二〇三〇年までにストックで百パーセント普及」させる目標を掲げて以降、統一性のある国家戦略の策定を行っていない。迫りくる国家間競争を前に、いわゆる「心合わせ・腹合わせ」となる産官学協働の国家戦略策定の必要があるのではないかと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。 四 LEDが今後、コモディティ製品に陥らないためには、各企業における継続的な技術革新の努力が必要だが、国としても、LEDの性能、特に省エネ性、長寿命性、発光効率、大光束化、演色性、色温度、素子ごとの特性バラツキの低減及び耐熱性に関して、世界最先端の研究開発に取り組み続ける必要があると考えるが、政府の認識を明らかにされたい。 五 国家としてLED産業の技術コアを維持する重要性に加え、国外廉価品など異なる品質の製品との価格競争に巻き込まれない戦略が必要と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。また、国際標準化や現地国との協力対話においては、海外のリーダー企業と立場を同じくする場合も多く、連携しての取組も効果的と考えるが、このような活動を国として試みたことがあるか、さらに今後行う予定があるのか、併せて政府の見解を明らかにされたい。 六 LEDバリューチェーン、すなわちウエハ、チップ、パッケージ、モジュール・アプリケーション、ソリューション・ビジネスの各段階に関して、我が国LED産業はどのような観点で付加価値を高めることが必要と考えるのか、政府の見解を明らかにされたい。また、これまで我が国エレクトロニクス産業、特に半導体、液晶パネル、DVDプレイヤー、太陽電池、リチウムイオン電池等各分野における経験はどのような教訓としていかせるのか、併せて明らかにされたい。 七 LEDグローバル市場に対するアプローチとして、各地域・国ごとの需要や嗜好にきめ細かく現地適応化する地産地消戦略や、中国の博物館施設において圧倒的な強さを見せるドイツ企業のように、市場を特化して、我が国の高性能・高価格のLEDで競争する、いわゆるセグメント戦略も必要と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。 八 各国における代表的な公共施設や道路システム、また、注目の集まるメディアファサードや美術館などに対して、我が国LED産業のプレゼンスを高める観点から、LED化に向けたトップセールスも効果的と考えるが、政府の見解及びこれまでの取組の存否を明らかにされたい。 九 国内では現在、消防法令上、避難誘導灯へのLED使用は可能だが、建築基準法上、非常用照明器具には使用が認められていない。取扱いが異なる科学的根拠は何か。また、この違いを国として積極的に解消していくつもりがあるか、政府の見解を明らかにされたい。 十 これまでLED照明は、省エネ性や長寿命性で脚光を浴びてきたが、それ以外の「人間のための照明」を追求する姿、すなわち「あかり文化」のさらなる洗練は、世界の成長市場に打って出るという国家戦略上も極めて重要と考えるが、政府の見解及びその実現に向けた取組を明らかにされたい。 右質問する。 |