質問主意書

第187回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一〇一号

政府開発援助大綱見直しに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年十一月二十日

藤末 健三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   政府開発援助大綱見直しに関する質問主意書

 政府開発援助大綱(以下「ODA大綱」という。)が平成十五年に改定され、現行ODA大綱が閣議決定されて以降、十年以上の歳月が経過した。その間に生じた開発課題の多様化、複雑化、広範化など、開発協力環境の変化に適切に対応するため、政府は本年三月、ODA大綱を見直すことを発表し、去る十月二十九日、「開発協力大綱」(以下「新大綱」という。)の案文が公表された。新大綱(案)は、概ね現行ODA大綱の基本的な精神を受け継ぎつつ、我が国の開発協力の新たな可能性を切り開く可能性を有する一方で、懸念すべき点も見られることから、年内が目途とされている新大綱の閣議決定を前に、政府の考え方を明らかにする必要がある。
 よって、以下質問する。

一 新大綱(案)では、ODA大綱の名称を「開発協力大綱」と改めることが示されているが、その一方で、閣議決定の際に付される説明文書「開発協力大綱の決定について」において、「ここで言う「開発協力」とは、「開発途上地域の開発を主たる目的とする政府及び政府関係機関による国際協力活動」を指す」と定義されている。「開発協力大綱」とする以上、もう一歩踏み込んで、他省庁や他の主体との連携の在り方などについて、より具体的な方向性や指針等を含んだ大綱とすべきと考えるが、このような限定を付したことについて、政府の見解を示されたい。

二 新大綱(案)では、人間の安全保障が「我が国の開発協力の根本にある指導理念」と位置付けられた。これは、現行ODA大綱において「「人間の安全保障」の視点で考えることが重要である」と記述されていることと比較し、我が国の援助理念がより明確になったものと評価できるが、これにより、具体的な政策や取組においてどのような影響が見込まれるのか、政府の見解を示されたい。

三 「人間の安全保障」については、従来から我が国が重視してきた理念であるが、その内容について、国民に浸透しているとは言い難い。新大綱(案)は、ODAの量を対GNI比〇・七パーセントとする国際的目標について「念頭に置く」としているが、十分なODA予算を確保するためには、国民のODAに対する理解が不可欠であり、とりわけ人間の安全保障の理念についての理解を促進するための取組を強化する必要がある。これまで「人間の安全保障」の理念が国民に十分に浸透してこなかった原因と理解促進に向けた今後の具体的な取組について、政府の見解を示されたい。

四 新大綱(案)では、基本原則の一つとして、「非軍事的協力による平和と繁栄への貢献」を明確に打ち出したことは評価できるが、一方で、実施上の原則では、民生目的や災害救助などの非軍事目的の開発協力の場合、相手国の軍や軍籍を有する者が関係しても、個別具体的に検討してODAを実施する方針が示されている。途上国の場合、軍の役割は多面的、流動的な面があり、後になって支援物資等が軍事転用されるリスクが懸念されるため、具体的な歯止めとして、新たなガイドラインなどを定める必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。

五 新大綱(案)では、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場が強調されているが、我が国の平和国家としての歩みを強調するのであれば、唯一の被爆国として、核拡散防止に対する取組を「平和で安全な社会の実現」への取組に加えることとし、そこでもODAを戦略的に活用していく必要があると考えるが、具体的な方策について政府の見解を示されたい。

  右質問する。